さまざまな「境目」を問う。企画展「境界ーborderー」(前期)の作品を紹介

ライター
藝大アートプラザ編集部
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作品紹介

2023年9月30日(土)〜11月26日(日)にかけて開催される企画展「境界ーborderー」。

対立する境界、混じり合う境界、重なる境界、離れていく境界、今や境界はアートにとってもっとも重要なテーマのひとつ。そこから生まれる表現は今私たちが抱えている問題をあぶりだし、解決への道のりを示してくれるものかもしれません。

この記事ではそれらの作品を写真とともにご紹介します。

※コメントは、Web担当による解説です。
※並びは展示風景の順路に従っています。
※写真にない作品もございます。ぜひ現地で全ての作品をご覧ください。

会期:2023年9月30日(土)〜11月26日(日)

前期:2023年9月30日(土)〜10月22日(日)
後期:2023年10月28日(土)〜11月26日(日)

定休日:月・火曜休 
※祝日・振替休日の場合は翌営業日が休業
※展示入れ替えのため23日(月)〜27日(金)が休業

入場料:無料

公式Instagram:https://www.instagram.com/geidai_art_plaza
公式Twitter:https://twitter.com/artplaza_geidai

藝大アートプラザ編集長と藝大アートプラザキュレーターによる音声解説はこちら。

奇想の手法に込められた深い思索

塩出 麻美
立体を描いた二次元の作品を、三次元にすることは出来ないのか。そうした問題意識から、アクリル絵の具を盛り上げて描いた静物画に網や目の粗い布を押し付け、ところてんのように表面に浮き出てきたアクリル絵の具によって作品を構成している。アーティストへのインタビューはこちらから。


2016  「Phase Transition – Existence of ON and OFF」gallery2 (バングラデシュ ダッカ)
2017 「東京藝術大学修了展」杜賞・帝京大学買い上げ賞
2017  NAU美術連立展奨励賞
2017  「シオデノミ4」  Gallery b. Tokyo(東京 京橋)
2019  「ある部屋」  奥野ビル306プロジェクト (東京 銀座)
2019  「中之条ビエンナーレ」  五反田学校 (群馬 中之条町)
2019  株式会社モリモト(コーポレートコレクション)
2018,2021,2022「アートフェア東京2022」東京国際フォーラム (東京 有楽町)
2023  「ARTISTS’ FAIR KYOTO」京都文化博物館(京都中京区)
2023  「藝大神話」 藝大アートプラザ(東京 上野)

真っ白に見える地図

植田 爽介
真っ白に見える作品は、エンボスのみで東京、京都、名古屋、大阪の各都市の地図を描いた「空言の地図」。作者はこのうちの2都市にしか訪れたことがないと語り、地図や映像などでしか見たことのないその土地のリアリティのなさ、確実性と不確実性の境界を描いている。


1994  香川県生まれ
2016  多摩美術大学美術学部絵画学科版画専攻卒業
2017  スロバキア・ブラティスラヴァ美術大学に交換留学
2019  東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻版画研究領域第一研究室修了
2021  令和3年度文化庁新進芸術家海外研修制度 ( 短期研修・サンタフェ )
2023  個展「この星を狭めるもの」( gallery neo_ / Senshu・茨城 )
2022  グループ展「The point of truth, beauty and knowledge」( Künstlerhaus Dortmund・ドイツ )”

賛否呼ぶ 愛と暴力の境界

許允(ホ・ユン)
<作家によるステートメント>
人間は考えるほどエネルギーを消耗するという。そして人間は或る欲求が存在する時「考え」をする。 私たちがアート作品を感じて考えてエネルギーを消耗するだけに、アート作品もエネルギーを消耗するのではないか?いや、そういう流動的なアート作品が世の中に存在してもいいのではないか?人間の五感と六感、そして道徳的な観念や社会的ルール、その目には見えない境界にアートは存在する。

