上野・藝大アートプラザでは企画展「藝大アートプラザ・アートアワード受賞者展」の開催期間中、アート作品に彩られた展示空間を舞台に、東京藝大音楽学部の学生によるスペシャルコンサートを全5回にわたり開催しました。
2024年3月16日(土)の第4回は、ハープデュオ StellaHarparumによる「アートとハープを楽しむ午後」。東京藝大音楽学部に在籍する加美山舞と小口陽香による演奏で、曲目はパッヘルベル「カノン」、グラナドス「スパニッシュダンス」、フランク「前奏曲、フーガと変奏曲」の3曲。多くの人が想像する以上に多様な表現を可能とするハープの魅力が詰まった半時間でした。
多彩な曲を堪能し、心満たされる
最初に披露されたパッヘルベルの「カノン」は、ジャンルを問わずさまざまなシーンで使われている有名な曲ですが、ハープの音で聴くと透明感が際立ちます。聞いている方の中には体を揺らし、曲に合わせてリズムを取る方も。2台のハープが奏でる端正で澄みきった音色は、藝大アートプラザの空間を優雅な雰囲気で包みました。
続いて演奏されたのは、グラナドス「スパニッシュダンス」。メランコリックで物悲しい曲調で始まり、次第に明るさと輝かしさを増していく彩り鮮やかな曲で、1曲目とはがらっと印象が異なり、ハープで表現できる音楽の幅の広さに驚かされます。
今回用いられたハープにはペダルが七つもあり、それぞれ踏む場所を変えることで弦の長さを変え、ピアノの黒鍵に当たる役割を担うそうです。演奏中はエレガントに見えますが、奏者は手足を駆使しているので、水上では優美に見えながら、水中ではせわしなく足を動かしている白鳥に例えられるそうです。
最後の曲はフランク「前奏曲、フーガと変奏曲」で、オルガンのための曲をハープ用に編曲したもの。2台のハープの掛け合いは、聞く人の心に豊かな詩情と深い哀愁を呼び起こすハーモニーを奏でていました。
昔から仲良し 相性ぴったりのデュオ
加美山さんは東京藝大音楽学部の2年生、小口さんは3年生と学年は異なりますが、同じハープ教室に通っていた小・中学校時代からの友人だそう。
加美山さんにとって小口さんは「演奏がダイナミックで、音を響かせるのがとても上手。私にとって追いかける背中」、小口さんにとって加美山さんは「音の作り方が完璧で、粒がそろった音を出すことができる理想の奏者」とのこと。二人で弾くと互いの長所が倍になると評価されたこともあるそうで、相性がぴったりなのが伝わってきました。
ハープの魅力を伺ったところ、加美山さんは「まず人と被ることがなくて、一台でも演奏できるし、オーケストラやデュオでも周囲に溶け込むことができます」、小口さんは「和音も旋律も弾くことができるし、繊細だったり激しかったりと幅広い表現が可能」と熱い口調に。
今回のコンサートは「お客様に近い距離で囲まれて、とても貴重な経験」「藝大の近くにあり、音の響きが良いこの空間でデュオを行うという素敵な機会をいただけて、本当に良かったです」とのこと。今後はハープの「路上ライブ」などにも挑戦してみたい、と話していました。