上野・藝大アートプラザでは企画展「藝大アートプラザ・アートアワード受賞者展」の開催期間中、アート作品に彩られた展示空間を舞台に、東京藝大音楽学部の学生によるスペシャルコンサートを全5回にわたり開催しました。
2024年3月17日(日)の第5回は、東京藝術大学修士課程に所属する院生・卒業生である石本高雅、坂寄楽友、影山亜由子、山元三奈、石田千飛世の5名による「珠玉のオペラコンサート」。プログラムはオペラ「椿姫」「ロミオとジュリエット」「メリー・ウィドウ」「ランメルモールのルチア」、そしてオペレッタ「こうもり」で、たくさんのお客様が来場する中、多様な曲と多彩な音色を披露しました。
有名な「椿姫」や華やかな「こうもり」……幅広い曲を堪能する30分
最初の曲は、オペラ「椿姫」よりヴェルディ作曲「乾杯の歌」。石田千飛世によるいきいきとした演奏と、ソプラノの山元三奈と影山亜由子、テノールの坂寄楽友、バリトンの石本高雅による歌唱により、馴染みのある名曲が藝大アートプラザの空間に響きわたりました。
次の演奏はオペラ「ロミオとジュリエット」よりグノー作曲「私は夢に生きたい」。ソプラノの美しい声が印象に残ります。続く2曲はいずれも重奏で、オペラ「メリー・ウィドウ」よりレハール作曲「唇は黙して」の愛のデュエットと、オペラ「ランメルモールのルチア」よりドニゼッティ作曲「こちらにおいでルチアよ」。「こちらにおいでルチアよ」の歌い手たちは兄弟という設定で、ドラマチックな掛け合いは来場者を魅了しました。
そしてトリを飾ったのはオペレッタ「こうもり」よりJ・シュトラウス作曲「乾杯の歌」。ラストに相応しい華やかな演奏は賑やかな手拍子で迎えられ、大いに盛り上がりました。
今回のコンサートを企画した石本さんによれば、今回の演目は「最近は海外へ行きづらかったので、いろいろな国の雰囲気を感じていただきたい」という趣旨で選んだとのこと。曲の舞台はフランスやイタリア、スコットランド、オーストリアなどさまざまな場所なので、海外を広く旅しているような気持になれる、大変贅沢な時間でした。
音楽に詳しくなくても楽しめる演奏を
演奏者の皆さんは、コンサートを終えて「お客様との距離がとても近い、貴重な機会」「普段、あまり音楽を聴かない方にも楽しんでいただけた」「美術学部の敷地にある藝大アートプラザで演奏できた。あまり美術の方と関わることがないので、間接的な形でもコラボできて嬉しい」「演奏が(聴く人の心に)どれくらい届くのか試されている気がした」と、今回の経験を熱く語りました。
音楽家として演奏前や日常的にやっていることを伺うと、「炭酸の刺激と液体のぬめりが喉にいいので、コーラを飲んでみる」といった意外な方法や、「集中するために、気持ち程度にポカリを飲む」「特になにもしない」などのいろいろな対策があるとのことです。
海外作品を演奏する機会が多い声楽やピアノ。意識していることとしては、日本人は体が小さいのでハンデになる部分はあるものの、自分の体をより知った上で適した声を出すことや、日本語に対して敏感になるために、楽譜を見る前に谷川俊太郎の詩を読み、字から読み取る習慣をつけるほか、国内・国外を問わず、言葉を超えてお客様に分かっていただくため、感情を伝えることに集中するという方も。
演奏の姿勢は多種多様である一方で、皆さんが目指すのは「必ずしも音楽に詳しくないお客様でも、素晴らしいと感じられる演奏を行う」という点で一致していました。
今回の演奏者は、「ミレニアムシンガーズ」というグループ名で活動中とのこと。もともと藝大を卒業した同期で立ち上げたこの団体は、月2回程度コンサートを行っているそうなので、足を運んでいただければと思います。
【ミレニアムシンガーズ】
ウェブサイト:https://millenniumsingers.wixsite.com/lb1682304918278
Twitter:https://twitter.com/millenniumsiger