News ニュース

藝大日本画展 出品作家インタビュー 手塚雄二先生(絵画科日本画専攻教授)

2018/10/05 インタビュー

藝大アートプラザのオープンに合わせ、美術学部のなかで最も長い歴史を誇る絵画科日本画研究室による「藝大日本画展」を開催します。この展覧会には日本画研究室教授による新作の扇面画を展示します。じつは、扇は日本で生まれ発展した、日本独自のものです。手塚雄二先生に、ご自身の扇面画について、そして、現代の日本画家が扇面画を描く意義について伺いました。

int_photo_tezuka.jpg


今回、手塚先生がお描きになった扇面画についてご説明いただけますか。

本当はサラサラっと描こうと思ったのですが、藝大アートプラザの最初の展覧会なのだったらと考え、力を入れて描きました。純金、青金、群青など、日本画の最高の絵の具を使っています。

どのような方法で描いてらっしゃるのでしょうか。

よく、僕の作品は、塗ったものを洗い流しながら描くと言われます。実際に、絵の具を塗って、気に入らない場合は洗って、更に塗ってはがしてを繰り返しています。日本語で説明しようとするとこうなってしまいますが、現実はもっと悶え苦しんでいます。そうしないと、この「味」は出ません。洗って、紙の目と絵の具をグッと紙の繊維に食い込ませ、その残ったものの「痕跡」によってこの味わいが出ます。僕の作品はほぼ全部このように描いています。綺麗に見えていたとしても、すったもんだしているんですよ。

そのように描く理由はなにかありますか。

僕は、きちんと上手に塗れた色相を良いと思っていません。500年くらい前の、剥落していたり、古色が付いていたりする絵画がありますが、そのような雰囲気を目指しています。時代を経た仕事が好きなものですから、そのために洗っていると言えるのかもしれません。上手いだけではなく、絵を見た瞬間に「うわっ」と感じるものがあればいいんじゃないかなと思っています。

int_tezuka_morinotsuki.jpg手塚雄二「杜の月」

扇面の形について、どのようにお考えですか。

今回の、扇面に日本画を描く話をいただいたとき、大事なところをついてきたなと思いました。扇の形は、世界にもっとも日本的なインパクトをあたえた絵画なんじゃないかなと思います。単なる絵画ではなく、かといって工芸品でもない、難しい存在です。形も面白く、絵が斬新になります。ただ、形が特殊だからこそ、そこに絵を描くのはけっこう難しいことです。今回の作品の三日月も、「え?こんなところに描いていいの?」と思う位置かもしれません。それがこちらの狙いでもあるのですが、はてさて展覧会に出した時にどのような反響が生まれるか楽しみですね。

扇面画を現代の日本画家が描く意義ということについては、どうお考えですか。

2020年にオリンピックを控え、国際化だとか、外国人が来るから日本を紹介しよう、と言っていますが、日本的なものは何かということをもう少し掘り下げた方が良いと思うんですね。僕はこのような時に前面に出てくるのは日本画以外にないと思っています。もっと日本画を大事にしてほしいですね。

決して、古いものが日本的なのではありません。日本は、何年かの間隔で新しい文化を受け入れ、進みながら変容してきた国です。漢字を使い、ひらがなを使い、カタカナも使い、縦書き、横書きも自由に操る。こんなことを平気でやっている国はほかにないです。そこに通底する変わらない感覚こそが日本的なるものなのではないでしょうか。

ですから、扇面という古くからの日本の形に、日本画家が現代を盛り込んで描く、これこそが日本の美だと言えるのだと思います。しかも、ここ(東京藝術大学絵画科日本画研究室)の教官たちはいろんなタイプの絵描きですから、新しい良いものが出てくるのではないでしょうか。

日本画はどのような方向性を目指しているのでしょうか。

日本画は古い日本画ではなくて、モダンな日本画を目指しています。これは、(藝大の前身である)東京美術学校ができたときに、(開校間もなく校長になった)岡倉天心先生が横山大観とか菱田春草に、「新しい日本画を描け」と言ったときから変わっていません。明治維新が来て、日本画というものが誕生してから、常に新しいものを目指しています。日本画をうんと掘り下げていけば、世界に打って出られると思っています。

現在は地方で開催される現代美術のトリエンナーレ、ビエンナーレなどが盛んに開催されていますね。

そうですね。現代美術の使命は既成概念を破壊することです。日本画は、音楽の世界でいえばクラッシックのようなもので、その既成概念にあたるわけです。しかし、現代美術も日本画もあっていいんですよ。違うものが混じり合ってこそ、日本なんです。日本画はぶち壊される側であるわけですが、「きれいだな」「いいな」と思える作品がなくなってはいけないと思います。日本をつきつめていった日本画が、かえって新しく思えることもあると思うんです。だからこそ、今回の展覧会は、ちょうどよい企画です。

●手塚雄二プロフィール
1953年  神奈川県生まれ
現在    東京藝術大学美術学部絵画科日本画教授
日本美術院同人・業務執行理事
福井県立美術館特別館長

1979年  院展に初出品・初入選
1982年  東京藝術大学大学院美術研究科(日本画)修士課程修了
1989年  院展出品作、日本美術院賞・大観賞受賞(同90、91年)
1992年  院展の同人に推挙
1997年  院展出品作、文部大臣賞
1998年  「手塚雄二展」開催(名古屋・銀座松坂屋)
2000年  「手塚雄二屏風絵展」開催(福井県立美術館、京都髙島屋他)
同年    院展出品作、内閣総理大臣賞
2004年  東京藝術大学教授に就任
2006年  「手塚雄二 花月草星展」開催(日本橋髙島屋)
2010年  「一瞬と永遠のはざまで」開催(そごう美術館、名古屋松坂屋美術館)
2013年  新作展「散花 手塚雄二」(ナカジマアート)
2014年  「憬色−手塚雄二展」(日本橋三越本店)
2016年  手塚雄二展「月の譜」(紫鴻画廊)
2017年  YUJI TEZUKA EXHIBITION (GINZA SIX)

取材・文/藤田麻希 撮影/五十嵐美弥(小学館)

※掲載した作品は、実店舗における販売となりますので、売り切れの際はご容赦ください。