この建物を次の世代に繋げたい。
そんな活動のおかげで残っている建物が、谷中には多く存在します。
今回紹介する「SCAI THE BATHHOUSE(スカイザバスハウス)」もそのひとつです。
閉業した銭湯がギャラリーとして使われ、令和の現代でも谷中の観光スポットとして根強い人気を博しています。
今でこそリノベーションという言葉が浸透し、古い建物が他の業態に転換する施設も多く見受けられますが、その先駆けとも言えるのではないでしょうか。
昭和の銭湯そのままの外観
SCAI THE BATHHOUSEのもともとの姿は、「柏湯」という銭湯でした。
「柏湯」の創業は、なんと1787(天明7)年。戦時中の建物疎開により取り壊され、現在の建物は戦後の1951(昭和26)年に建て替えられたものとのこと。寺社のような立派な瓦屋根は、関東の銭湯建築らしい外観です。
銭湯らしい暖簾のかかった入口には、丸いフォルムのモダンなランプが。どこかスタイリッシュな雰囲気がギャラリーらしさを演出しています。
また、外壁の腰壁に使われているタイルもぜひじっくり見てほしいポイント。
ターコイズブルーのような美しいタイルの表面には、うっすらと枡目のような模様が見られます。こちらは布目タイルでしょうか。布目タイルとは、布を押し付けることでタイルの表面にでこぼこした模様をつけたものを指します。
こうすることで、タイルの表面にゆらぎがうまれ、全体的にやわらかな印象を生み出しています。
元・銭湯の残り香を感じられる空間
中へ入ると、思った以上に当時の銭湯のまま残されていることに驚くはず。
玄関の格子状に貼られたタイルにも味わいがありますね。
下足箱、そして脱衣所。
地元の方に愛される地域雑誌『谷中 根津 千駄木』2号(1984年12月15日発行)によれば、銭湯として営業していたときには、脱衣所に江戸時代の銭湯の風景が描かれた浮世絵が飾られていたそう。
ペールブルーのプロペラファンがノスタルジックで素敵なので、ぜひ見上げて観察してください!
浴室部分がギャラリーとなっていて、シンプルモダンなデザインで広々とした空間。
元銭湯らしく、天井の高さにも解放感が感じられます。
つなぐ人々の意思によって残される名建築
1787(天明7)年創業の柏湯が、銭湯としての営業を終えたのが、1991(平成3)年のこと。
翌年、俳優の石橋蓮司さんが閉業した柏湯で演劇を行い、それを見た柏湯の7代目当主がこの場所を残す決意をします。
それがきっかけで、現在のギャラリーを運営する「白石コンテンポラリーアート」との出合いがうまれ、1993(平成5)年にSCAI THE BATHHOUSEがオープンしました。
建物や空間を残したいという思いが、現代まで受け継がれています。
海外からの旅行客も訪れるアートギャラリー
SCAI THE BATHHOUSEで展示されるのは、現代アート作品。
横尾忠則や名和晃平など、日本の有名アーティストをはじめ、日本ではまだ認知度の低い海外のアーティストを紹介するなど、アート界隈では常に注目されているギャラリーであり、近年では若手作家の実験スペースとして「駒込倉庫」、天王洲「SCAI PARK」、昨年には六本木に「SCAI PIRAMIDE」を開設しています。
銭湯と現代アートという、一見相反するようなジャンルですが、どちらも「どんな人にも開かれた空間」という共通点があり、フラットな雰囲気がとても心地のいいギャラリーでした。
SCAI THE BATHHOUSE 基本情報
住所:東京都台東区谷中 6-1-23 柏湯跡
電話:03-3821-1144
開廊時間:12:00 – 18:00
日・月・祝日 休廊 ※展示替えの間は休廊
公式サイト:https://www.scaithebathhouse.com/ja/
2022年5月31日(火)〜7月9日(土)には和田礼治郎「Market and Thieves in a Cloiset」が行われます。
※アイキャッチ写真:撮影:上野則宏 協力:SCAI THE BATHHOUSE