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後期展も続々と新作が登場!写真で見る企画展「The Prize Show!~What’s 藝大?~」後期

ライター
安藤整
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企画展レポート 企画展情報

2022年9月10日(土)からスタートした企画展「The Prize Show!~What’s 藝大?~」。これまでの「藝大アートプラザ大賞」の受賞作家の新作が一堂に会する企画展です。

10月8日(土)からは後期展示として第10-16回受賞者による展示・販売を行っています(10月30日(日)まで)。この記事では後期展示に出展されている作品の展示風景を、写真でご紹介します。

※コメントは、Web担当による解説です。
※並びは順不同です。
※写真にない作品もございます。ぜひ現地で全ての作品をご覧ください。

絵の具のように「写真」を操り、絵画を描く

縣 健司さん
自身の東京での日々の暮らしや、仕事の合間の移動、取材旅行の中で偶然出会った、目の前にあるありふれた光景を撮影し、その写真をIllustratorでパス化して動かしたり消したり広げたりしながら構図を決めていく。今回展示している4作品のうち、新作2作品では、同じ場所を数年経て撮影した写真を組み合わせたり、場所の異なる2枚を融合したりすることで、二つの視点を絵画的に繋ぎ合わせることを試みている。

ずれ、かすれ。記憶を象るレシート

VIKIさん
そのほとんどが日々捨てられていく「レシート」をモチーフに作品を制作している。ハイブランドのレシートをコピー機にかけ、出てきたものをさらにコピー……と繰り返していくと、文字やロゴがかすれたり、ずれたりしていく。作者はそれが「記憶の残り方に似ている」と語る。今回の新作は高級ブランドのレシートを使用。ブランドの持つネームバリューの揺らぎを実験している。

進化するモチーフと女性たちの表情

大島 利佳さん
デザイン科修士課程修了。和紙にアクリル、赤みがかった部分は、日本画の染料である水干(すいひ)を用いている。以前の作品には女性の表情に抽象的な要素があったが、新作ではリアルな表情へと変化してきており、変化を感じられる。

標本を作る手法で、水面のような美しさを削り出す

小倉 慎太郎さん
石や鉱物の標本を作る工程を利用して制作された作品。ガラス板に石を接着し、石を1mm以下の極限まで薄く削る手法によって、写真のようにも見える独特な作品を生み出している。

キャンバスに岩絵具!日本画の枠を超える表現

小田川 史弥さん
ボナールやムンクを彷彿とさせる洋画のようなニュアンスを持つ作家。キャンバスに岩絵具で描くことにより、本画の枠組みをどうやって超えていくかを模索している。作品ごとに物語を設定し、登場する人物は、身近な友人などがモデルという。枠の中で構図を完結させることにこだわりをもつ。

吸い込まれるような肌合い

郝 玉墨さん
日本画の博士課程では、鏑木清方の「妓女像」の想定復元模写を通して、近代日本画の美人画における胡粉を活かした表現を研究。胡粉と墨を活かし描き出す女性像や猫は、吸い込まれるような肌合いを持ち、絵の中の緩やかな時の流れに鑑賞者を誘う。

ドアノブから広がる世界

筧 由佳里さん
今回の出品作は、作家がボストンで出会ったドアノブ店がイメージの原点となっている。「驚異の部屋」(ヴンダーカンマー)を彷彿とさせる脈絡のない並びは、人が星を結んで星座を作り出すように、鑑賞者に自由に物語を紡がせる。また、ドアノブは「ドアの向こう」「ここではない世界」をも示唆する。多様な表現を駆使した本作は、さまざまな角度から鑑賞してもらいたい。

作者と受け手の間にある「相互性」

齋藤 愛未さん
絵画は作者と受け手の間に解釈の幅がある、つまり「完全には伝わらない」という前提があり、作り手と受け手の間で、あるときは気が付いたりまたあるときは伝わらなかったりする「相互性」があると作者は考えている。今回はアートプラザのやさしい雰囲気にあわせて花をモチーフに選んだ。ガラスの一輪挿しに生けられたチューリップは、洋画のようでおもしろい。

中国の明時代の衣装や古典文様を独自の技法で

甘 甜さん
中国の明時代の衣装や古典文様をモチーフに、現代の女性の様子なども織り込み、ひとつの場面がつくられている。墨を磨くという作家独自の手法で描かれており、驚くべきことに下図無しで描かれている。

綿密に設計された構図の抽象画

真田 将太朗さん
抽象表現ではあるもの、構図は綿密に設計してからキャンバスに向かう制作スタイル。青の作品は風景を長い時間眺めていた時の揺らめきの感覚を再現している。もう一方の「減衰」は絵を描いている時の自分をテーマにしており、描き進めるうちに段々と繊細になっていく流れを再現。

