東京・上野公園周辺で、開催中の注目の展覧会・展示ニュースをまとめました。美術館や博物館巡りの参考にご覧ください。
2024年11月のまとめ
挂甲の武人 国宝指定50周年記念 特別展「はにわ」
会期:2024年10月16日(水)~2024年12月8日(日)
会場:東京国立博物館 平成館 特別展示室
埴輪とは、王の墓である古墳に立て並べられた素焼きの造形です。その始まりは、今から1750年ほど前にさかのぼります。古墳時代の350年間、時代や地域ごとに個性豊かな埴輪が作られ、王をとりまく人々や当時の生活の様子を今に伝えています。なかでも、国宝「埴輪 挂甲の武人」は最高傑作といえる作品です。この埴輪が国宝に指定されてから50周年を迎えることを記念し、全国各地から約120件の選りすぐりの至宝が空前の規模で集結します。素朴で“ユルい”人物や愛らしい動物から、精巧な武具や家にいたるまで、埴輪の魅力が満載の展覧会です。東京国立博物館では約半世紀ぶりに開催される埴輪展にどうぞご期待ください。
展覧会詳細:https://haniwa820.exhibit.jp/
博物館でアジアの旅 アジアのおしゃれ
会期:2024年10月1日(火)~2024年11月10日(日)
会場:東京国立博物館 東洋館
東京国立博物館「博物館でアジアの旅」は、今年11年目を迎える秋の恒例企画です。アジアの美術・工芸・考古遺物を展示する「東洋館」を舞台に、毎年独自のテーマを掲げ、それにちなんだ作品を館内随所に展示します。今年のテーマは「アジアのおしゃれ」です。アジア各地の仏像や工芸品、絵画作品に見られるおしゃれな姿や、華やかな衣装や装飾品から、それぞれの時代の美や風情、遊び心を感じてみてください。小冊子(注1)と「博物館でアジアの旅 アジたびマップ2024」(注2)を手に、東洋館で作品たちの饗宴をお楽しみください。
展覧会詳細:https://www.tnm.jp/modules/r_event/index.php?controller=dtl&cid=5&id=11141#asia2024_tnm
やきものを彩る金と銀
会期:2024年10月22日(火)~2024年12月1日(日)
会場:東京国立博物館 本館 14室
やきものの絵付けに華を添える金彩と銀彩。いまや現代陶芸でも人気の絵付け表現ですが、銀彩は空気中の水分と硫化水素に反応(硫化)して黒く変色してしまう性質があり、かつての中国景徳鎮窯やそれに影響を受けたヨーロッパ諸窯の磁器にはほとんど用いられることはありませんでした。しかし日本には、九州有田と京都において上絵付けの色絵が完成した17世紀後葉以降、磁器・陶器にかかわらず素地の特徴を活かしながら、金彩だけでなく銀彩も積極的にとり入れてきた歴史があります。ここでは、世界に先駆けて製陶を行なった中国や、酸化銅や酸化銀を呈色剤に用いて器面を金属的に輝かせるラスター彩を採用したイスラームの作例、さらに17世紀以降金銀彩の表現をさまざまに工夫しつづけてきた日本のやきものの作例を紹介いたします。金銀彩を通して、あらためて日本のやきもの文化の豊かさと独自性を感じることができるでしょう。
展覧会詳細:https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=2676
Hello Kitty展 ―わたしが変わるとキティも変わる―
会期:2024年11月1日(金)~2025年2月24日(月)
会場:東京国立博物館 表慶館
ハローキティ50周年を記念して、「Hello Kitty展 ―わたしが変わるとキティも変わる―」を開催します。ハローキティはデビューから半世紀を迎え今や世界中で知られ、愛されています。世の中を見渡しても稀な存在と言えるでしょう。なぜそのようになり得たのでしょうか? そのヒントは、実は ファンひとりひとりとの関係性にあったのです。本展では 史上最大量のグッズ展示をはじめ、個性あふれるアーティストとのコラボ作品、オリジナル映像コンテンツなど 様々なコーナーで そのユニークさを紐解きます。楽しいフォトスポットも盛りだくさん!ぜひ皆さんでご来場ください。