この作品は、キリスト教徒である本人があくまでもモチーフとしてキリストの像を模して制作したサンドバッグであり、キリスト像ではない。愛の象徴として作った作品である。観客はこのサンドバッグを殴ることができる。観客が殴ることによって崩れて壊れても複製できるように作っている。ただし、観客にそうした行為を求める理由は、殴る行為を面白がる、楽しむものではない。このプロジェクトの最大目標は、現在を「生きていく私たち」が「世の中をどう見るのか?」という質問に答えを求めることだ。

なぜかこの世界から暴力はなくならない。長い人類の歴史に比べると非常に短い私たちの「生」のエネルギーをどこに向けるか?私と観客は暴力と愛について語り合うことができるだろうか。観客にはこの作品の大事な一員になって欲しい。同時代の果てしない罪と暴力、そして愛を身体で経験している観客たちとこの作品を通じて対話したい。この作品の本当の主人公は、この作品の前に対峙した彼らであり、その前でアーティストである私と対話を交わした人々であり、そしてこれからのあなたたちである。私はこの作品を作り始めた瞬間から、「なぜ人間の歴史から暴力がなくならないのか?」、「どうやって私たちが愛を実現していけば良いのか?」という問いに対して、観客と考え続けていきたいと思っている。

私自身キリスト教徒であり、キリスト教徒の少ない日本での展示は私の挑戦でもある。
現在2024年に向けてキリスト教徒の多い韓国での展示計画を進めている。

1988 韓国、ソウル生まれ
2017 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。
2019 東京藝術大学大学院美術研究科美術専攻修士課程修了。
2020 東京藝術大学大学院美術研究科美術専攻研究生課程修了。
現在 東京藝術大学大学院美術研究科美術専攻博士後期課程在籍。
上野芸友賞奨学金(2020年受賞

キリスト教絵画と日本の伝統技法

香久山 雨
自身の生い立ちと密に関係しているキリスト教美術を、日本土着の和紙と墨で描き出すことを核としている。右端の作品は、1911年のイタリアの彫刻作品「サクリファイス」をモチーフに、江戸時代後期の絵師・鈴木其一の『芥子図』をオマージュし重ねている。


主な個展
2023  香久山雨 個展 (銀座奥野ビル ギャラリー巷房)
2021  香久山雨 個展 (銀座奥野ビル ギャラリー巷房)
主なグループ展
2023 「藝大神話ーGEISHIN」(前期)(藝大アートプラザ)
2023  第22回アートギャラリーホーム展(チャームスイート四谷)
2019  美学校 超・日本画ゼミ 修了展 (アートコンプレックスセンター)
2018  美学校 超・日本画ゼミ 修了展 (ギャラリー蔵)
2016  “Group Show~Sommes-nous heureux?” (バンビナートギャラリー)
2013  東京芸術大学卒業制作展 (東京都美術館)
所蔵
2023  チャームスイート四谷

本来と自分と理想の自分

松永 久瑠美
本来の自分と、他人からこう見られたいという理想の相違、「ペルソナ」と「シャドウ」の二律背反を立体作品で表している。「本来の自分でいたい、受け入れてもらいたいと思いながらも否定されることへの怖さからよそおうことをやめることができません」という自身の「問題点」を1年間思考しながら制作した。


1997 群馬県生まれ
2020 富士ゼロックス1000枚展 企画出展
藝大アートプラザ 猫展 出展
2021 アメ横 肉展 企画出展
    HOTEL GRAPHY stay展出展
    アメ横 現代アート展 出展
    アメ横 ○○○○ッ○展 企画出展
2022 未来定番研究所 おてててん 企画出展
2023 第71回東京藝術大学卒業・修了作品展 平成藝術賞
平成記念館ギャラリー 未来の大芸術家たち 出展

それはガラクタか、宝物か。

大杉 祥子
かつての少女雑誌の付録を想起させる「紙人形シリーズ 上野桜子(秋)」と題した一連の作品と、石版画、布人形、プラバン人形、陶器の人形を展示・販売している。ある人にとっては「ゴミ」あるいは「ガラクタ」であるものが、ある人にとっては大切なものであることを示す。


