第13回 藝大アートプラザ大賞展 出品作家インタビュー 郝玉墨さん

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中国からの留学生である郝玉墨(カク ギョクボク)さんは、大学院の保存修復日本画研究室で伝統的な日本画を勉強しています。今回の受賞作も近代の日本画を見たことをきっかけに描かれた作品ですが、絹を用いた伝統のスタイルが、かえって現在においては新鮮に見えてきます。そんな作品を制作した郝さんにお話を伺いました。

小学館賞を受賞した「寝子」について説明していただけますか。

私が在籍している保存修復日本画研究室は、東洋の古画の保存修復や模写をし、そこから学んだことを身に着けて新しい作品を生み出せるようなことを奨励します。この作品を描いたきっかけは、山種美術館に所蔵されている、竹内栖鳳の「班猫(はんびょう)」という有名な猫の絵に感動したことでした。とくに毛の表現に惹かれて、私もこのような毛を描きたいと思いました。もともと猫が大好きで、普段から写生したりしています。今回アートプラザ大賞に応募するにあたって、寝ている猫を写生して制作しようと思いました。

この絵は絹本に描いています。私は今、日本近代美人画に関する研究をしており、その作品はほとんど絹に描かれています。中国では絹は昔から支持体として広く使用されていますが、現在の日本画の展覧会を見ると、紙が用いられる作品が多く、逆に絹がなかなか使用されていようでした。なので、日本の絹を使って、猫を描こうと思いました。それから、後ろに薄美濃紙、美栖紙と小麦粉澱粉糊を用い、肌裏打ちと増し裏打ち作業を自分で行いました。

この絵を描くときに一番苦労したのはどこですか。

猫の顔です。均一な呼吸をして、落ち着いた感じで寝ている状態を表現したかったので、目とか鼻とか唇などをすごく真剣に描きました。それが大変でした。

小学館賞を受賞した今の気持ちは?

ずっと自分の作品に自信がなかったので、あんまり人に見せたくありませんでした。今回のアートプラザ大賞展も人生で初めて応募しましたので、小学館賞をいただいて、驚きました。大変嬉しくて、自分も作家になれるかもしれないと考えが変わりました。

今後はどんな作家になっていきたいですか。

私は伝統的な絵画が好きです。絵具の使い方など、今まで知らなかった絵画技法を先生や先輩から勉強させてもらえる研究室にいますので、伝統の絵画から何かを受け取って、自分の作品に生かしていきたいと考えています。

今後も美人画や昔の日本画を描いていくのですか。

この展示をしたことで、ほかの方からちょっと古いんじゃないかという意見を言われまして、今後はもっと考えながら新しいことも頑張っていきたいと思っています。これからも研究を続け、よりよい作品を作れるように頑張りたいと思います。ありがとうございました。


●郝玉墨プロフィール
1990年 中国北京生まれ
2012年 天津美術学院中国画専攻工筆人物画研究室 卒業
2013年 日本に留学
2015年 筑波大学大学院人間総合科学研究科芸術専攻日本画研究室 研究生修了
2017年 東京藝術大学大学院美術研究科修士課程文化財保存学専攻保存修復日本画研究室 修了  修了模写平山郁夫奨学金賞受賞 

2018年現在  東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程文化財保存学専攻保存修復日本画研究室2年


取材・文/藤田麻希 撮影/五十嵐美弥(小学館)

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