COLUMN & INTERVIEW コラム&インタビュー

おめでとう!の春色展 出品作家インタビュー 相澤ななほさん(絵画専攻油画技法・材料修了)

2019/04/10 インタビュー

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和紙に水彩絵具で繊細な花を描く、相澤ななほさん。藝大に入ってから、現在のスタイルで描きたいものを描けるようになるまで、さまざまな葛藤がありました。今回の出品作品についてはもちろん、いままでの変遷についても伺いました。

和紙に水彩絵具で描いているため、洋紙に描くよりもふわっとした雰囲気が出ていますね。

使っているのは日本画用の普通の和紙です。厚手の高知麻紙を選びました。キャンヴァスは跳ね返ってくるかんじかして、抵抗感が強く、肌に合いませんでした。一方、和紙はやわらかく、受け止めてくれるように感じます。描き心地も良いです。学生時代は和紙に油彩で描いていました。習字用の半紙や、てんぷらを盛るときに使う紙などにも試したのですが、耐久性の面で心配だったこともあり、高知麻紙に落ち着きました。

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相澤ななほ「染井吉野」

花を見ながら描くのですか?

今回の出品作は写真を撮って、それを参考に描いていますが、基本的には実物を見て描くようにしています。大きい枝の花を買ってきたり、近所に生えているものをスケッチすることもあります。完成作よりも広い範囲で下描きして、そこからトリミングして構図を決めていきます。その下描きを拡大コピーしたものを本番の紙の上に置いて、下にカーボンなどは入れずになぞって、へこんだ跡だけつけています。下描きの線はあまり見えないのですけど、それで良くて、実際には実物を見ながら形を決めていきます。花は描いているうちに枯れてくることもあるので、そういうときに下描きの線を頼りにします。ですので、下描きと実際の絵は変わることもあります。

今回の作品を描くにあたって苦労した点はありますか。

桜のあわいピンク色です。いままでこのような薄いピンクを使ったことがなかったので、ウィンザー&ニュートン(水彩絵具メーカー)のパーマネントローズを新たに買いました。また、背景の水色を強くして、ピンクが少し薄く見えるように工夫しています。

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相澤ななほ「枝垂桜」

子どもの頃から絵には親しんでいたのでしょうか。

絵画教室に通っていて、絵は好きでした。小学2年生から油絵具も使って、楽しかったのですが、小学校6年生のときに大人向けの教室に通いはじめたら、いきなり油絵でヌードを描くことになって驚きました。最初、服を着ていたのでコスチュームかなと思っていたのですけど、途中ではおりを脱いで......。衝撃的すぎて、家族以外誰にも言えなくて、教室にも通うことができなくなってしまいました。このときに少し美術からは離れていましたが、高校では美術部に入っています。

藝大を目指したきっかけを教えてください。

進路についてなにも考えていなかったんです。普通の都立高校に通っていて、2年生のときに進路を決めなければならなくなったのですが、勉強がまったく得意ではなかったので、普通の大学に入るのは難しいと思いました。そんなとき、美術部の友達が美大を受験するというので、私もやってみようと思って予備校に通いはじめ、受験しました。なので、最初は藝大のことを知らなかったぐらいです(笑)。それなのに受かってしまったので、合格を知ったときには正直「これからどうしよう」と思いましたね。

学部は油画専攻ですね。

そうです。学校に入ってからは、いろいろ苦労がありました。自分より上手い人ばかりだし、いきなり現代美術の世界に入ったので、授業で先生が喋っている専門用語がわからなくて、ついていけなかったです。予備校はひたすら描くだけなので、デッサンの基礎は知っていても、現代美術のことは知りませんでした。「インスタレーション」という言葉すら、藝大に入って知ったくらいです。

まわりの学生も現代美術をやる人が多かったのでしょうか。

インスタレーションや、パフォーマンスが多かったですし、絵を描いていたとしても抽象画がほとんどです。たまに、写実で描く人がいても花は描いていなかったですね。

相澤さんは当時、花を描いていたのですか?

こういう絵を描こうと思いませんでした。新しいことってなんだろう、個性を出すにはどうしたらいいのだろう。そればかり考えていて、自分がなにが好きで、なにが描きたいかを考えていませんでした。よくわからないオブジェをつくったり、抽象画を描いたりしていました。今思えば、本当はこんなのを描きたくなかったんじゃないかと思います。卒制(卒業制作)は「永えの歌」という作品なのですけど、なんでこれを描いたのか自分でもわからない(笑)。若い頃の自分に「普通に描いていいよ」と言いたいですね。

現在の描いている花の絵は、依頼を受けて描くことも多いですが、自分が美しいと思ったものを描いているので、とても楽しいです。いろんな人がいてよいと思うのですよ。私は、単純に絵が描きたいだけなので、無理して現代美術をやることはないと思えるようになりました。最近ようやく楽しく描けるようになりましたね。

●相澤ななほプロフィール

1978 年  東京都生まれ 
2003 年  東京藝術大学大学院美術研究科修士課程絵画専攻油画技法・材料研究分野修了
2004 年  第22回全国絵画公募展伊豆美 入選
トーキョーワンダーサイト0号展2003 入選
2006 年  ワンダーシード2006 入選
2009   雑誌「一枚の繪」に作品掲載多数


取材・文/藤田麻希 撮影/五十嵐美弥(小学館)

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