1990  長崎県生まれ
2015  東京造形大学造形学部美術学科絵画専攻 卒業
    第40回全国大学版画展 収蔵賞
2017  東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻版画第二研究室 修了
    第42回全国大学版画展 収蔵賞
2018  個展「さよならカステラまた来てちゃんぽん」文房堂gallery cafe
2019  LUMINE meets ART AWARD 2018-2019
     あきる野市アーティスト・イン・レジデンス
2021  房総里山芸術祭 いちはらアート×ミックス2020+
2022  小説集『動物になる日』前田エマ著の装画・挿画を担当

どこまでが人形でどこからが自分なのか

吉野 俊太郎
藝大で彫刻を専攻し、人間の行為そのものを彫刻にするということをコンセプトに作品を制作している作家。「どこまでが彫刻でどこからが台座になるのか」という境界が作者の問題意識にあるという。操り人形やパペットを動かすとき、「どこまでが人形でどこからが自分なのか」と問いかけているようにも見える。


1993  新潟県生まれ
2017  東京藝術大学美術学部彫刻科 卒業
2017  サロン・ド・プランタン賞 受賞
2017  平成芸術賞 受賞
2019  東京藝術大学大学院美術研究科 修了
2021  個展「Plinthess」開催
2023  パフォーマンス公演「明るすぎます」開催”

あこがれや象徴を示す花

赤澤 雛子
藝大で工芸を学び、現在はファッション業界に関わる作家。ファッションと工芸の境界をテーマに制作した作品を今回は展示している。共通のモチーフに「花」としてあり、それは作家にとってあこがれや象徴を表していることに、作家自身が制作の中で気づいたという。


1995  千葉県生まれ
2020  東京藝術大学大学大学院美術研究科 工芸専攻鋳金研究分野 修了
2023  文化服装学院 服飾専門課程 服飾専攻科 技術専攻 在学

現実と非現実の境界

CORNER
若田勇輔、長屋弘、田羅義史、Ryo Simon、大塩伝恵から成る「CORNER」の作品。日常の1シーンを撮影した画像をコンピューター上でランダムに加工している。現実と非現実の境界を3枚のイメージで表現している。


2021 結成
2022 SHACHIHATA NEW PRODUCT COMPETITION 中村賞
2022 TOKYO MIDTOWN DESIGN TOUCH 出展
2023 こども科学博出展

アート作品なのか日用品なのか

HARUNA OIKAWA
ガラスを用いながら、工芸と彫刻の境界を問う作品。フラワーベースという用途を持ったアート作品「花碑」は、花の一生を見送ることをコンセプトに、花が枯れて無くなった後もオブジェとして残り続け、生活を共にしていく作品。ガラスのアート作品なのか、日用品なのかと、作家自身が見る人に問いかける。


1993  宮城県生まれ
2018  東京藝術大学美術学部工芸科鋳金専攻卒業
2020  東京藝術大学美術研究科工芸専攻ガラス造形研究室修了
2018  越後妻有アートトリエンナーレ2018出展(ART FRONT GALLERY、新潟県)
2022 「SUI feat. SHIKISAISHA ‘F/ART’」出展(ホテル粋、東京)
2022 「KINDA MOOD RIGHT NOW」出展(YOD TOKYO、東京)
2023 「Featured Project」出展(KOKUYO本社、東京)
2023 「Landscape」出展(Spiral Entrance 1F、東京)

出展作家と会期(順不同)

赤澤 雛子
植田 爽介
HARUNA OIKAWA
大杉 祥子
香久山 雨
CORNER
塩出 麻美
松永 久瑠美
許允(ホ・ユン)
吉野 俊太郎

会期:2023年9月30日(土)〜11月26日(日)

前期:2023年9月30日(土)〜10月22日(日)
後期:2023年10月28日(土)〜11月26日(日)

定休日:月・火曜休 
※祝日・振替休日の場合は翌営業日が休業
※展示入れ替えのため23日(月)〜27日(金)が休業

入場料:無料

公式Instagram:https://www.instagram.com/geidai_art_plaza
公式Twitter:https://twitter.com/artplaza_geidai

写真撮影: 今井裕治

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