展覧会詳細:https://hellokittyexhibition.com/
東京国立博物館
住所:〒110-8712 東京都台東区上野公園13-9
公式サイト:https://www.tnm.jp/
アクセス(GoogleMap):https://goo.gl/maps/YWjaJoqwxGUJLaEM7
田中一村展 奄美の光 魂の絵画
会期:2024年9月19日(木)~12月1日(日)
会場:東京都美術館 企画展示室
自らの芸術の探究に生涯を捧げた画家・田中一村(たなか・いっそん/1908-1977)。本展は、一村の神童と称された幼年期から、終焉の地である奄美大島で描かれた最晩年の作品まで、その全貌をご紹介する大回顧展です。
世俗的な栄達とは無縁な中で、全身全霊をかけて「描くこと」に取り組んだ一村の生涯は、「不屈の情熱の軌跡」といえるものでした。
自然を主題とする澄んだ光にあふれた絵画は、その情熱の結晶であり、静かで落ち着いた雰囲気のなかに、消えることのない、彼の魂の輝きをも宿しているかのようです。本展は、奄美の田中一村記念美術館の所蔵品をはじめ、代表作を網羅する決定版であり、近年発見された資料を多数含む構成により、この稀にみる画家の真髄に迫り、「生きる糧」としての芸術の深みにふれていただこうとする試みです。
展覧会詳細:https://isson2024.exhn.jp/
上野アーティストプロジェクト2024 ノスタルジア─記憶のなかの景色
会期:2024年11月16日(土)~2025年1月8日(水)
会場:東京都美術館 ギャラリーA・C
本展では、懐かしい風景、そしてノスタルジア(nostalgia 英語で郷愁の意味)について考えたいと思います。「ノスタルジア」とは、もともとギリシャ語の「ノストス(家に帰ること)」と「アルゴス(痛み)」の合成語で、故郷へと帰りたいが、けっして戻れない心の痛みのことを意味します。元々は望郷の思い、いわゆるホームシックと同じような意味でしたが、現代では二度と戻ることができない過去(子ども時代など)の記憶を、現在の風景や情景に重ね合わせて味わう、切なくも複雑な感情のことをいいます。
このノスタルジアを強く感じさせる風景、人のいる情景、幻想絵画などを描いてきた個性的な8名の作家たちを紹介します。日常の街の風景を愛しむように描いている阿部達也と南澤愛美。子どもたちのいる光にあふれた情景を描き出す芝康弘と宮いつき。幻想も含めて、それぞれ独特の「記憶のなかの景色」を表現している入江一子、玉虫良次、近藤オリガ、そして久野和洋。彼らは、それぞれの異なった道を歩みながら、どこか時空を超えたような、普遍的な原風景(人の心の奥底にある原初の風景)を探し求めているように思えます。本展では、彼らの作品を鑑賞することを通して、あらためて、ノスタルジアという複雑な感情が持っている意味と可能性を探っていきます。
展覧会詳細:https://www.tobikan.jp/daichinimimi/
懐かしさの系譜─大正から現代まで 東京都コレクションより
会期:2024年11月16日(土)~2025年1月8日(水)
会場:国立西洋美術館 ギャラリーB
「懐かしい」という感情は、どのような意味をもつものなのでしょうか。すでに失われた事物、あるいは戻れない土地や時を思う時、人は「懐かしさ」に駆り立てられるものです。また時に、直接目にした経験のない対象であっても、その写真などを前に、「懐かしさ」に似た、どこか親密な感覚がわき起こることもあるでしょう。
本展は、東京都立の美術館・博物館が所蔵する東京都コレクションの絵画、版画、写真等におさめられた大正期から現代にいたる日本の風景をたどることにより、人々がそれらの中に見出してきた「懐かしさ」とは何であるかについて、あらためて考えようとするものです。川瀬巴水や土門拳が捉えた、近代化の中で消え去った大正・昭和戦前期の情景への「懐かしさ」、戦後一気に流入したアメリカ文化に対する「懐かしさ」、そして、高度経済成長を背景に均質化と変貌を繰り返す都市や郊外の街並みに向けられた「懐かしさ」。それぞれの「懐かしさ」は、時代も様相も全く異なるものであるにも関わらず、誰の心にも芽生え得る情感なのかもしれません。このような過ぎ去った日々への思いは、私たちの心に人生への振り返りを促すものであり、人々への共感へと繋がり、生きる希望ともなり得るものではないでしょうか。「懐かしさ」の多様性と不変性に向き合う本展が、激動の日本近現代社会に生きる私たち自身を見つめ直す機会となれば幸いです。
