2022年11月5日(土)からスタートした企画展「Met“y”averse ~メチャバース、それはあなたの世界~」。
アーティストの頭の中に存在する、あるいはアーティストによって作り出される独自の世界観が一堂に会する企画展です。
11月5日(土)〜27日(日)は前期展示として17人のアーティストの作品を展示・販売しています。この記事では前期展示に出展されている作品の展示風景を、写真でご紹介します。
※コメントは、Web担当による解説です。
※写真にない作品もございます。ぜひ現地で全ての作品をご覧ください。
あらゆるエネルギーが凝縮した樹
色川 美江さん
日本のある島を訪れた作者は、島の田舎道で一本の巨木を見つける。「地球上のあらゆる生命のエネルギーが凝縮したような神秘的な存在感を放ち輝いているように見えた」と語るその樹は、生命の誕生と死の相互の結果を示し、再生と循環をイメージさせる。
モノに描かれた絵ではなく絵の形になったモノ
岩田 駿一さん
作者は版画の出身。Tシャツやバッグなど日用品へのペインティングを中心に活動している。創作活動のテーマは「生活と絵の関わり」。既存の日用品の上に図像を描くのではなく、「図像が日用品の形になっている」ができないかという考えのもとで形づくられた作品。
見る人の解釈に委ねられた「肉サボテン」
臼田 貴斗さん
出展した「肉サボテン」は作者の造語。「ただのかたち」であり、その解釈は見る人に委ねている。普段は人体の造形に取り組んでおり、肉サボテンは大作の端材で制作したのだという。
解像度が低いからこその自由
オオシオヒロコさん
モザイク技法は解像度の低さ、不鮮明さ、理解度の低さ、考察の足りなさ、ぼやっとしている状態が「わかりやすく表現できていて好き」だと作者は語る。解像度が低いからこそ、好きなように想像できる。鑑賞者の解釈の自由度が上がると作者は考える。
仮想と現実の両方を感じさせる絵画
郭 家伶さん
赤い干潟は中国四川省に実際にある場所だという。作られ、刻まれたこの作品群は、存在しない「壁」を表現しようと試みたもの。「絵画は現実世界を模倣しているので、見る者に仮想と現実の両方の空間を感じさせる」「絵画の空間を広げることを試み、絵の見せ方を変え、見え方が変わるようにしている」と作者は話す。
私たちは「魔力」を持っている
北爪 潤さん
アクリルやインク、ウレタン等を用いて「生」の躍動感と「性」の根源性をシンプルで鮮やかな画面に描きだしてきた作者。今回の出品作は、近年のテーマである「魔女」シリーズの最新作で、ジークレープリントを用いてよりフラットな画面作りを追求。情報化社会がもたらした個人による情報発信、瞬時に世界に共有される力を「魔力」と定義し、その魔力でもって監視や分断をもたらす我々を「魔女」と作者は位置付ける。
「人の強さを感じてもらいたい」
後藤 夢乃さん
何層にも重なった凹凸のある油彩画が持つ物質的な強さと、内に秘める精神的な世界で深い奥行きと重厚感を創り出している作品。画家はこれまで、弾圧されながらも負の感情と争い、戦い続ける罪なき人々に光を当ててきた。「人の痛さ、守ろうとしているもの、強さを感じてもらえたら嬉しい」と語る。
何かがおかしい
齋藤 詩織さん
一見普通の風景だが、じっくり鑑賞すると「何かがおかしい」と感じさせる。ミステリー番組や映画、小説などに着想を得て制作された作品は、虚構と現実の絶妙なバランスで構成される。水面を指差す人物は何かを見つけた様子だが、周りでそれを見る人はいない。周囲の色と相まって、何かただならぬものを指差しているように感じさせる。
女性の生きづらさはどこからくるのか?
佐々木 沙奈さん
工芸科の鍛金を専攻した作者は、卒業後「自身の生きづらさはどこからくるのか」を掘り下げ、その結果行き着いた「女性性」をテーマに据えた。自分が女性である自覚はなく、他人の意見や指摘を通して女性と認識している感覚があるという。その疑問を、激しい油画で表現した。
男性支配の社会を軽やかに斬る!
