武士が腰に帯びていたもの、それは、刀。
目につきやすいものだけに、江戸時代にはおしゃれアイテムともなりました。
そこで重要なポイントとなったのが、刀の付属品である「刀装具(とうそうぐ)」です。
シーンに合わせたり、季節に合わせたり……。また、身分や財力なども刀装具に表れたのではないかと考えられています(刀を所有すること自体は、武士階級以外にも認められていました。裕福な町人は刀を納める鞘や刀装具にも大金を掛けて楽しんだといいます)。
今回は、メトロポリタン美術館のパブリックドメイン画像から、「刀装具・はじめの一歩」をお送りいたします!
一番人気の乙なやつ……「鐔」!
刀の装飾品、というと最初に思いつくかたも多いであろう、「鐔(つば)」。
握っている手を保護する、バランスの調整をするなど、役割はいろいろあったと思われますが、美術品としても非常に見どころの多い刀装具です。
江戸時代には「刀のための付属品」から離れ、はじめから鑑賞を目的とした作品も多数作られるようになります。
実はセンターアイドル? 目貫!
鐔がぶっちぎりのセンターアイドル、かと思いきや、実は陰の実力者が別にいます。
それが、「目貫(めぬき)」。
もともとは、刀と柄(つか)を固定しておく「目釘(めくぎ)」と一体化していたのですが、後にここから独立して少し離れた位置に設けられるようになります。
表と裏各1つ、表裏2つでセットで、片割れだけになってしまったものを「片目貫(かためぬき)」と呼んだりします。
「目抜き通り」という、メインストリートを指す言葉は、この刀装具からきたといわれています。
また、複数の刀装具を同じデザインで揃える方式が数種類あるのですが、目貫がここから外れることはありません。
平和主義者? 小柄!
時代劇などで、刀の鞘から小さな刃物を抜き、相手に投げて攻撃する、というシーンがあったりします。
でも、実際には人に刺さったりはしません。その大きな要因でもあるのが、この「小柄(こづか)」。
刀の柄にあたるような、いわば持ち手部分です。
小柄の相棒は、「小柄小刀(こづかこがたな)」。ペーパーナイフの役割を果たすもので、独特のスタイルや決まりごとがあります。
小柄小刀自体も、そこまで切れ味抜群というわけではないのですが、小柄があることで重心がそちらに移動し、飛んで行っても刃が先に当たるようなことはほぼないといわれます(時代劇の中のあれはフィクションですが……)。
小柄の細長い面はキャンバス(金属ですが)になり、様々なデザインが施されます。
また、画面は縦にも横にも使うことができ、裏に美しい処理がされているものも多く見かけます。
刀装具きってのおしゃれアイテム、笄!
刀装具の中で、「笄(こうがい)」はやや異質な存在かもしれません。
髷(まげ)を結った髪を整えたりする、身だしなみのための道具で、小さなスプーンのような部分は「耳掻き」と呼ばれます。
刀と密接な関係がある、というものではなく、小柄(小刀)のように切るための道具といった用途からも離れた笄、でも、集中して仕事するためには、とても便利なものだったのでしょうね。
3点揃って、わたしたち、三所物です!
刀装具にも、デザインを揃えるセット仕様があります。
すべての刀装具を統一するものもあるのですが、セットとして一番ポピュラーなのは、目貫・小柄・笄の3点セット、「三所物(みところもの)」です。
この他、目貫・小柄の2点セット、「二所物(ふたところもの)」もあります。
固い絆で結ばれた……「縁頭」!
別個の存在でありながら、2つまとめた名称で呼ばれることも多い、名物バディ。
それが、「縁(ふち)」と「頭(かしら)」です。
どちらも握り手である柄につけて強度を高めるもので、頭は柄の先端、縁は鐔のすぐ脇に位置します。
「縁頭(ふちがしら)」は同一デザインであることが非常に多く、2つは切っても切れない固い絆で結ばれています(?)
刀装具たちの定位置は……それ、ここっ!
では、これらの刀装具は、刀のどこに付けられているのでしょう?
それ、ここっ!
なお、これら全ては揃っていないもの、別の金具があるものなど、いろいろなスタイルがあります。
また、平安時代~室町時代初期くらいの主流、「太刀(たち)」のスタイルでは、これとはまったく異なる金具が見られます。
刀は、日本の技術を集めた総合芸術品とも言われます。刀身とともに、ぜひ刀装具や鞘なども楽しんでみてくださいね!
「誰でもミュージアム」とは?
パブリックドメインの作品を使って、バーチャル上に自分だけの美術館をつくる「誰でもミュージアム」。和樂webでは、スタッフ一人ひとりが独自の視点で日本美術や工芸の魅力を探り、それぞれの美術館をキュレーションしています。「誰でもミュージアム」はwebメディアだけでなく、各SNSアカウントや音声コンテンツなど、さまざまな媒体のそれぞれのプラットフォームに合わせた手法で配信。アートの新しい楽しみ方を探ります。