2020年春、JR上野駅公園口が新しく生まれ変わりました。人の流れが変わり、上野公園のやや奥まったところにある「東京都美術館」へのアクセスが良好になりました。
東京都美術館は国内外の名作と出会える特別展や多彩な公募展・企画展で知られていますが、「とびらプロジェクト」という新しい取り組みも注目を集めています。
とびらプロジェクト=扉&都美(とび)
とびらプロジェクトで活動するのは、「とびラー」と呼ばれるアート・コミュニケータ。メンバーは、主婦・主夫、学生、ビジネスパーソン、退職後の方など、18才以上のさまざまなバックグラウンドをもつ多様な人たちです。
とびらプロジェクトは2012年にスタートし、2022年7月現在、9・10・11期とびラーが活動中です。年々認知度が上がり、11期の募集では、40名定員のところに420名の応募があったというから驚きます。
とびラーの任期は3年。1年目の始めに基礎講座で、アート・コミュニケータのあり方の基本を学びます。その後、美術館でのより具体的な活動場面をイメージした3つの実践講座を選択。さらに、座学に加えて実際のプログラムにも参加し、実践的に学びを深めます。
変化のめまぐるしいこの時代、3年でライフステージがすっかり変わる人は少なくありません。それでも、人生のある一定の期間、美術館を舞台にプレイヤーとして活動することの意義は大きいのです。開扉(かいぴ、任期満了の意味)後も、それぞれの関心を育て活躍している人がたくさんいます。
とびらプロジェクトは、2022年で10周年を迎えました。このアートを介してコミュニティを形成するという取組みは、美術館だけでなく地方自治体からも注目され、全国で広まりつつあります。
札幌文化芸術交流センターのSCARTSアートコミュニケーター「ひらく」、岐阜県美術館のアートコミュニケータ「~ながラー」、長野県立美術館の「アート・コミュニケータ」などです。
さまざまなアートを介したプログラムを企画
とびラーたちは、東京都美術館の交流棟2階にある「アートスタディルーム」で、プロジェクトの準備、打ち合わせなどをします。
とびらプロジェクトの活動は、建築ツアー、障害のある方のための特別鑑賞会、連動する「Museum Start あいうえの」など、多岐にわたっています。
とびラーたちは、こうしたプログラムに参加するだけでなく、とびラー自らがアイデアを企画し、それを実現させていく「とびラボ」という仕組みで新しい活動を生み出していきます。
アイデアが閃いたら、「この指とまれ式」で、他のとびラーに呼びかけ、3人以上集まったらスタートです。活動するときは「そこにいる人が全て式」でそこにいるとびラーでできることを考えていきます。はじめのアイデアに、他のとびラーのアイデアが重なり、新しいアイデアがうまれ、学芸員や大学教員等と相談しながらオリジナルの活動をつくっていきます。
おもしろいのが、活動の目的を達成して、振り返りを終えたら「とびラボ」は潔く解散! となること。
結成と解散を繰り返すことで、新しい風が入ってくるシステムなのです。
とびラー募集は、とびらプロジェクト公式サイトなどで行われます。次年度分の応募受付は例年、1月下旬からはじまります。
とびラーによるプログラムに興味のある方は、webサイトに随時アップされる募集情報をチェックしてみて下さい。
◆とびらプロジェクト
https://tobira-project.info/