2023年7月29日(土)〜9月24日(日)にかけて前後期で開催される企画展「What’s ART?『アートって何だろう?』を藝大アートプラザ大賞受賞作家と考える」。
「美しい身体は死ぬが芸術作品は死なない」(レオナルド・ダ・ヴィンチ)
「芸術家が自分の意図を実現するとき作品が完成する」(レンブラント)
一年に一度藝大アートプラザ大賞受賞作家を招待して開催する企画展、今回のテーマは「アートってなんだろう?」です。
あまりにストレートなテーマですが、今こそ真剣に考えたい「アートってなんだろう?」。
藝大アートプラザ受賞作家の方々の現在地をぜひご覧ください。
2023年8月26日(土)〜9月24日(日)は後期展示として21人のアーティストの作品、計157点を展示・販売しています。
この記事ではそれらの作品を写真とともにご紹介します。
※コメントは、Web担当による解説です。
※並びは展示風景の順路に従っています。
※写真にない作品もございます。ぜひ現地で全ての作品をご覧ください。
会期:2023年7月29日(土)〜9月24日(日)
前期:2023年7月29日(土)〜8月20日(日)
後期:2023年8月26日(土)〜9月24日(日)営業時間:10:00〜18:00
定休日:月・火曜休
※祝日・振替休日の場合は翌営業日が休業
※展示入れ替えのため24日(月)〜28日(金)が休業入場料:無料
公式Instagram:https://www.instagram.com/geidai_art_plaza
公式Twitter:https://twitter.com/artplaza_geidai
版画で描く人間と自然との関係
安河内 裕也
人間と自然との関係などを版画とドローイングで描いている。画家はこれらの作品を、自身の目を通したものであり、それは「脳内映像」でもあり、「分身であり化身」だと考えるから。作品を観る人は描かれたものだけでなく「私をも見ている」と画家は考える。
1985 山口県生まれ
2012 個展「INCAGE」 開催
2012 東京藝術大学絵画研究科版画分野 修了
2012 台湾国際版画ビエンナーレ 銅賞
2014 個展「Landscape from 0」 開催
2015 バンコク国際版画トリエンナーレ 買上賞
2019 ガンラン(中国)国際版画ビエンナーレ 買上賞
2019〜 日本版画協会 会員
2023〜 銅夢版画工房 講師
「未知のイメージ」を作り続けたい
小林 あずさ
先端表現専攻から油画科へと進み学んだ作者。「物が持つ言葉とイメージの対応関係を起点に、言葉遊びや連想ゲームのような遊戯性を介して制作する事で、意味的なレベルで隔たりのある存在同士を接続し、未知のイメージを作る事を続けていきたい」と語る。
1988 横浜市出身
2012 藝大アートプラザ大賞受賞
2013 個展「ハニカムユートピアへようこそ」開催ワンダーサイト本郷
2014 TURNER AWARD 優秀賞受賞
2014 GOLDEN COMPETITION 優秀賞受賞
2015 アートアワードトーキョー丸の内 審査員賞受賞
2019 個展「網あるいは作戦」開催 MEDEL Gallery shu
2019 個展「ダブルスライド」開催 TAV Gallery
2021 東京芸術大学大学院 絵画専攻博士後期課程終了
2022 個展 「キャビネット」開催 Gallery Q
人が生きることや内面性、意識の中の動き
小林 真理子
西洋絵画の伝統技法を使いながら、ドットを重ねていくような抽象的なモチーフを描いている。キャンバスではなくパネルに薄美濃紙を貼り、そこに白亜地を塗り重ねて油彩をたたきぼかすように描く。「人が生きることや内面性、意識の中の動きと、光の関係性について考える」。
1986 神奈川県横浜市出身
2010 藝大アートプラザ大賞展 藝大BiOn賞 受賞
2011 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻 卒業
2013 東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻
油画技法・材料研究領域 修了
2013-2014 同研究室 研究生
2017 東京藝術大学 文部科学省履修証明プログラム
『 Diversity On The Arts Project』第1期受講生
関東を中心に個展・グループ展で発表
作品寄贈 群馬県みなかみ町(卒業制作・修了制作)
ガラスや水に映り込んだ虚像
福島 沙由美
三角形の変形キャンバスをこのように組み合わせて展示することを踏まえて描かれている。眼を通して認識された映像が、記憶として定着し、それが変化していくことを作品づくりのテーマとしているという。ここでは「ガラスや水に映り込んだ虚像」を表現している。
