藝大×JR東日本の新ギャラリー「CREATIVE HUB UENO “es”」が上野駅にオープン!駅でアートを楽しむ

ライター
中野昭子
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コラム

東京藝術大学と東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)は4月23日、上野駅構内アートギャラリー「CREATIVE HUB UENO “es”」を開設しました。オープニング企画として、2024年5月19日(日)まで、吉野はるか氏の個展「センシティブ デブリ」が開催されています。

このギャラリーは、包括連携協定を締結している藝大とJR東日本が連携して開設したもので、かつて交番として利用されていたスペースを再活用したもの。床面積20平方メートルほどの小さなギャラリーですが、藝大の学生や卒業生の作品を展示することで上野駅の利用客らがアートと触れ合える機会を構築し、文化交流の場を提供・創出することを目的としています。

ギャラリーの名前に含まれる「es」(エス)とは、心理学の用語で「無意識の領域」のこと。多様な意欲やエネルギーを内在し、無限の表現領域を体現できるスペースを目指して命名されました。

さまざまな可能性を感じさせる空間

同ギャラリーのオープニング記念として開催されたのは、アーティスト・吉野はるかの初個展『センシティブ デブリ』。吉野さんは藝大美術学部絵画科油画専攻を経て大学院美術研究科壁画第一研究室に所属。2022年に博士後期課程を修了したアーティスト。

タイトルに使われている「デブリ」とは、フランス語で瓦礫を意味する言葉で、会場には藁で作られた狩猟用の民具であるワラダや、枯死した木をモチーフにしたガラス作品、写真と音のインスタレーション、野焼きの器など、多彩な作品が並んでいました。

「真新しいこのスペースの美しさや新しさを活かす展示をしたかった」と語る吉野さんの作品は、素材であるガラスの繊細な透明感や、モチーフである自然などの儚い美しさが際立ちます。床や壁面の影も効果を成し、作品同士が響き合う、詩的な空間になっていました。

「CREATIVE HUB UENO “es”」は内装が白一色のコンパクトなスペースで、かつ天井が非常に高いこともあり、今後多様な展示方法や企画の可能性を感じさせます。

上野駅交番の跡地をギャラリーとする意義

JR上野駅は言わずと知れた都内有数のターミナル駅の一つ。浅草口に面したこのスペースは、戦後間もないころから交番として利用され、2021年までおよそ80年近い年月利用された、都内でも稀に見る”老舗”の交番だったそうです。

入口上部の装飾は、本ギャラリーに近い上野駅中央改札の真上にある猪熊弦一郎の壁画『自由』で使われている色をヒントにしているとのこと。『自由』が描かれたのは、戦後の混乱が続いていた1951年。壁画が駅を行き交う人々を見つめつつ、その気持ちを明るく照らしたように、このギャラリーも上野駅という場所で、きっとこれから多くの人々にアートの魅力、そしてその「力」を長く伝えていくことでしょう。

本ギャラリーは今後、年間10回ほどの企画展示を行う予定とのこと。藝大アートプラザにお立ち寄りの際は、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

(Photo by Tomoro Ando / 安藤智郎)

info

「CREATIVE HUB UENO “es”」
住所:〒110-0005 東京都台東区上野7-1-1 上野駅 浅草口付近
開廊時間:11:00~19:00(最終入場 18:45)
休館日:原則月曜日(祝日の場合は翌日に振替)
入場:無料
HP:https://ueno-es.jp/
Twitter:https://twitter.com/UENO_es
Instagram:https://www.instagram.com/UENO_es/

吉野はるか 個展『センシティブ デブリ』

2024年4月23日(火)~2024年5月19日 (日)
開廊時間:火・水・木・金・土・日 11:00~19:00 (最終入場18:45)
*4月29日(月・祝)、5月6日(月・祝)はオープン、4月30日(火)、5月7日(火)は振替休廊

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