クラシックやバレエを鑑賞するために行ったことがあっても、建物や音響、照明などの設備=ハード面のことを知らない人もいるかもしれません。ここでは、歴史の話も交えて、東京文化会館の魅力をご紹介します。
日本屈指の本格的音楽ホール
東京文化会館は、近代建築の巨匠ル・コルビュジエが日本に唯一残した建築作品「国立西洋美術館」の目の前に位置しています。
東京開都500年を記念して催された記念事業の一つとして、1959(昭和34)年起工、昭和36(1961)年に完成。その後、平成9(1997)年から11年にかけて大規模な改修工事が行われました。
オペラやバレエもできる本格的音楽ホールとして親しまれ、音楽・オペラ・舞踊などの振興と国際交流を図ることを目的とし、クラシックやバレエ、オペラなど、多彩な名演が繰り広げられてきました。また、新しい舞台作品の上演、東京音楽コンクールやさまざまな年齢層を対象としたワークショップなど、独自の企画事業にも注力しています。
都内最大級の大ホール
東京文化会館の主な設備は、都内最大級の「大ホール」、奇跡の音響を実現した「小ホール」、クラシック音楽中心の「音楽資料室」です。館内のホールや設備を、デザインと音響の面からみていきましょう。
まず、大ホール。国内外のオペラ、バレエ、オーケストラなど、さまざまな団体による公演が行われています。入口は一面サーモンピンクで、訪れる人の高揚感を倍増させてくれます。
敷地は四角形ですが、観客席スペースは六角形に設けられ、その一辺に四角い舞台を張り出させたデザインが特徴です。天井はシートを垂らしたように波打つデザイン。天井高も高く、観客席は5階建てで、客席数は2303席と都内最大級の規模を誇ります。
壁面には、音響効果を高めるための雲形のパーツを設置。彫刻家・向井良吉によるものです。 客席には赤を基調に青、緑、黄とカラフルな椅子が点在し、花畑をイメージさせます。舞台から見て、空席が目立たないようにする意図もあるそうです。
奇跡の音響を実現した小ホール
次に、国内外のアーティストによる室内楽やリサイタルの演奏会が日々開催される小ホール。総客席数649席とコンパクトながら、「奇跡の音響」とも呼ばれています。
「昇り屏風」と名付けられた音響反射板とコンクリートの壁についている音を響かせるためのパーツは彫刻家・流 政之によるものです。
ほぼ真四角で角にステージがある珍しい造りで、もともと国際会議場としても使用できるように竣工したそうです。
コルビュジエの弟子前川國男による建築
東京文化会館を設計したのは、建築家・前川國男。東京帝国大学建築学科卒業後、渡仏してル・コルビュジエに師事しました。
前川主要作には、日本相互銀行本店(1952)、神奈川県立音楽堂および図書館(1954)、世田谷区民会館(1957)、京都会館(1960)、東京文化会館(1961)、埼玉県立博物館(1971)、東京海上火災ビル(1974)など。前川自邸は、品川区上大崎から、江戸東京たてもの園(東京都小金井市)に移築されています。
文章の冒頭で説明した通り東京文化会館は国立西洋美術館と向かい合っています。前川は、師匠の建築に隣接して東京文化会館を造るにあたり、調和を大切にしたそうです。例えば、東京文化会館は高さを極力抑え、庇の上部の高さは、西洋美術館の屋根と同じ高さに合わせるなどです。師弟の建築を見比べると、前川のコルビュジエに対するリスペクトが感じられます。
クラシック音楽中心の資料室にも注目
東京文化会館4階には音楽資料室があり、クラシック音楽を中心として、図書、雑誌、楽譜、視聴覚資料のほか、東京文化会館で行われた公演のプログラムといった貴重資料を所蔵。中学生以上なら、誰でも無料で利用可能。例えば、楽譜を見ながらレコードやCDを視聴するといった使い方もできます(現在は音源、映像資料の視聴サービスは休止しています)。
東京文化会館 Information
東京都台東区上野公園5-45
https://www.t-bunka.jp/
※営業に際しては、「東京文化会館における新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン」に沿って必要な対策を講じています。今後の公演などについては、随時当ウェブサイトなどで情報を発信させていただきますので、必ず最新情報をご確認ください。