1982 東京都生まれ
2008 第26回上野の森美術館大賞展 大賞受賞
2012 東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻油画修士課程 修了
2015 Zurich University of the Arts Master of Arts in Fine Art 修了
デジタルデバイス、あるいは鉛筆
センザキリョウスケ
「自身の手」と題した作品は紙に鉛筆で描いた通常のデッサンだが、そのほかの3点はデジタルデバイス上で描き、インクジェットで出力した「デジタルデッサン」。見る人によって評価の仕方、捉え方が大きく変わる二つの描き方だが、作家は「描いている時の感覚はほとんど同じ」だと語る。
1989 埼玉県生まれ
2016 東京藝術大学大学院 美術研究科 修士課程 デザイン専攻 描画装飾研究室修了
現在イラストレーターとして活動
細やかな線の動きと釉薬の煌めきを
村中 恵理
七宝焼の技法を用いた繊細な線でモチーフを描き出すのは高度な技術を必要とする。「植線」「施釉」「蝋焼き」といった制作工程をコンセプトシートでは作家自身が解説している。「細やかな線の動きと、美しい釉薬の煌めきを間近で見て感じて頂けたら嬉しい」。
1984 東京都生まれ
2009 東京芸術大学美術学部工芸専攻彫金研究室卒業
2011 東京芸術大学大学院美術研究科工芸専攻ガラス造形研究室修了
2021 個展(横浜髙島屋)
2021 個展(靖山画廊)
2022 個展(日本橋髙島屋)
額縁と作品との関係性も
鹿間 麻衣
日本画を専攻し、学生時代から各種の賞を受賞してきた作者による作品。日本画は花鳥画が基本だが、それらをもとに現代的なテーマをもって作品を描いている。日本画は額装(表装)を伴うことで作品が完成するという考え方があり、ここでも装飾的な額と作品との関係性が見どころの一つでもある。
1989 千葉県生まれ
2015 東京藝術大学大学院美術研究科修士課程日本画 修了
2021 第76回春の院展 奨励賞 現在 日本美術院院友
孤独と不安、なのに漂う明るさ
東條 明子
彫刻を専攻した作者による、一木造りの作品。水筒のベルトなど体から浮いている部分も一本の木から彫り出している。一人の人物の感情がテーマとなっており、ひとり旅の孤独や不安、その一方で漂う自由な明るさを、猫をモチーフにして表現している。抽選販売対象作品。
1984 東京生まれ
2009 東京藝術大学美術学部彫刻科卒業
2011 東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻修士課程修了
2019 個展「東條明子展」(高島屋新宿店)
2020 個展「静かな鼓動」(Neptune Gallery・台湾)
2021 個展「物語の物語」(Neptune Gallery・台湾)
2021 SPES -9Artists Group Exhibition(ギャラリー椿・東京)
2022 「いんすぴ」これやん展vol.3(パークホテル東京)
2022 Art Jungle 藝大動物園(藝大アートプラザ・東京)
2022 個展「彼らのH2O 東條明子展」(高島屋新宿店)
絵画を「染める」
牧野 真耶
木製のパネルに胡粉の白亜地で下地を施し、そこに染料の藍を浸透させることでグラデーションを描いている。塗るというより染めるという行為に近い。そうした技法を用いつつ、ここでは霧や夜の静かな空気感などをテーマに描いている。
1980 神奈川県生まれ
2009 東京藝術大学大学院修士課程絵画専攻油画技法材料修了
主な個展
2022 Faded (CAI Gallery:ベルギー)
2016 窓の外は(六花亭福住店:札幌)
主なグループ展
2023 Catharsis (CAI Gallery:ベルギー)
2022 Constant Repetition (The Untitled Void:韓国)
Blue (Gallery57:イギリス)
2016 ここにあるけしき – 四つの小部屋から -(藤沢市アートスペース)
2015 VOCA展2015 現代美術の展望 (上野の森美術館)
ガラスと鋳金の技法をミックス
地村 洋平
ガラスと鋳金を専攻した作者による、二つの技法を組み合わせた作品。鋳金部分は錫によるもので、ガラスを錫の型としている。「熱」を主題とした際に、様々な素材を等価として捉えることで、表現活動を行っているという。
1984 千葉県生まれ
現在 東京藝術大学 テクニカルインストラクター
2015 東京藝術大学大学院博士後期課程美術研究科美術専攻ガラス造形 修了
2012 富山ガラス造形研究所造形科 卒業
2010 東京藝術大学大学院美術研究科工芸専攻鋳金 修了