展覧会詳細:https://www.tobikan.jp/exhibition/2024_collection.html
東京都美術館
住所:〒110-0007 東京都台東区上野公園8-36
公式サイト:https://www.tobikan.jp/index.html
アクセス(GoogleMap):https://goo.gl/maps/STJUT3f1V3a47re27
モネ 睡蓮のとき
会期:2024年10月5日(土)〜2025年2月11日(火・祝)
会場:国立西洋美術館 企画展示室
印象派を代表する画家のひとりであるクロード・モネ(1840-1926)は、一瞬の光をとらえる鋭敏な眼によって、自然の移ろいを画布にとどめました。しかし後年になるにつれ、その芸術はより抽象的かつ内的なイメージへと変容してゆきます。モネの晩年は、最愛の家族の死や自身の眼の病、第一次世界大戦といった多くの困難に直面した時代でもありました。そのような中で彼の最たる創造の源となったのが、ジヴェルニーの自邸の庭に造られた睡蓮の池に、周囲の木々や空、光が一体となって映し出されるその水面でした。そして、この主題を描いた巨大なカンヴァスによって部屋の壁面を覆いつくす “大装飾画”の構想が、最期のときにいたるまでモネの心を占めることになります。本展の中心となるのは、この試行錯誤の過程で生み出された、大画面の〈睡蓮〉の数々です。このたび、パリのマルモッタン・モネ美術館より、日本初公開となる重要作を多数含むおよそ50点が来日。さらに日本各地に所蔵される作品も加え、モネ晩年の芸術の極致を紹介します。日本では過去最大規模の〈睡蓮〉が集う貴重な機会となります。
展覧会詳細:https://www.tobikan.jp/exhibition/2024_uenoartistproject.html
オーガスタス・ジョンとその時代—松方コレクションから見た近代イギリス美術
会期:2024年10月5日(土)〜2025年2月11日(火)
会場:国立西洋美術館 版画素描展示室(常設展示室内)
ラファエル前派の系譜、あるいは唯美主義や象徴主義などとの関係から紹介されることの多い世紀転換期のイギリス美術ですが、フランスの近代絵画の発展に触発されつつ、若い画家たちが新たな制作環境を生み出そうと模索したさまざまな動きが起きています。画壇を統べるロイヤル・アカデミー・オブ・アーツに対抗して1886年に設立されたニュー・イングリッシュ・アート・クラブ、その保守化に対して1911年に結成されたカムデン・タウン・グループ、あるいはコーンウォールの漁村に芸術家コロニーを形成したニューリン派。そこには、印象派やポスト印象派に対する応答、そしてロンドンの急速な都市化や工業化とこれに対する反動を見ることができるでしょう。オーガスタス・ジョン(1878-1961)はこうした動きと交差しつつ、イギリス画壇で独自の位置を占めたウェールズ出身の画家です。卓越したデッサン力と大胆な色彩、さらにボヘミアン的生活から着想した題材などによって、第一次世界大戦前には、最も革新的な画家として若い芸術家たちの注目と期待を集めます。また、素描の名手として知られ、繊細な線でモデルの特徴を的確にとらえた肖像素描や、時にユーモラスともいえる素朴で空想的な習作などを残しました。20世紀後半には急速に忘れられますが、イギリス最初のポスト印象派に数えられています。1916-1918年のロンドン滞在中に美術品収集を始めた松方幸次郎(1866-1950)のコレクションには、こうした画家たちの作品が多数含まれていました。本小企画では、松方コレクションより、オーガスタス・ジョンの初期の素描を中心に、同時代の画家たちの素描や版画、油彩画も加えた展示をおこない、世紀転換期イギリスの多彩な芸術動向や人的ネットワークの広がりに光をあてます。
