パンダパンダパンダ!「PANDART 藝大パンダ」展作品紹介

ライター
藝大アートプラザ編集部
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上野といえばパンダ、パンダといえば上野ですが、2026年、そのパンダが上野から、そして日本から姿を消してしまいました。長く街の象徴であった存在がふっと不在になる——その瞬間には、喪失感と同時に、これまで気づかなかった問いが立ち上がります。

「パンダは私たちにとってどんな存在だったのでしょうか?」

白と黒、丸いフォルム、どこか謎めいた表情。誰もが知っているのに、誰も本当には知らない。パンダはいつしか、生き物であることを超えて、文化や象徴の領域に入り込んだ存在なのかもしれません。

そこで藝大アートプラザでは、「一か月だけ、パンダが上野に帰ってくる」という小さな物語を立ち上げます。ただしやってくるのは、動物としてのパンダではありません。アートが呼び寄せる、もうひとつのパンダの姿——PANDART です。

写実的なパンダ像?黒と白だけ?カラフルに変身?あるいは象徴としてのパンダ?

作家の皆さんがそれぞれが捉える、“パンダの要(かなめ)”を自由に抽出し、アートにしたらどうなっちゃうんだろう?

アーティストの手によって呼び出される新しいパンダたちが、上野の新しい記憶をつむぐ一歩となりますように。

ここでは、作品の写真とともに各出展作家をご紹介します。

概要

会期:2026年5月16日(土)〜6月14日(日)
※5月15日(金)13時よりプレオープン
※展示入れ替えなし

定休日:月曜日(祝日の場合は営業、翌火曜日が休業)

営業時間:10:00-18:00
※営業日時が変更になる場合がございます。最新情報は公式Webサイト・SNSをご確認ください

入場料:無料

会場:藝大アートプラザ(東京都台東区上野公園12-8 東京藝術大学美術学部構内)
公式Instagram / 公式X(Twitter) / 公式Threads

内田 亘

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内田亘は、ドローイングを起点にペンキを用いた平面作品を制作している。動物や風景など親しみやすいモチーフを描きながら、その画面には孤独やメランコリー、認識のズレのような感覚が織り込まれている。流し込むような描画やフラットな画面構成によって、日常に潜む小さな違和感を浮かび上がらせる作家である。
今回の作品では、パンダを「実際の動物」ではなく、街や人々の記憶に定着した存在として解釈した。上野から姿を消した後も、看板やグッズだけが街に残る風景に着目し、不在でありながら消えきらない気配を、切り出した輪郭と絵画の関係によって示している。

カトウ

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カトウは、油絵具を薄く溶き、キャンバスへ染み込ませるように描くことで、鉛筆の線やドローイングの痕跡を画面に残している。王様や動物などをモチーフとしながらも、「〇〇のようなもの」としか言い切れない曖昧な存在を描き、印象や線のずれ、揺らぎを許容することで、「どちらでもあるけれど、どちらでもない」不安定なイメージを立ち上げている。今回のように実際の風景や場所を描くのは珍しく、本展では、上野から姿を消したパンダの“不在”に着目した。駅前の巨大パンダ像や御徒町のパンダ像、動物園の柵に残されたパンダのイラストなど、街に残る痕跡を描きながら、「見ようと思えば見られたのに、結局見なかった」という感覚や、いなくなったあとに逆に存在を強く感じる空気感を作品に反映している。

黄 璟

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黄璟は、水墨を基調に岩彩や金属箔を組み合わせながら、親しみやすさと空想性をあわせ持つ絵画表現を展開している。今回の作品ではパンダを擬人化し、「もし自分がパンダだったら、どのように暮らすだろうか」という想像を起点に、穏やかでユーモラスな情景を描いている。水墨ならではの柔らかなにじみや余白を活かしながら、岩彩や金属箔によって華やかな質感を加えている。素朴さと装飾性のあいだを行き来する画面には、静かな空気感と祝福的なモチーフが共存している。 本作においてパンダは、人に親しみや安心感、小さな幸福をもたらす存在として描かれている。作家は、「何気ない日常の断片を、少し夢のある物語として作品に込めた」と語る。

小林 あずさ

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小林あずさは、「イメージの連鎖や連続性」を主題に、言葉遊びや連想ゲームの感覚を取り込みながら、平面作品やインスタレーションを制作している。紐や髪の毛、植物の根、虹、迷路といった“遠く離れたものを結びつける構造”が繰り返し現れ、モチーフを通して、鑑賞者の記憶や連想を静かに引き出していく。本展では、「パンダは桃源郷からの使者である」という想像を起点に作品を展開した。竹に鈴なりにぶら下がる子パンダや、母子として寄り添う姿は、人間社会とは異なる“完全な世界”に生きる存在として描かれている。一方で作家は、外交や見世物、狩猟など、人間によって翻弄されてきたパンダの歴史にも目を向けている。そうした背景を踏まえながらも、なお失われない野生動物としての気高さや魅力があると語る。

小林 椿

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小林椿は、東京藝術大学大学院染織専攻に在籍し、主にシルクスクリーンを用いながら、日本の自然や、そこで遊ぶ子どもたちの姿をモチーフに制作を行っている。幼少期の記憶や四季の風景、自身が日本で生きてきた中で培われた感覚をもとに、絵画とテキスタイルを横断する表現を展開している。高校時代には日本画を学んでおり、岩絵具による描写感覚は現在の制作にも通底している。
本展では、日本画の技法を用いながら、自身の作品世界へとパンダを引き寄せた作品を発表している。画面はそれぞれ“小さな部屋”のように構成され、並べることでアパートのようにも見える構成となっている。窓の描かれた画面の中には、それぞれの暮らしを営むパンダたちの姿が、絵本の1シーンのように描かれている。

