COLUMN & INTERVIEW コラム&インタビュー

藝大アートプラザが渋谷に進出!1ヶ月限定出店中のMIYASHITA PARK「買える藝大」で実際に買ってみました!!【かるびの「秘境」藝大探検 Vol.30】

2021/08/25 コラム

「藝大の出島」といわれる藝大アートプラザ。藝大の敷地内にあって、学内外からのお客さんで賑わっていますが、この夏、より藝大アートプラザに親しんでもらえるよう、1ヶ月だけ渋谷に限定出店することになりました!

それが、8/6~9/1にかけて渋谷駅に隣接するMIYASHITA PARK内に出店中のTOKYO GEIDAI POP UP STORE.「買える藝大」です。

いわば「藝大の出島」のさらに「出島」となった期間限定のショップ。早速行ってまいりました!


正面に見えるのが、MIYASHITA PARKです。

実は筆者、東京に住んで約30年になるのですが、未だに渋谷の構造がよく飲み込めていません。まず、「MIYASHITA PARK」という聞き慣れない名前に、「それってどこだ…?」と迷わずたどり着けるか内心ビクビクしていました。ですが、何のことはなく、旧宮下公園の跡地に作られた、公園と商業施設が同居する、ちょっとした都市型アミューズメントパークになっていました。嬉しいことに駅からほぼ直結で行けるということなんです。これなら、迷いようもありません。地下の駅構内の看板に導かれ、駅から徒歩1分もかからないうちに無事到着することができました。

お店の外観はこんな感じです。「買える藝大」というロゴが非常に目立っていますね。

ちなみにこのロゴ、かなり凝った作りになっています。よーく近づいて見てみましょう。一瞬通りがかったらほとんど気づかないようなところまでキッチリ作り込まれています。まさにプロの仕事ですね。

このロゴをデザインしたのは、藝大アートプラザのグッズやメインビジュアルのデザインを一手に手掛ける、猪飼俊介先生(美術学部デザイン科非常勤講師)。猪飼先生のこだわりが炸裂しています。

さて、中に入ってみましょう。
す、涼しい……。真夏はコンクリートの照り返しが厳しい渋谷の街ですが、店内はまるで天国のようです。これはいいですね。たまりません。

早速作品を見ていきましょう。入り口近辺は絵画や写真作品など、平面の作品が壁一面に掛かっています。うん、ありますね、新作…!普段、藝大アートプラザの常設展示コーナーに展示されている人気作家が、「買える藝大」のために制作した新作がズラリとならんでいます。まずここで気になったのは、こちらの作品。


佐々木玲央「影に咲く」49,500円

ユニークな造形のガラスのオブジェが人気の佐々木玲央さんは、今回、絵画作品にも挑戦。元々ミナ・ペルホネンの工房でお仕事をされていたこともあり、和洋のエッセンスがバランスよく配合された、琳派のようなデザイン性の高い作風です。

うーん、なかなかいいなぁ……と思ってしばらく見ていたら、目の前でパパパッと岩崎広大さんの写真作品を中心に3点ほど売れていきました。あぁ、熱心な常連さんがいらしているんだなぁ、と思って、スタッフの方に「良かったですね!早速売れましたね」と話しかけると、「偶然見かけて、気に入ったから購入されたみたいです。」とのこと。

おぉ!さすがは渋谷だ!

フラッとお店に入ってきて、これとこれとこれください、…といった買い方をする豪快なコレクターさんがいるのも文化の集積地・渋谷ならではなのでしょうか?びっくり。感心しながらも、鑑賞を続けましょう。


福島李⼦「The rainbow」1,100,000円

今回、展覧会を象徴する大きな作品が2点あります。まずそれをチェックしておきましょう。まずは、こちらのアーチ状に組まれた、七色に変化するモコモコしたオブジェは必見。 近づいてよく見てみると、全部これ、色とりどりの既製品のぬいぐるみを組み合わせて作られているんです。


福島李⼦「The rainbow」(部分拡大)

しかし、単純に「キレイ」「カワイイ」だけでは済まないのが藝大クオリティ。一体一体は可愛くて人を癒やしてくれるはずのぬいぐるみなのに、本作では敢えて混沌としたようにランダムに組まれているのが特徴。作品に組み込まれたそれぞれのぬいぐるみを見ると、つぶされていたり、後ろ向きだったり、ちっとも可愛く見えないんです(笑)。一つのオブジェの中に溶け込み、色彩を表現するための1パーツとして無造作に組み合わされているわけです。ともすると、人体の内蔵を思い起こさせるグロテスクな感触も感じられたりします。

ですが、ちょっと引いてみて改めて作品と向かい合うと、色彩のグラデーションが半円形のアーチに組まれて美しく映えているのですね。近づくと全然可愛く見えないのに、引くと途端に可愛くなる。一見だれでも思いつきそうでいて、あまり見かけないタイプの大型のオブジェでした。


⼭⽥勇⿂「寄港 マッコウクジラ」1,650,000円

その横に展示されているのは、藝大アートプラザの常設展示コーナーでもよく見かける、山田勇魚さんのマッコウクジラの大きな作品。マリンブルーの樹脂で型どられた半透明のマッコウクジラの胎内には、海中に沈んだ船の残骸や宝箱のような形が封入されています。


山田勇魚「寄港 マッコウクジラ」(部分拡大)


山田勇魚「寄港 マッコウクジラ」(部分拡大)

自分自身の過去の大切な記憶や心の奥底にあるイメージを引き出してくれそうな、触媒のような立体作品です。下記のインタビュー記事を読めば、山田勇魚さんの作品コンセプトをより深く知ることができます。合わせてぜひお読み下さい!

