藝大の学生を対象としたアートコンペティション「藝大アートプラザ・アートアワード2024」(旧「藝大アートプラザ大賞」)の授与式が3月18日、藝大アートプラザを会場に開催されました(写真下)。
授与式には、各賞の受賞者をはじめ、審査員を務めた日比野克彦・東京藝術大学学長や藝大アートプラザ所長で東京藝術大学美術学部教授の箭内道彦氏、相賀信宏・小学館代表取締役社長らが出席。各賞の受賞者に一人ずつ賞状などが贈呈されました。
この記事では、授賞式の様子とともに受賞者代表によるスピーチの一部をご紹介します。
各受賞作の詳細、審査の様子はこちらからご覧ください。
アートアワードの受賞は将来の自信に
授与式の冒頭、審査員を務めた日比野克彦・東京藝術大学学長があいさつ。受賞者一同にお祝いの言葉を述べたうえで、「東京藝術大学の特徴でもある多様な学部・学科、専攻の存在は、アーティストにきっと『こんなものもつくってみたいな』というインスピレーションを与えると思う。そんなときに発表でき、さらに販売もできるのが藝大アートプラザの良さであり、アートアワードの意義だ。自分のこれからの作家活動においてこの藝大アートプラザ・アートアワードでの受賞歴というのは好影響を及ぼしていくと思うし、将来の自信につながっていくのではないかと思う」と話しました。
続いて、今年度の大賞を受賞したこのみまほさんに日比野学長が賞状とトロフィーを授与。準大賞を受賞した川目七生さん、三浦潮音さん箭内・藝大アートプラザ所長(下段写真左)から、それぞれ賞状とトロフィーが贈られました。
引き続いて小学館賞の受賞者・河崎海斗さんには小学館の相賀社長(写真下)から、CCI賞の袁辰(エンシン)さんには岸岡勝正・株式会社CARTA COMMUNICATONS取締役執行役員(下段写真左)からそれぞれ賞状とトロフィーが手渡されました。
受賞者代表スピーチ
大賞 このみまほ
その後、受賞者を代表してこのみさんがスピーチを行いました。
このような場を設けていただき、また、学生が自らを試せる場所として、アートアワードを続けてくださっていることが本当にありがたく、まずお礼を申し上げたいと思います。
藝大アートプラザ・アートアワードへの出品は、私は今回が初めてでした。学部生としての3年間は出品しようというところまではいかなかったのですが、前回の藝大アートプラザ・アートアワードに応募した友人の作品搬入を手伝った際に、記念として私にもドリンクチケットを頂いて、なんだか私はそれがすごくうれしくて。「来年、私もこれ出してみてもいいかな」と思ったのが、正直に言うと出品のきっかけでした(笑)。
そして昨年11月、卒業制作として自画像を卒展に出すことになり、私はそれを版画を作ったのですけれども、その時に「もう少し踏み込んだ表現をしてみたい」という思いが湧き、その場ですぐ新しい版を作って、自分なりの版画を制作してみたのが、この作品でした。
このみさんの受賞作『We Will Meet Again (You Must Believe In Spring)』 制作してみて、家に飾っておこうとも思いましたが、やはりどうせなら自分を試してみようと思い、エントリーさせて頂きました。私は彫刻を専攻しており、こうした版画作品を人にもほとんど見せたことなかったので、どういう評価をいただけるか、おそらく箸にも棒にもかからないだろうとも思ったのですが、「ドリンクチケットをもらいに行った」という言い訳を自分の中で用意して作品を持ち込んだのでした。
大賞受賞のメールを頂戴したときには、手が震えるぐらい嬉しく感じました。
また、日比野学長をはじめとする講評を拝見して、当時ちょうど卒業制作が仕上がったばかりでしたので、ジェットコースターに乗っているような気分の中で講評を何度も何度も読み返し、自分の好きな方向で作品を制作して、それを見てくれる、評価してくれる人がいるんだ、ということ自体がとても嬉しく、また感動しました。自分を試してみて本当によかったと思います。評価はわからないけど、自分が感じるように作品を作ってみて、それをパット出せるちょうどよい「距離感」が藝大アートプラザにはあります。そのことへのお礼を合わせて申し述べたいと思います。ありがとうございました。
箭内所長の総評と受賞者のみなさん
最後に、箭内・藝大アートプラザ所長が総評。「ダイバーシティーということが言われるようになって久しいが、社会にはさまざまな人がいるなかで、たった一つの作品ですべての人の心を豊かにしていくことはできないと思う。そういう意味で、藝大アートプラザの作品も、『激しく』多様であるべきだと僕は思っている」として、「このアートアワードからどんどん社会にデビューしていってほしいという観点で審査を行ったが、そういう意味では、『これは授業の課題で出したら叱られちゃうかも』と思うくらい、もっと暴れてもらってもよかったと思う。藝大アートプラザからどんどん世の中にアーティストを送り出していきたいと思っており、これからも強い思いと愛情と願いを持って制作をしてほしい」と話しました。