壺を人体のメタファー

清水 雄稀さん
「蓋と標徴のある壷」は壺でキャラクター(性格、人格)を表現することを試みたシリーズ。壺を人体のメタファーとし、蓋は壺(人)の持つ内面と外見を隔てる理性、文様などの装飾は壺と蓋を繋ぐ標徴を表す。

学生の基礎課題に刺激を受けた原点回帰的作品

城山 みなみさん
抽象的なフォルムの雛人形の鋳銅花器「立雛」。左がお内裏様、右がお雛様を表している。長岡造形大学の鋳金工房に勤務する作者が、鋳金を学ぶ学生の基礎課題である「回転体」に刺激を受け、原点回帰的に制作した。

自然の循環に自分自身を置きたい

鈴木 初音さん
植物を育てる過程で得られた素材を用いて制作している。自分自身を自然の循環に置きたいと考える作者は、グラッフィートで使用する色材にも採取した土を用いており、それが柔らかな色合いになって表現されている。

「観る」とは何か。我々は何を「観て」いるのか

瀧澤 春生さん
作家は「観る」をテーマにして制作に取り組んでいるという。出品作の男の子と女の子は、それぞれの片方の目を閉じている。目に映るものが本当に見えているのか、閉じた目の方で何かを見ているのかもしれないという問いが、観る者に投げかけられる。

割れることをポジティブに

布下 翔碁さん
割れた陶磁器に乾漆の造形を融合させたシリーズの新作。今作は「百閒窯(ひゃっけんよう)」から出土した陶片に、欠損部を乾漆で補ったもの。割れるというネガティブなことをポジティブに変換し、素材の不可逆性を環境への負荷などとともに問いかける。

理想化されたミニチュアの世界に、現実の違和感を

野村 絵梨さん
生活空間に存在するアイテムをミニチュアの比率(フォルム)に変換して、それをまた実寸に戻すシリーズ。ミニチュアの生活用具などは理想化された世界で、そこに生活感やデティールを付与して、あえて違和感を生み出している。コロナ禍以降、過剰な衛生を追求する世の中に、生き物としての不自然さを感じているという、作者ならではの表現。

ヤンキー文化を独自解釈!

長谷川 雅子さん
戦後の大衆の娯楽であったカストリ雑誌に共通する「共感」や「笑い」を癒しに繋げるような作品を目指している。古い雑誌や図鑑が好きだという作者は、絵の中で内的/外的な事を掛け合わせて図像にし、トラウマを笑いに消化しようとする。描かれた「(モンキーマインド)」とは仏教用語で、サルが木々を飛び回るように、想いや考えが頭の中で巡り騒がしい様子を指し、煩悩などを野猿に例えている。

まるで富嶽三十六景!窓から覗く立山連峰

龐 夢雅さん
高岡市にある作者の実家の窓から見える景色をモチーフとした作品。窓からの景色の中にもうひとつ窓を作り、作者はそこに見える立山連峰に、大切な人や思いを象徴させる。絵画にかけられた和紙は、カーテンのイメージ。

消えつつあるものを化石に見立ててる

水巻 映さん
カセットテープ、公衆電話など、少し昔のものをモチーフに、化石に仕立てた彫刻作品。デジタル化により実態を持つものが消えつつある今、過去の存在や文化を証明するものとしてのカセットテープ=音楽を化石として作家は表現する。テープの部分も全て石製。タイトルは大瀧詠一の名曲からインスパイアされているが、カセットの造形はヴァンヘイレンのテープを参考にしたのだそう。

他の作品をつくる過程で出た端材を再構成

皆川 百合さん
端材を再構成するシリーズ。他の作品をつくる過程で出た端材を織っている。実験布や端布を再利用するプロセスから「解体と再構築」 をテーマに、不規則な模様と規則的な行為を、「色むら模様」に再構築している。

版画で記述する記憶

宮下 咲さん
作者は版画の技法を使う際に意図と少しズレが生まれる、そのギャップに興味を持ったという。そのプロセスを、頭の中に浮かんでは消えてしまうイメージや、書き留めると姿を変えてしまう様子を記述するというコンセプトに結びつけた。テキストを書くための原稿用紙やルーズリーフ等を支持体あるいはイメージとして選び、版画の手法を用いて定着させている。

ミクロとマクロで山を描く

村尾 優華さん
山を描くシリーズの新作。山で出会う樹皮と地衣類をモチーフにした初めての作品で、雲龍紙(ランプセードなどに使う工芸紙)と木目で、自然のつくる模様にリンクさせている。背景部分は、工芸用のランプシェードなどをつくるためのもので、裏から金属箔を張っている。

