壁の向こうには何が?解釈と表現が多彩すぎる 企画展「藝大の壁 Inside | Outside」

ライター
藝大アートプラザ編集部
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企画展レポート

2023年1月7日(土)からスタートした企画展「藝大の壁 Inside | Outside」。
アーティストが考えるさまざまな壁を展示する企画です。壁に壁をかける、壁の絵を描く、壁に描く、壁を作る、壁の影をつかまえる、心の壁を写す、人種や国境の壁を表現する。さまざまな手法によって創造されるアーティストの壁。この記事では今展の出展作を解説とともに写真でご紹介します。

会期:2023年1月7日(土)-1月22日(日) ※月曜休
営業時間:10:00-17:00

※本人によるコメント、コンセプトシートなどをもとにした解説です。
※並びは順不同です。
※写真にない作品もございます。ぜひ現地で全ての作品をご覧ください。

ロボットにおける「物語」という壁

小野 哲也
戦後から現在に至る日本のフィクション上のロボットデザインのバリエーションを彫刻化することは、自分が育った時代や好んだものを「美術に接続していく作業」だと、作家は考える。ロボットのかたちをしているがゆえに、鑑賞者から設定(=物語)を問われることが多いという。その物語を、自身の制作における一つの「壁」として捉えた。


経歴
1981 山梨県生まれ
2009 東京藝術大学大学院美術研究科デザイン専攻 修了
展示
2009 エマージング・ディレクターズ・アートフェア ULTRA 002 青山スパイラル
2010 エマージング・ディレクターズ・アートフェア ULTRA 003 青山スパイラル
2011 エマージング・ディレクターズ・アートフェア ULTRA 004 青山スパイラル
2012 蠱惑 巧術其之参 青山スパイラル
2012 Tetsuya Ono / Wataru Ito “”w.”” 二人展 Roppongi Hills A/D Gallery
2019 デザイン科見本市 グループ展 藝大アートプラザ
2020  -Accessories- 個展 日本橋三越アートスクエア
2020  Dots, Lines, Forms グループ展 Roppongi Hills A/D Gallery

動植物が織りなす神秘的な世界

神戸 勝史
壁画の魅力は、大きな壁に刻み込まれた作品の世界に自分が入り込むような感覚にあるという。「生命の木」シリーズは、そんな壁画の持つスケールや装飾性、物語表現にインスパイアされたもの。動植物が織りなす神秘的な世界を表現している。 支持体は和紙ではなく、寒冷紗による白亜地で、まさに壁画のような堅牢な画面となっている。


経歴
1985 神奈川県鎌倉市生まれ
2012 東京藝術大学美術学部絵画科日本画専攻卒業
2014 東京藝術大学大学院美術研究科修士課程日本画研究分野修了
2015 第 41回東京春季創画展 入選(以後毎年入選)
第 42回創画展 入選(以後毎年入選)  
2017 神戸勝史展(アートスペース羅針盤)(同’20)
2019 FACE 2019 損保ジャパン日本興亜美術賞 入選(同’21)
2021 第10回Artist Group―風―大作公募展 入選
2022 第9回 郷さくら美術館 桜花賞展 入選 
   神戸勝史展「はじまりの木」(美の起原)

写真と撮影者の意思との間にある齟齬

小西 恵
写真を撮るという行為、さらにはそこから生み出される記録、カメラそのものなどを、「内と外を分けている存在」として、本展のテーマ「inside | outside」に引き寄せて解釈した。対象を撮ろうと思った瞬間の情動を生かすために、ファインダーを覗かずに即座に撮影。そのため、対象との焦点がずれていたり、フレームアウトしているなど、撮影者の思惑と残る像との間に齟齬(そご)が生じる。そうした関係性の変化の度合いを作品化している。

経歴
2019 東京藝術大学美術学部先端芸術表現科卒業
2021 個展「いくつかの情緒とひとつの身体」

手にとって鑑賞する「光の空間」

作田 美智子
壁とは「投影」するものだと作家は話す。「私はガラスという素材の魅力を引き出すものづくりを続けてきました。光を透過するところと遮断するところを作り、光を当てると、ガラスの塊の中に奥行きのある風景が投影されます」。写り込む角度やガラスの厚みを考えながら、「影でドローイング」をするような感覚で「光によって完成するガラス空間」をつくり出している。小立体は手に取って、いろいろな角度から光を当てて鑑賞してもらいたい。


経歴
1982   神奈川県生まれ
2005 女子美術大学美術学部工芸学科卒業
2007 東京藝術大学大学院美術研究科修了
2009~ 女子美術大学 非常勤講師
2017   アートギャラリーホーム チャームプレミア目白お留山常設作品設置
2020   hitoto広島TheTower常設作品設置
2021   いい芽ふくら芽in Tokyo優秀賞受賞
2021   ザ・パークハウス三田ガーデンレジデンスアンドタワー常設作品設置
2022   個展「斜影」コバヤシ画廊
2022   グランクレア昭和楽園町常設作品設置

人とアートの間の距離を近づける

式場 あすか
あるギャラリーの1室(1区切り)の空間について考え始めたことがきっかけとなって生まれた作品。「展示室」という大きな箱のような空間は、壁で区切られているようで、そうではない。作家が試みたのは、人とアートの間に存在する壁を越える、包まれるような感覚、やさしく近づけるような展示。作品にふれてもらうことを前提としている。


経歴
1993  千葉県出身
2019 -2020 トルコ・アナドール大学 留学
2022  東京藝術大学美術研究科修士課程 陶芸専攻 修了
2022  「食・礼賛」(Gallery TK2、東京)
    「S p a c e」個展(Gallery TK2、東京)
    「七つの陶」(桃林堂 青山本店)
    「第 70 回 東京藝術大学 卒業・修了作品展」(東京藝術大学 大学美術館)