たかすぎるな。さん
言葉にならないものを視覚表現として表出させ、「見たことがないけど、共感できるもの」を作っている。出品した「愛に忠義」は、マンスプレイニング(男性が女性に対し、上から目線でコミュニケーションすること)の象徴としての武士道、さらには男性が支配するアートの世界への疑問に、軽やかに斬りこんでいるようにも見える。
忘れた記憶を樹脂の中に閉じ込める
田中 綾子さん
写真と樹脂を用いた作品。「樹脂は美術品として何百年も残る素材ではないが、経年変化の時間が自分と近い、生きているスピードが近いように感じる」と語る作者。自分の記憶と他人の記憶の境目のぼんやりしたところ、今自分が置かれている場所(記憶)の不安定さを追求している。
立体の動物と平面の模様
田村 幸帆さん
立体である動物と平面である模様の境を曖昧にし、ともに銀箔を用いることで、角度によって異なる色や形の見え方をする面白さを楽しんでほしい。そう願う作者は、絵の具の凹凸をなるべく出さないフラットな絵づくりを心がけている。
アートの値段に対する問いかけ
田村 正樹さん
自分はアーティストではなく「作る人」である、と語る作者は、今回出展した作品に100円から100万円までの値段を付けている。「なんでこれが100万円なの?」「500円だったら買ってみようかな」といった感想も含めて、「鑑賞の一環として自由に楽しんでもらいたい」と言葉を紡ぐ。アートの値段を考える機会をも提供している。
▼作者による作品解説(Instagram ライブ配信のアーカイブ)はこちら
新しいゴミを作る
林 奈緒子さん
「新しいごみを作ること」を制作テーマに、日常で起きる事柄や感覚のアウトプットを制作の核としている。今回は「箱」を起点として、容れ物であり、住まいであり、身体であり、枠組みである箱を七宝や銅版画で表現。「箱」に対する無数の視座を、共同制作で表している。
伝統的な工芸に対するアンチテーゼ
早野 樹さん
昭和のアイドルに今回の作品テーマの源泉があるという。同時に作者は、その確かな技術力をもって、伝統的な工芸に対する疑問も投げかけている。新たな工芸の模索でもある。
無定形なイメージに与えられる「皮膚」
福島 李子さん
「表面」をテーマに彫刻をつくる作者。今回は、刺繍の美しい表面とぐちゃぐちゃとしたカオスな裏面をMIX。日々の生活を通して「肌」で感じる世間と自身との距離。その模索から作者は肌という「表面」に着目し、彫刻を通じて「虚構」「記憶」「情報」「感覚」といった無定形なイメージに「皮膚」を与えて表現しようとしている。
沈没船とクジラ
山田 勇魚さん
クジラの中には沈没船が。テーマは沈没した船の「付喪神」。「沈没した船が付喪神になって動けるとしたらどうするかと考えたときに、きっと故郷に帰ろうとするのではないかと思った」という作者は、タイトルに母港に帰るという意味をこめて「帰港」と付けた。
企画展「Met“y”averse ~メチャバース、それはあなたの世界~」
会期:2022年11月5日(土)- 12月25日(日)
前期:11月5日(土)- 11月27日(日)
後期:12月3日(土) – 12月25日(日)
※月曜休(祝日の場合は翌火曜)
※11月28日(月)- 12月2日(金)は展示入れ替えのため休業
出展作家
前期(17名)
色川 美江/岩田 駿一/臼田 貴斗/オオシオヒロコ/郭 家伶/北爪 潤/後藤 夢乃/齋藤 詩織/佐々木 沙奈/たかすぎるな/田中 綾子/田村 幸帆/田村 正樹/林 奈緒子/早野 樹/福島 李子/山田 勇魚
後期(17名)
石川 直也/石川 将士/内田 有/内田 麗奈/内田 亘/大坂 秩加/官野 良太/北郷 江/小林 真理江/重野 克明/澁澤 星/菅谷 杏樹/瀬川 祐美子/ねがみくみこ/松尾 ほなみ/三澤 萌寧/みょうじなまえ
前期展示、どんな作品が気になった?編集長高木のトークはこちら
写真撮影: 今井裕治