山田勇魚さんへのインタビュー記事(2019年6月)

 

さて、こうした目玉作品以外にも、やきもの、ガラス作品、石彫、木彫、アクセサリ、メッセージカードまで、全部で約700点の作品が展示されています。アート初心者や若者を意識した、普段よりも少しポップで渋谷のイメージにあった作品揃いです。どんどん見ていきましょう。


福村彩乃さんのアクセサリー類。

こちらは、ピアノ曲をイメージしたガラスアクセサリーのブランド「ayanofukumura」が大人気の福村彩乃さんが手掛けたガラスのアクセサリー。藝大アートプラザ以外でも、いろんな美術館で福村さんの作品を目にするようになりました。(ポーラ美術館、他)

本展では、クセがなく手に取りやすい、ホワイトを基調とした色合いの作品が多めに入荷されていました。

福村彩乃さんへのインタビュー記事(2019年11月)


小林真理江「モザイクイヤリング」各3,960円

小林真理江さんのモザイクガラスで作られたイヤリングなども素敵です。若い人からご年配の方まで、どんな方にもフィットしそうなのが小林さんのアクセサリーの面白いところ。七宝ならではの不思議な温かみも感じます。


小林真理江「花窓」225,500円

この、モザイクイヤリングのパッケージに印刷された植物の絵を拡大して、アクリル絵の具で肉筆にて描き直された作品が、「花窓」です。小林さんのビビッドな色彩感覚が詰め込まれていますね。画面下にぽつんと描かれた椅子の存在が絵にミステリアスな彩りを添えています。


山本真衣「Breeze」シリーズ。

こちらは、山本真衣さんの新作。彼女もまた藝大アートプラザでは常連の人気ガラス作家。中でもこちらの「Breeze」シリーズは特に人気の作品です。ガラス作品は、猛暑に涼をもたらしてくれます。ひんやりとした触感も夏場は心地よく、満足感の高いオブジェです。水菓子のような可愛らしさですが、手に持ってみると意外なほどに手にズシリと重みが伝わります。そのギャップも面白いですね。


猪飼俊介「GLASS NOTE」シリーズ(各12,980円)

さらに、今回ついに猪飼俊介先生の作品も登場。透明なガラス板の間にシダやカエデといったドライフラワーが挟まれたスタイリッシュな作品。生活空間に植物の気配を感じられるので、知らず知らずのうちに癒やされてきそうです。シンプルで無駄のないデザインには、「引き算」の美学が感じられます。


井上俊博さんの作品。個別の作品は、藝大アートプラザHPで鮮明な画像で掲載されています。

やきもので目を引いたのが、黄緑色と焦げ茶色のまだら模様で彩られた、井上俊博さんの作品群。中国の幻獣「蛟龍」(こうりゅう)から着想を得て制作されています。まるで熱帯に生息する爬虫類を思わせるようなアヴァンギャルドな雰囲気を湛え、ある意味渋谷っぽさが感じられるかも。一風変わった茶道具や酒器をお求めの方にオススメ。ミリタリー好きな方にもいいかも知れません。


松田剣さんの作品。人気の秘密は、価格の求めやすさ、扱いやすさにも。陶器本来の温かみを感じながらお米を美味しくいただけます。

そうそう、筆者も今回、松田剣さんの「飯碗」を収蔵。ハマグリのように、クリーム色の中に虹色がさりげなく主張する色彩が絶妙。ずっと見ていたくなるような不思議な味わいです。ひと目見て、「買おう!」と即決しました。サイズ違いで2個展示されていた中から、小さい方を1個購入。


松田剣「飯碗」3,300円/通常のお茶碗のサイズの6割ぐらいの容積と、非常に可愛いお茶碗です。筆者の自宅に収蔵された8番目の松田剣作品となりました。さっそくヘビーローテーション中。

松田さんの作品は電子レンジや食洗機に入れても全く問題ないので、取り扱いもラクラクです。本作も、購入初日の夕食から早速食卓へと並びました。ダイエット仕様なコンパクトなサイズも嬉しく、コロナ太り解消の秘密兵器になってくれそうです。

その他、藝大アートプラザのオリジナルグッズ類や、東京藝術大学を象徴するような「藝大本」を中心とした書籍、音楽CDやDVD等のラインナップも要注目。もともと常設販売されている中から、「藝大らしさ」が特に色濃く感じられるようピックアップされています。

オススメは佐藤直樹先生の『東京藝大で教わる西洋美術の見かた』。個人的には、ここ数年で出版された初心者向けの美術史入門書では、No.1の面白さだと思っています。線を引いて何度も読み返しました。類書とは一味違う、美術史を知りぬいたプロ中のプロが書いた良書です!

残り約2週間。アートとの偶然の出会いが期待できる、楽しいショップになっています!

「買える藝大」とは、本当に思い切ったネーミングですが、アートと初めて出会うにはぴったりなポップアップストアに仕上がっています。渋谷駅にほぼ直結した抜群なロケーションにありますので、ぜひ会社帰りや近くに立ち寄った際は覗いてみて下さい。思わず一目惚れしてしまいそうな、印象的な作品揃いです!

TOKYO GEIDAI POP UP STORE.「買える藝大」
AT SHIBUYA MIYASHITA PARK
会期: 2021年8月6日(金) ~ 9月1日(水)
営業時間: 11:00~20:00 (最終日17時終了)
会場: MIYASHITA PARK & BASE 東京都渋谷区神宮前6-20-10
RAYARD MIYASHITA PARK South 1F &BASE

入場無料、写真撮影OK


取材・文/齋藤久嗣 撮影/五十嵐美弥(小学館)

※掲載した作品は、実店舗における販売となりますので、売り切れの際はご容赦ください。