主夫アートライターの“かるび”こと齋藤久嗣と申します。
あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします!
さて、2019年12月13日から好評開催中の「常設展」では、現役の学生からOB、教授まで東京藝術大学ゆかりの様々な作家が多数の作品を出品しています。バラエティに富んだ作品の中には、意外なビッグネームも常設展に作品を出品してくれているんです。
そこで今回は、「常設展」の中でも特に注目したい作家として、立体作品「鬼の家 – 白玉/紅葉」を出品されている齋藤芽生(さいとうめお)さんをご紹介します。
齋藤芽生さんは、東京藝術大学で油画技法・材料専攻の准教授。2019年秋には公立美術館で自身初めてとなる大規模な個展(「線の迷宮〈ラビリンス〉III 齋藤芽生とフローラの神殿」/目黒区美術館」)も成功させるなど、大活躍されています。
画像引用:アートブログ「青い日記帳」より許可を得て掲載
目黒区美術館での展覧会では、緻密な線描で描かれた花の作品から、日本各地への旅の中で着想を得た街道沿いのイメージを描いた近作まで、代表作を一挙に展示。「言葉がイメージを生み、イメージが言葉を増殖させる妖艶華麗な詩的世界」と美術史家・高階秀爾氏も2019年度「私の展覧会3点」(朝日新聞2019年12月17日付)で絶賛するなど、目の肥えたアートファンから絶賛されました。
齋藤芽生「鬼の家 – 白玉/紅葉」(二点一組+版画)230,184円(税込)
そんな齋藤芽生さんが藝大アートプラザのために制作してくれたのが、本作「鬼の家 – 白玉/紅葉」です。普段は絵画作品を中心に活動されている齋藤さんとしては非常に珍しい立体作品ですね。そしてこれは、新生藝大アートプラザのオープンを祝して制作された記念作品でもあるのです。
それでは早速見てみましょう。タイトルに「鬼の家」とある通り、鬼の顔面に見立てた、家形のオブジェが紅白一対で並んでいます。オブジェ正面の「窓」がちょうど鬼の目や口に見えますよね。また、白・赤両方とも「髪の毛」もついていますね。
展示中は点灯していませんでしたが、キャプションに「LED電球装置」とあるので、家の中に電球が配置されているのでしょうか?部屋の明かりを落として電球を点灯すると、オブジェ正面の「窓」から光が漏れ出してゾクゾクするような幻想的な世界が味わえるかも知れません。
じっくり見れば見るほど、紅白の「家」の正面に描かれ、真正面を強い表情で見据える鬼の「顔」はなかなか迫力がありますよね。玄関など目立つところに飾っておくと、魔除けの効果もあるかもしれませんね?!
優れたアート作品は、何通りもの鑑賞の仕方が可能だとよく言われますが、本作もまさにそういったタイプの作品といえるのではないでしょうか。人々が見過ごしがちな些細なモノや風景に潜む美しさを拾い上げ、美醜や聖俗、東洋と西洋など様々なイメージを混在させて独自の絵画世界を自在に創り出す齋藤芽生さんが取り組んだ挑戦的な3次元立体作品。見れば見るほど、いろいろな解釈や感想が頭に思い浮かんできそうです。
また、本作品を購入すると、なんとおまけに版画作品もついてきます。ちょうど作品の真上に展示されているのがそれで、OJUNさん(油画専攻教授)、工藤晴也さん(壁画専攻教授)、三井田盛一郎さん(版画専攻准教授)、齋藤芽生さん(油画技法・材料専攻准教授)の東京藝術大学油画科教授陣4名が「秋・夜」をテーマに制作したもの。現在世界で1作品しか存在しないレア作品です!
こちらが齋藤芽生さんの版画です。小さな版画一つとっても、齋藤芽生ワールドがちゃんと表現されていますよね。
ということで、今回は齋藤芽生さんの作品を大きくクローズアップして取り上げてみました。このように、藝大アートプラザでは、思わぬ大物作家の掘り出し物的な作品がパッと展示されることがよくあります。今後も、これは!という作品が展示されたら、今回のようにクローズアップして作品単体で掘り下げたレポート記事をお届けしますね。
それでは、残り会期が約2週間となりましたが、引き続き常設展をお楽しみくださいね。まだまだ良い作品が沢山残っていますよ!
藝大アートプラザ 常設展
会期:2019年12月13日~2020年1月19日
常設展特集ページ: https://artplaza.geidai.ac.jp/permanent_exhibition/
取材・撮影/齋藤久嗣
※掲載した作品は、実店舗における販売となりますので、売り切れの際はご容赦ください。