2008 東京藝術大学美術学部工芸科鋳金 卒業
伝統工芸に携わる一面も
中村 弘峰
福岡県の伝統工芸品「博多人形」の職人である父・中村信喬のもとで修行し、藝大で彫刻を専攻した作者。本展では、舞楽の「胡蝶」をモチーフにした作品を出品。「アートにおける流行のループにとても興味がある」と話す。同じ道を往復するという蝶の習性と同じフレーズを繰り返す舞楽の音楽性、連続性を人形に重ねている。
1986 福岡県福岡市生まれ
2011 東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了
2013 第60回日本伝統工芸展 初入選 新人賞受賞
2016 第3回金沢・世界工芸トリエンナーレ コンペティション部門 優秀賞受賞
2020 九州芸文館トリエンナーレ 大賞受賞
2023 福岡県文化賞奨励部門受賞
かたちのないものをかたちに
猪瀬 昌延
かたちのないものをかたちに表すことをテーマとしている。「奏者」と題したこの作品は、「音」を乾漆像によって表現している。漆でありながら木工にも見えるこの技法は、「変わり塗り」という漆の技法で、主に刀剣の鞘の装飾や仏像などに用いられてきたもの。伝統技法によって表現される、奏者の穏やかかつ確固とした表情に注目したい。
1973 東京生まれ
2004 07,09 個展(ギャラリー・オカベ)
2009 12 昭和会招待出品(日動画廊)
2010 東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了 博士(美術)取得
2012 sogno・夢~彫刻家二田原英二と次世代を担う彫刻家展~(佐藤美術館)
2014 18 個展(アートスペース泉)
現在 国画会会員 信州大学教育学部准教授
土と釉薬の関係性を研究
吉田 周平
藝大大学院美術研究科修了後、神奈川県内に築窯し、個展など行っている作家の作品。「土と釉薬の変体に興味があった」と語る作者は、現在主に青瓷(せいじ/あおじ)の器を手掛けているという。青瓷は、素地や釉(うわぐすり)に微量の鉄分を含み、還元炎で焼成して青緑色に発色させた磁器のこと。
1979 石川県生まれ
2011 東京藝術大学大学院美術研究科修了
2014 神奈川県に築窯
2014 銀座黒田陶苑で個展(以降毎年開催)
教育者としての表現
村尾 優華
麻紙に岩絵具という日本画の素材を用いて、山の景色などをモチーフにして描いた作品。美術教育にも携わる画家は、絵を描くときや観るときに「きれい」や「ほしい」以外にどのような要素があるのかをコンセプトシートの中で詳しく述べている。作者の希望で、一部の作品については下絵とともに購入できる。
2010 東京藝術大学日本画専攻入学
2016 東京藝術大学大学院日本画科修了
在学中、アートプラザ大賞展でBion賞や奨励賞等受賞
大学卒業後は会社員や教員を経て、
2023 東京藝術大学大学院美術教育に研究生として在籍
その他、東京装画賞学生部門銅賞受賞、松山庭園美術館猫ねこ展2015年より毎年出品
2012~ 華描堂絵画教室主宰、現在も開講中
ライフワークとして描き続ける
前田 恭兵
タブローではあるが、彫金を専攻した作者による作品。絵画とは異なる、工芸作家独特の極微細な描写には「描画七宝」らしさが見て取れるとともに、近づいて眺めるごとに驚きを新たにさせられる。釣りが好きという作家は、「純粋にアート≒釣りの表現がしたい」と考え、「ライフワーク」として描き続けている作品を出品した。
1984 兵庫県西脇市生まれ
2010 東京藝術大学大学院美術研究科工芸彫金専攻 修了
2010 5th TAGBOAT AWARD 小山登美夫審査員特別賞
2013 ~2021 東京藝術大学共通工房金属表面処理室にて非常勤講師を勤める
2021 「七宝-彩の世界-」山梨ジュエリーミュージアム
2023 個展「Playing in limitations」日本橋髙島屋アートアベニュー
現在 山梨県立宝石美術専門学校 准教授
公益社団法人日本七宝作家協会 常務理事
森の中から出てきた瞬間の猫
加藤 萌
自然豊かな土地で暮らす作者。興福寺所蔵の国宝・阿修羅像などと同じ「脱活乾漆」の技法を用いて、猫をかたちづくる。漆の質感の違いによって、森の中の影から出てきた瞬間の猫を表現している。山の中で暮らす猫の野性味を帯びた表情など、技法だけではない表現の深さにも注目したい。
2014 東京藝術大学大学院美術研究科漆芸専攻修了
2019 漆New wave in TOKYO漆芸作家7人展(平成記念美術館ギャラリー/東京)
2020 国際漆展・石川2020 アート部門 銀賞受賞(石川県政記念しいのき迎賓館/石川)
2021 開館30周年記念特別企画 片山康之×加藤萌「森のしずまる」(新見美術館/岡山)