生き生きとした動物の姿

村中 恵理さん
生き生きとした動物の姿と、それらを取り巻く美しい植物の世界を有線七宝で表現。銀線による緻密な構成と、釉薬の美しい発色は、学部では彫金、修士課程ではガラス造形を専攻した作者ならではの技術力が発揮されている。

アイスコーヒーと水道は揺れ動く心の象徴

本村 綾さん
2作品は、ともに「水」をキーワードに、作者の内面を描写している。「ゆらゆら」は、夏休みの電車での一コマ。夏休みは夢と現実のはざまで、揺れるアイスコーヒーのように、これからどうしようと心は揺れ動く。「コップがない」は1日の終わりに、今日起きたちょっとしたできごとや後悔に思いを馳せている。受け止めるためのコップがなくただ流れる水は、解決するための術がないことを象徴する。

でっかくなっちゃった!

森 聖華さん
アートプラザ大賞の受賞作のフグと比べて今作はさらに巨大化! ヒレや紋様などディテールはよりリアルに表現された。古設楽の土で制作。シュールでトンチのきいた面白さを追求したい、と作者は話す。

「絵画のぬいぐるみ」に注目

森下 絵里奈さん
右上に展示された枕のような作品、これは絵画のぬいぐるみ! また中央の作品は、レジンの雨粒と鏡を使ってつくられた雨の日の窓。見るたびに変化する窓の雨粒と同じように、作品自体も鑑賞者や観る角度・方向によって違いが生じる。 なお、梱包の箱にもドローイングを施しており、箱も含めて作品のようにも捉えられる。

蝋を加熱することで見せる不規則な変化

李 菲菲さん
作者は中国・遼寧生まれ。「消滅、虚無」の臨界に近づいていく様態を「儚の進行態」と呼び、蝋(ろう)をランダムに加熱していくことで不規則な変化を見せる作品を手がけている。自身の人生を象徴するという「五重塔」に、作者は作品のモチーフを得ている。

一枚の金属板から生まれたブルドッグ

若林 真耶さん
一枚の板を鍛金し、最後に溶接して制作したというブルドッグ。自分がつくりたいものをシンプルにつくりたかったという作者は、手間のかかる打ち出し技法で個性的な人物像を表現することを得意としている。潤んだ目や湿った鼻など、ブルドッグへの愛情を感じられる。

デジタルで設計された、色へのこだわり

渡邉 泰成さん
紙もデータもいつかは消えてしまう。そうした記録の「脆弱性」に着目し、長期間かたちを残し得る焼き物を素材に選び、シミュレーションしたデザインをアウトプットしようと試みている。色によって最も発色の良い温度帯が異なるため、デジタル上でレイヤー分けして温度設定をし、複数回異なる温度で焼成。そうして生まれたかたちになった記録で、「社会と接合すること」「問題提起すること」を目指す。

企画展「The Prize Show!~What’s 藝大?~」


会期:2022年9月10日(土) – 10月30日(日) 11:00〜18:00

前期 9月10日(土)- 10月2日(日)第1回-9回受賞者による展示
後期 10月8日(土)- 10月30日(日)第10-16回受賞者による展示

※月曜休(祝日は営業、翌火曜休業)
※一部作家は、展示期間が異なる場合がございます

出展作家

前期(24名)
石田 菜々子/猪瀬 昌延/大野 直志/加藤 萌/川島 理惠/小林 あずさ/小林 真理子/薦田 梓/鹿間 麻衣/先﨑 了輔/地村 洋平/東條 明子/中村 弘峰/福島 沙由美/福村 彩乃/藤枝 奈々/細田 麻理奈/前田 恭兵/牧野 真耶/水代 達史/満田 晴穂/安河内 裕也/山本 真衣/吉田 周平
後期(29名)
縣 健司/VIKI/大島 利佳/小倉 慎太郎/小田川 史弥/郝 玉墨/筧 由佳里/甘 甜/齋藤 愛未/真田 将太朗/清水 雄稀/城山 みなみ/鈴木 初音/瀧澤 春生/布下 翔碁/野村 絵梨/長谷川 雅子/龐 夢雅/水巻 映/皆川 百合/宮下 咲/村尾 優華/村中 恵理/本村 綾/森 聖華/森下 絵里奈/李 菲菲/若林 真耶/渡邉 泰成

作品の見どころを藝大アートプラザweb編集長 セバスチャン高木が解説した音声はこちら

写真撮影: 今井裕治

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