壁は自然界にはない

瀬戸 優
主に野生動物をモチーフとした彫刻作品を制作している。「そもそも壁という概念は人間特有のもので、完全な平面というのは自然界にはほとんど存在しない」。そのため、本展では「種の壁(vertebrate=脊椎動物の意)」と「台座」をコンセプトにして制作を進めた。作品の台座は黄金比になっており、壁に見立てた台座と鳥類を構成している。


経歴
1994  神奈川県生まれ
2020  東京藝術大学大学院美術研究科修士課程彫刻専攻 修了
2015  藝大アーツイン丸の内賞2015 GAM賞受賞
2016  観◯光賞 第二席受賞
2017  KENZAN2017 roidworksgallery賞受賞
2020  東京医科歯科大学奨励賞受賞
展覧会多数

人間という存在への疑問

土屋 裕介
「ひとつをふたつに ふたつがひとつに あちらがこちらに こちらがあちらに ふたつのあいだの境界線 壁というあわいの形」。作家はそのようにコンセプトを語る。人間という存在への疑問や、不思議に感じていることを、作品を作りながら回答し、推論を形にしていく。その背景には「人とはどういうものか」という根本的な問いがある。


経歴
1985 千葉県生まれ
2009 東京藝術大学美術学部彫刻科卒業
2011 東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了
2022 個展「node」 Gallery KIDO Press、東京
「インクルーシブ・サイト-陶表現の現在」千葉市美術館、千葉
  宮内優里 アルバム「Beta」アートワーク制作
2021 個展「Pale leght」 岡の、東京
個展「arium」 gallery Kasper、神奈川

ステンドグラスは窓の藝術

中村 愛子
窓とは、採光と通気を主な目的として設けられる、壁面に施された開口部。けれども、それは人や動物が行き来する通路ではない。向こう側の存在に触れることはできず、交わることはできない。しかし、見たり感じたりすることはできる。壁を隔てた向こう側の世界を、作家自身が「窓の藝術」と呼ぶステンドグラスで表現している。


経歴
2013 東京藝術大学 美術学部 絵画科油画専攻 卒業
2016 東京藝術大学大学院 美術研究科 壁画第2研究室 修了
2017 ステンドグラス アトリエマツダ研修生(フランス)
2018 平成30年度ポーラ美術振興財団在外研修員(フランス)
2019 フランス国立高等工芸美術学校/ENS AAMA ステンドグラス科 卒業
2019 「REVELATIONS -Biennale Internationale Métiers d’art & Création-」
     グラン・パレ/Grand Palais (パリ)
2020 令和2年度文化庁新進芸術家海外研修制度研修員(フランス)
2020 「ポーラミュージアムアネックス展2020 -透過と抵抗-」
     ポーラミュージアムアネックス(東京都)
2021 パリ ガラス高等工芸美術学校/Lycée Lucas de Nehou
ステンドグラス専攻ガラス描画科 卒業
2021 個展「Exposition de vitrail d’éte」パリ国際大学都市日本館
/Cité Internationale Universitaire Maison du Japon (パリ)

噴水を下から見上げる

平松 可南子
噴水という、重力によって常に変容する現象をモチーフにしている。出展した絵画は、噴水を下から見上げたもの。壁にかけられたその作品は、重力を壁に対して垂直方向に変化させているとも捉えられる。「鑑賞者の『見る』という方向に重力を重ねてみた」という試みは、作家がこれまで挑戦してきた「鑑賞の中で変容する経験を捉え直す」というコンセプトの延長線上にある。


経歴
1997 大阪府生まれ
2020 京都造形芸術大学(現:京都芸術大学)美術工芸学科 油画コース 卒業
2022 東京藝術大学大学院 美術研究科 絵画専攻 油画研究室 修了

2022.10 「ART AWARD TOKYO MARUNOUCHI 2022」三菱地所賞 受賞
2022.07 「第25回グラフィック1_WALL展」ファイナリスト
2022.08 個展「すこしずつちがう」六本木アークヒルズ25階(東京)
2022.06 「ART IN THE OFFICE2022」グランプリ 受賞
2022.02 「東京藝術大学修了展」東京藝術大学(東京)
2021.01 個展「Ghost of Peach」 とりときハウスギャラリー(東京)
2020.11 個展「展覧会練習」東京藝術大学取手キャンパス拡大室(茨城)

感情があるからこそ生まれる壁

福永 祐子
「私とあなたをつなぐ川は、心という壁で形を変える/壁は流れに緩急をつけて川の姿をいびつに歪ませる/私とあなたの感情は、いくつもの水流が合流しひとつとなっては分岐するように/近づいては離れてゆく」。感情があるからこそ、人と人には隔たり=壁が生まれる。しかし同時に、それを受け入れ、感情や関係性を変えることにこそ、壁の存在意義があるのではないか。作家はそのような問いを投げかける。


経歴
1992 福岡県生まれ 
2017 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業
2020 東京藝術大学大学院美術研究科壁画分野修士課程修了
2021 フィレツェに関わる作家の作品展 のばなart workin GINZA
    七つの星展 Gallery fu
2021 フィレツェに関わる作家の作品展 のばなart workin GINZA

会期ほか

会期:2023年1月7日(土)-1月22日(日) ※月曜休
営業時間:10:00-17:00
会場:藝大アートプラザ(東京都台東区上野公園12-8 東京藝術大学美術学部構内)
入場料:無料

出展作家

小野 哲也/神戸 勝史/小西 恵/作田 美智子/式場 あすか/瀬戸 優/土屋 裕介/中村 愛子/平松 可南子/福永 祐子
以上10人

写真撮影: 今井裕治

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