2021 第22回岡山芸術文化賞準グランプリ
2021 個展 加藤萌漆芸展「夢二を見ていた猫たち」(夢二生家記念館・少年山荘/岡山)
2022 3331 ART FAIR 2022(3331アーツ千代田/東京)
現在 岡山県の山奥にて制作、及びワイン農家を兼ねる
魔法のような表現方法で
石田 菜々子
溶けたガラスは細かな模様が入った型には流れ込みにくく、パウダー状のガラスを型に入れた後、溶けたガラスを内側に流し込むことで成形する。その際、かたちに応じて色合いを調整するのは至難の業で、別の作家によれば、このような表現方法は「魔法のよう」だという。
1983 東京都生まれ
2010 東京藝術大学美術学部工芸科鋳金専攻 卒業
2012 同大学大学院美術研究科工芸専攻ガラス造形研究室 修了
受賞歴
2011 藝大アートプラザ大賞展 藝大BiOn賞
2012 修了制作 取手市長賞
第51回現代工芸美術展 入選
粒状のガラスをバーナーで溶かし
川島 理惠
粒状のガラスをバーナーで溶かし、くっつけていく「バーナーアート」と呼ばれるガラス細工。藝大美術学部デザイン科を卒業したのち、同大学院でガラス造形研究室へと進んだ作者は、現在カガミクリスタル株式会社で勤務しつつ、作家活動の中でさまざまな作品を生み出している。
1986 東京生まれ
2009 第4回藝大アートプラザ大賞展 ㈱藝大Bion賞
2010 東京藝術大学 美術学部 デザイン科卒業
2012 東京藝術大学大学院美術研究科修士課程工芸専攻ガラス造形研究室修了
2012 Corning New Glass Review34 選出
2014 ART FAIR C-DEPOT -Shapes of HEART-
現在 カガミクリスタル株式会社 勤務
キラキラ溢れ出てくるピアノの音の世界
福村 彩乃
ヒュージングと呼ばれる、ガラス板を複数枚重ねて溶かし、レイヤー状になったガラスを削り出す技法を用いている。彩り豊かなガラスのアクセサリーを多く手掛ける作家は「ピアノを弾くときにキラキラ溢れ出てくる音の世界」をこの技法によって表現しているという。
1983 福岡県大牟田市生まれ
2006 桐朋学園大学音楽学部演奏学科ピアノ専攻 卒業
2010 藝大アートプラザ大賞展 藝大BiOn賞
2011 東京藝術大学大学院音楽研究科音楽文化学博士前期課程 修了
2012-13 同大学大学院美術研究科工芸 ガラス造形研究生
2013 ピアノ曲をイメージしたガラスアクセサリーブランド””ayanofukumura””スタート
現在 アトリエを上野に構え活動
何かを思考して、それを何らかの形に昇華させる
若林 真耶
金属を打ち出してかたちづくる鍛金の技法を用いて、ペットや子供をテーマにした「Out of Control」のシリーズなどを出品している。作家はアートとは何かという問いに、「何かを思考して、それを何らかの形に昇華したもの」と答える。
東京都生まれ
2011 東京藝術大学美術学部工芸科鍛金専攻 卒業
2013 東京藝術大学大学院美術研究科修士課程工芸専攻鍛金 修了
2013 取手市長賞・「守護者」収蔵
2012 第7回藝大アートプラザ大賞展 準大賞
2010 第31期国際瀧冨士美術賞並びに滝理事長賞
竹と雀の伝統的なモチーフを
大野 直志
動物をモチーフにしたユーモラスな表現が特徴的な作者。ここでは太りすぎた雀が青竹を踏んでいる。竹に雀は日本画の伝統的なモチーフだが、そのモチーフと対峙し、「何を表現したいのか」を作者は自問する。「そこに自分が滲み出ていないと作品ではない」。
1979 千葉県生まれ
2009 取手市長賞
2011 東京藝術大学大学院 美術研究科 彫金専攻修了
2012 東京藝術大学大学院 美術研究科 文化財保存学専攻 教育研究助手(-2015)
出展作家と会期(順不同)
石田 菜々子
猪瀬 昌延
大野 直志
加藤 萌
川島 理惠
小林 あずさ
小林 真理子
鹿間 麻衣
センザキ リョウスケ
地村 洋平
東條 明子
中村 弘峰
福島 沙由美
福村 彩乃
前田 恭兵
牧野 真耶
村尾 優華
村中 恵理
安河内 裕也
吉田 周平
若林 真耶
会期:2023年7月29日(土)〜9月24日(日)
前期:2023年7月29日(土)〜8月20日(日)
後期:2023年8月26日(土)〜9月24日(日)営業時間:10:00〜18:00
定休日:月・火曜休
※祝日・振替休日の場合は翌営業日が休業
※展示入れ替えのため24日(月)〜28日(金)が休業入場料:無料
公式Instagram:https://www.instagram.com/geidai_art_plaza
公式Twitter:https://twitter.com/artplaza_geidai
写真撮影: 今井裕治