COLUMN & INTERVIEW コラム&インタビュー

第14回藝大アートプラザ大賞展出品作家インタビュー VIKIさん(先端芸術表現科3年)

2020/02/04 インタビュー

レシートをモチーフに作品を制作しているVIKIさん。準大賞受賞作「The Sigh Fragments」も、そのようなシリーズの1作品です。なぜレシートに注目するのかについて、お話を伺うと、現代人ならば誰もが直面するような問題も浮かび上がって来ました。

VIKI

準大賞を受賞しての感想を教えてください。

純粋にびっくりしました。今回出品した作品は新しい試みでつくったものなので、どんな反応になるか予想がつきませんでした。その結果が準大賞でしたので、嬉しかったです。

VIKI「The Sigh Fragments」
VIKI「The Sigh Fragments」

白い「The Shout Fragments」と黒い「The Sigh Fragments」の2作品応募していますが、黒い方が受賞しましたね。

意外でした。じつは白い作品の方が手数が多いんです。中のレシートの密度も高いですし、ヴェールにも絵を描いています。受賞作の方は、「もう一個ぐらい出してみようかな」と思って、2日ぐらいで作り上げたものです。小さい頃からそうなのですが、他のコンペでも周到に作ったものよりも、土壇場でつくった作品の方が評価されることが多かったです。今回の受賞作も、適度に力を抜いて等身大でつくれたのだと思っています。

VIKI「The Shout Fragments」
VIKI「The Shout Fragments」

レシートを使っているのですか?

レシートをメインモチーフにしています。アートプラザさんもそうですし、その辺のコンビニでもお店でも、レシートが必ず出てきますよね。でも、皆さんそれを捨ててしまっています。実際、日本人のおよそ90%の人が近いうちに捨ててしまう、というデータも出ています。自分はそれが嫌だな、寂しい、虚しいなと感じています。レシートを捨てたらゴミが増えるとか、それだけの問題ではなく、レシートのなかにいろんな情報が詰まっているのに、その「超日常的」な記憶を皆さんが、自ら捨ててしまっていることを疑問に思っています。

レシートは日常そのものな気がしますが、「超日常」とはどういうことなのでしょうか。

「昨日、何食べた?」ということは話題にのぼりますが、買ったもののレシート=証明は、記憶にすら残りません。そのような、日常的すぎて記憶にも残らない。日常生活からこぼれおちているという意味で、レシートを「超日常的」なものだと考えています。そのようなレシートを、どうにか昇華できないかなと考えて、作品をつくっています。

ベールのなかで、白と黒のレシートが格子状になっていますね。

はい。黒い色は、絵の具を塗っているのではなく、熱を加えると黒く変色するレシートの性質を利用しています。これらのレシートには、僕のものもありますが、僕以外の人から提供いただいたものもあります。じつは、レシートを集めるプロジェクトもやっていて、いろんな人からいただいたレシートを、絵本のように見て楽しんでいるのですが(笑)、そのコレクションからいくつかセレクトして使いました。

―人のレシートを見ていると、情報過多で怖くなってきそうな気がします。

そうですよね。だけど、みんな捨てています。その現状の方が怖いです。この人が、どこで、この時間に、これを買ったという個人情報でありながらも、捨てている。それが当たり前すぎる世の中にも、疑問があります。

それを、切ったり、ヴェールで包んで、見え隠れするように使っているのがポイントなのでしょうか。

どこかで見たことのあるようなお店のロゴの部分を断片的に使って、これって自分なのかな、友達なのかなと、自己や身近な存在を投影できるようにしたいと思っています。また、僕にとってレシートは「死んでしまった記憶」で、それをヴェールに包むことで神聖化させようとも考えました。

額のアクリル板にも絵が描かれていますね。

一般的には、額は絵を引き立たせるための装飾として使われることが多いですが、僕にはそれが少し古臭いような気がして、額も含めた全体を絵にしたいと思いました。

花を描いているのでしょうか?

じつは文字を書いています。特殊な塗料を塗ってから文字を書くと、最初はそれなりに文字に見えるのですが、時間がたつと形が変わって文字が分解されます。記憶もそうだと思うのですよね。「藝大アートプラザ」という単語を記憶しても、どこかで記憶が変わって「アートプラザ藝大」になったり、「藝大プラザアート」になることもある。そういった記憶の曖昧さも表現しています。

VIKI

以前からレシートを使った作品を発表しているのですか?

2015年頃から始めて、去年の夏頃からはヴェールやフレーム等を使った平面作品を発表しています。コラージュの手法を取り入れたのは、今回の作品が初めてです。壁一面に本物のレシートを貼って、アイロンの熱を使って、感熱紙を黒くしながら絵を描くパフォーマンスも行なっています。

現在、先端芸術表現科の3年生ということですが、今後はどう活動するつもりですか?

既に作家活動はしていて、いろんなコンペに出品したり、さきほど言ったようなパフォーマンスも行なっています。それは、藝大の学生であるかどうかは関係なく、続けていくつもりです。今後の展開としては、海外で作品を発表して海外の反応を見てみたいと思っています。海外のレシートも集めたいですしね(笑)。

●VIKIプロフィール

2020年現在  東京藝術大学美術学部先端芸術表現科3年

主な展示活動歴

2018 年  「UNKNOWN/ASIA 2018」 曽根 裕 賞 (ハービスHALL/ 大阪)
2019 「第14回 TAGBOAT AWARD」 入選
「第2回アートハウスおやべ現代造形展」 入選(アートハウスおやべ/ 富山)
「アートオリンピア 2019」学生部門入選
「AFAF AWARD 2019」入選 (福岡アジア美術館/ 福岡)
「IndependentTokyo2019」染谷琢 賞受賞(ヒューリックホール/ 東京)
「コミテコルベールアワード2019」ファイナリスト ( 東京藝術大学美術館/ 東京)
「SHIBUYA ART AWARDS 2019」入選
2020 「ターナーアワード2019」入選

ライブペイント他、メディア出演多数


取材・文/藤田麻希 撮影/五十嵐美弥(小学館)

※掲載した作品は、実店舗における販売となりますので、売り切れの際はご容赦ください。