驚くべき観察力。伊藤若冲のゆるっとかわいいモノクロアニマルズ

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藝大アートプラザ編集部
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コラム

若冲の動物画といえば、升目描きと色彩が印象的な「樹花鳥獣図屏風(じゅかちょうじゅうずびょうぶ)」や、30幅にもおよぶ細密画「動植綵絵(どうしょくさいえ)」が有名です。しかし、モノクロで描かれた水墨作品のなかにも、キュートな動物がいっぱい! 恐るべき観察力をベースにした、若冲のゆるっとかわいいモノクロアニマルズ、じっくりとご鑑賞ください。

まずは代表作。伊藤若冲「象と鯨図屏風」

右隻 六曲一双 紙本墨画 159.4×354.0cm MIHO MUSEUM

牙と鼻を突き上げた象と、勢いよく潮を噴き上げる鯨を描いた二隻の屏風。陸と海の王者が力強く呼応し合うような構成ながら、笑っているような象の弓形の目に脱力します。若冲80歳ごろの作といわれているとか…老いてなおポップ!(?)

象だけじゃない!若冲のゆるかわ動物絵コレクション

伊藤若冲「鼠婚礼図」

一幅 紙本墨画 36.0×60.7㎝ 細見美術館 ©Artefactory/Hosomi Museum/OADIS

「おひとつどうぞ」「ややっ、いただきます」そんな声が聞こえてきそうな、ネズミの宴会シーンを描いたもの。画面の右下には、尻尾を引っぱられて到着した酔っ払いか? 新郎新婦の姿はありませんが皆楽しげで、若冲の動物愛が感じられます。

伊藤若冲「双鶴図」

二幅 紙本墨画 114.9×52.2㎝ MIHO MUSEUM

「双鶴図」と「霊亀図」で双幅を成す、「鶴亀図双幅」のうちの鶴がこれ。2羽の鶴が画面いっぱいに描かれています。純白の羽をふくらませ首をすくめた姿の鶴は、コロンとした卵形のフォルムが実にユニーク!

伊藤若冲「虎図」

一幅 紙本墨画 112.0×56.6㎝ 石峰寺

尾形光琳も長沢芦雪も若冲も、中国絵画を手本にトラを描きました。ほのぼのさでピカイチなのが、朝鮮半島からの絵に倣ったといわれる若冲のこのトラ。左をチラ見する目線、ニヤリとした口元、目玉より大きい団子状の眉毛が、なんともいえない可愛さを放っています。

伊藤若冲「蝦蟇河豚相撲図」

一幅 紙本墨画 101.3×43.0㎝ 京都国立博物館

「鳥獣人物戯画」は、さまざまな動物が2本脚で立ち、追いかけっこや相撲をする可愛さ抜群の絵巻物です。この作品に負けないインパクトとキュートさをもつのが若冲の本作。上手で四つに組むカエルと、のほほ~んと身を任せるフグ。さて勝負はどちらに?

伊藤若冲「仔犬に箒図」

一幅 紙本墨画 99.5×27.8㎝ 細見美術館

歌舞伎の隈取りのような、キツいつり目の犬。仔犬らしい愛くるしさ…というより、前足を顔に添えた子供っぽいしぐさが魅力。ひと筆描きのように見えますが、かすれた細い線でふわふわの毛並みを描いています。

※本記事は「和樂web」の転載です。

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