COLUMN & INTERVIEW コラム&インタビュー

企画展「藝大もののけ祭り 百鬼夜行展」出品作家インタビュー 小西恵さん(大学院先端芸術表現科在学中)

2019/09/13 インタビュー

現在、藝大アートプラザで開催中の企画展「藝大もののけ祭り 百鬼夜行展」入口前には、ミラースプレーを不均等に吹き付けたアクリル板を湾曲させ、向かい合わせに固定したオブジェ「( )a ghost.」が展示されています。その中に入った鑑賞者の姿が横に伸びたり、透けて見えたりするため、鑑賞者自身が作品のテーマである「わけのわからないもの」「異形のもの」に同化するという、非常にスリリングな作品です。このアイディアは、どこから生まれたのでしょうか。

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この作品を作ろうとしたきっかけを教えてください。

これは昨年の卒業制作に向けて制作したものです。ちょうど2018年は人間関係や自分の身の回りに変動のあった年で、そのたびに自分が極端な思考に偏ってしまっているということにも気付かされた年でした。卒業もあるし、自分の居場所がかなりグラついていたんです。そんな自分自身の迷いを表現するために、愛読している士郎正宗のコミック作品「攻殻機動隊」のテーマにもある“自己という存在”からヒントを得て、この作品を作りました。タイトル「( )a ghost.」は、「攻殻機動隊」に出てくる草薙素子のセリフ「そう囁くのよ、私のゴーストが」の引用。()の中に、鑑賞者自身の言葉を入れてもらいたいと思ってつけました。今回の企画展のテーマを聞いて、作品との関連にハッとしました。自分の作品を多面的に鑑賞して頂けるのはとても興味深く、今後のやりがいにも繋がりますし、そのゴーストにあたる部分を鑑賞者の皆さんと共有できたら、昨年の私の迷いも救われるかなと思っています。

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小西恵「( )a ghost.」(756,000円)

なぜ、このような形状にしたのですか?

この形状の作品やパブリックイメージは多くあるので見慣れてる方も多いと思うのですが
・2つが向かい合っていること
・自分が映りかつ外の透けた他人も映ること
・基本的に映るもの全てが歪んで見えること
は条件として初期から大切にしていたことでした。極端な思考になった時は他人が見えなくなったり、自分が見えなくなったりするけどそれぞれと良い塩梅の距離感を保つとちょうど我に返る時があるんです。現実を見ることが出来るというか、そういうポイントがこの装置にもあって、心象風景を物体として建ててみようと思ったのが形状を決める時の発想でした。

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これはこの作品のコンセプトシートなのですが、格子状になっていてどこからでも読みはじめられるようにしてあり、上の方が表面的なことの説明で、下にいくにつれて水面下で流れている考えごとのようなイメージです。横のモノクロの画像はパブリックな建造物の中で参考にしたものたちです。街の写真をいくつか撮って、自分の作品に取り込むことはよくあります。

この作品を制作するうえで、一番大変だったことはどんなことですか?

大きくし過ぎたことですね(笑)。アクリル板や鉄、ミラースプレーなどの材料もすべてホームセンターに行って揃え、溶接しました。作った後で、イメージを伝えて外注することもできたことを知りました(笑)。設置条件による強度計算などは先生や助手さんと相談しながら行ったので、制作には3か月ほどかかりました。

なぜ藝大を受験し、先端芸術表現科を選んだのですか?

もともとは演劇の世界に関わることを志していて、服飾の大学を目指していました。たまたま通っていた美術予備校の先生に「先端(芸術表現科)を受けてみたら?」と言われたことを鮮明に思い出します。その一言がなければおそらく今回、溶接まではしてなかったです。

美術に興味を持ったのはいつくらいからですか?

美術を本気で認識して興味を持ったのは最近のことですね。昔から手を動かすことは好きでしたが、物を作る喜びと美術の楽しさは別と感じていたので自分の中に落とし込むのに時間がかかっています。

現在は大学院の1年生ですが、将来はどうしていきたいと考えていますか?

まずは制作を続けていくことが今の目標で、そのためには努力しなければいけないなという気持ちです。昔より金銭面など現実的に考えなければならないことが増え、じんわりと歳を実感しています。そこには女学生だから許されてきたことが多いのだという反省も含まれてます。すごく具体的なことを言うとお店を持ちたい気持ちもありますね(笑) 。他者とのコミュニケーションのための作品作りでもあるのでカウンターでお客さんとお話しするのと似ていると思います。

●小西 恵プロフィール

2018 年  東京藝術大学美術学部先端芸術表現科卒業
現在 東京藝術大学院美術学部先端芸術表現科在学中

取材・文/桑原恵美子 撮影/ANZ 福永仲秋