はらだひまわり

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はらだひまわりは、日常の生活や風景の中に現れる、断片的で感覚的な出来事を起点に作品を制作している。食事や入浴、金曜日の夜の気配といった、ごく個人的で微細な日常の断片を身体感覚として捉え、それをドローイングを起点にガラスの立体へと展開していく。
本展に出品される作品では、「パンダになりきれない形態」を通して、「パンダらしさとは何か」という境界の問題が探られている。黒と白、丸みを帯びた身体、目の周りの模様といった記号的イメージを手がかりにしながらも、それらをそのまま再現するのではなく、自らの中にあるイメージとして再構成することで、パンダ像の揺らぎが立ち上がる。

ふくい つかさ

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ふくいつかさは、身近でそっと寄り添い、見る人の気持ちをやわらかくほぐしてくれるようないきものをテーマに、羊毛を用いた立体作品を制作している。今回の作品では、「パンダらしさ」を曖昧に捉えた、愛らしさのあるフォルムを展開している。作品は羊毛を針で少しずつ刺し固めながら形づくられており、色を重ねることで、やわらかな奥行きが生まれるよう意識されている。 作家は大学時代、毎日のように上野動物園の前を通学していた。パンダを見るための行列や、緑色のコーンが並ぶ風景を日常的に目にしていたことから、上野のパンダを身近な存在として感じていたという。実際に双子のパンダを見たことはないものの、ニュースや日々の記憶を通して形成されたイメージをもとに、本作の制作へとつなげている。

びゅん

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びゅんは、絵画を起点に、映像、パフォーマンス、立体を組み合わせながら、「アートを介してしか出会えないもの」を生み出そうとしている。ドローイング的な鉛筆線やキャラクター的イメージを手がかりに、現実とイメージが重なり合う曖昧な瞬間や、まだ不確かな感覚を画面の中にとどめようとしている。共感覚を持つびゅんにとって、色は単なる視覚的要素ではなく、“生き物”のように感情や気配を持つものであり、1980年代のカルチャーや音楽からの影響とも響き合っている。
本展では、パンダを“存在そのものが愛される”=アイドルとして解釈した。人々を惹きつけるパンダの姿に現代のアイドル像を重ね合わせ、「人はなぜパンダに惹かれるのか」という感覚を、自身のキャラクター表現へと展開している。また、4人のアイドルを率いるプロデューサーとして、作家自身を投影したキャラクターも作品世界に登場する。

藤野 ひなた

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藤野ひなたは、日常の景色や誰もが知っているような身近なものをモチーフに、独自の物語を立ち上げる立体作品を、金属鋳造を軸に制作している。じゃがいも、動物、衣服など、普遍的な存在を組み合わせながら、登場人物の背景や出来事を連想ゲームのように繋げ、一つの世界観を構築していく。
本作《パン/ダ》は、「パンダだけど、パンダじゃない」存在である。パンダの白黒模様から発想し、目出し帽とセーターによって白黒になっている兄弟を造形した。青い方が兄の「パン」、赤い方が弟の「ダ」。雨が苦手な彼らは長靴を履き、出先で傘を“強盗”するという架空の設定を持つ。しかし、その中身は本当にパンダなのかは分からない。服装によってパンダのように見えているだけで、実際には正体不明の生き物である。

星野 歩

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星野歩 は、日本に暮らす中で蓄積されてきた風景や文化、街並みの記憶を圧縮・再構成しながら、箱庭のような小さな世界を絵画の中に立ち上げている。作品には、江戸時代の気配から現代都市、地下道、ライフライン、ロケットまで、異なる時間軸の日本が混在する。RPGの攻略本のマップや、シムシティ、ドット絵のゲームなどの影響も大きく、俯瞰的に構成された都市や細密な描き込みからは、架空の都市空間を散歩するような感覚が生まれている。
今回は、それぞれ異なる物語を持つパンダたちを描いた。描画部分はすべて市販のユニボールペンによって制作されており、その緻密な線は、「息を止めながら描いている」と作家自身が語るように、高い集中力のもとで積み重ねられている。

渡邉 泰成

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渡邉泰成は、不完全な美や詫び寂びといった日本特有の美意識と、陶芸の伝統技法を軸に制作を続けている。社会情勢や現代文化を意識したアートワークから、独自の手法で彩色を施した日常的な食器、茶器などの美術工芸品まで幅広く手掛ける。近年は金沢での経験を通して、素材との対話や、土そのものが持つ質感や気配への関心を深めている。「Layer」シリーズでは、陶磁器の絵付け技法を現代的に再解釈し、焼成温度を色や原料ごとに調整しながら、レイヤーのように加飾を重ねていく。金沢で茶道を学び始めたことで、機能性や作法といった視点も作品制作に取り込まれている。

会期:2026年5月16日(土)〜6月14日(日)
※5月15日(金)13時よりプレオープン
※展示入れ替えなし

定休日:月曜日(祝日の場合は営業、翌火曜日が休業)

営業時間:10:00-18:00
※営業日時が変更になる場合がございます。最新情報は公式Webサイト・SNSをご確認ください

入場料:無料

会場:藝大アートプラザ(東京都台東区上野公園12-8 東京藝術大学美術学部構内)
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