展覧会詳細:https://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2024augusutusjohn.html
国立西洋美術館
住所:〒110-0007 東京都台東区上野公園7-7
公式サイト:https://www.nmwa.go.jp/jp/index.html
アクセス(GoogleMap):https://goo.gl/maps/qAq7EVGnuRjxwtRe9
鳥 ~ゲノム解析が解き明かす新しい鳥類の系統~
会場:国立科学博物館 (東京・上野公園)
会期:2024年11月2日(土)~2025年2月24日(月・休)
生態系において重要な位置を占める鳥類。科博初の鳥類をテーマとした特別展「鳥」では、鳥の起源とその進化の過程を紹介し、さらに、ゲノム解析による最新研究で解き明かされた進化系統仮説にもとづき、貴重な鳥標本を数多く展示します。言語能力や多様なつがい関係など、23のテーマで「鳥のひみつ」も詳しく解説します。
展覧会詳細:https://toriten.exhn.jp/
企画展「高山植物~高嶺の花たちの多様性と生命のつながり~」
会期:2024年7月30日(火)~11月4日(月・休)
会場:国立科学博物館(東京・上野公園)日本館1階 企画展示室、中央ホール
はじめに、高山植物の特徴について、形態や生態などを紹介します。きびしい高山環境で生きる植物たちは、さまざまな生存戦略を発達させながら環境に適応しています。さらに高山植物は、高山生態系において重要な位置にあり、ほかの生物と密接に関わりながら生きており、その例についても紹介します。
展覧会詳細:https://www.kahaku.go.jp/event/2024/07alpineplants/
国立科学博物館
住所:〒110-8718 東京都台東区上野公園7-20
公式サイト:https://www.kahaku.go.jp/
アクセス(GoogleMap):https://goo.gl/maps/zBoHtasXcNCq7FSt8
企画展「Beautiful Foolishness~遊びをせんとや生まれけむ」開催のおしらせ
会場:藝大アートプラザ
会期:2024年10月26日(土)〜12月8日(日)
東京藝術大学美術学部の前身である東京美術学校の校長を務めた岡倉天心は著書「The Book of Tea(茶の本)」の第一章をこんな言葉で終えています。
”Let us dream of evanescence, and linger in the beautiful foolishness of things”
(しばしの間はかなさを夢見ようではないか。そして物事の美しい愚かさに身をゆだねようではないか)
”foolishness”という言葉は通常否定的な意味でしか使われません。その言葉を”beautifull”と形容することによって、天心は功利的には役に立たないことやものに、あるいは、社会の文脈や関係性から解き放たれた一見無価値な存在に対して、最大の賛辞を送っているように見えます。
また、日本におけるポップの帝王ともいえる後白河法皇が編んだ「梁塵秘抄」には「遊びをせんとや生まれけむ戯れせんとや生まれけん」というその後の文学作品に大きな影響を与えた一節が収録されています。
今回藝大アートプラザは「美しき愚かさ」「遊びをせんとや生まれけむ」という二つの言葉に注目しました。もしかしてそんな存在のアートがあってもいいのでは?と思うからです。
藝大アーティストが織りなす「美しくて愚かな」そして「遊びをするために生まれた」作品の数々にしばしの間身をゆだねてください。
展覧会詳細:https://artplaza.geidai.ac.jp/column/25475/
藝大アートプラザ
住所:〒110-8714 東京都台東区上野公園12-8 東京藝術大学美術学部構内
公式サイト:https://artplaza.geidai.ac.jp/
アクセス(GoogleMap):https://goo.gl/maps/w6T4HWuMghT2xfAX7
-2024年10月末更新-