上野は化石の街だった!?国立科学博物館から松坂屋上野店まで化石を求めて歩いてみた

ライター
木村悦子
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地域に根ざし、長く愛される大衆的な中華料理店を指す「町中華」はすっかり浸透しました。では、「町化石(街化石)」をご存じでしょうか?

大都会・東京にはビルやデパートが林立し、その外壁や内壁には石材が使われています。石! なんの変哲もない無機質なものに見えて、実は魅力的な素材です。石の中に化石が入っていることもあります。このように町で見られる化石のこと、趣味として町の建物の中に化石を探し歩くことを「町化石」などと呼ぶそうです。

そういうことなら。上野は最高。高級感や豪華さを演出するために石材をふんだんに使った博物館やデパートがたくさんあるからです。国立科学博物館は化石展示は日本最高レベルながら、階段の石材などでも化石に出合えます。国立科学博物館と親戚関係にある東京国立博物館や、日本初のエレベーターガール(当時は昇降機ガール)で知られる老舗デパートの松坂屋上野店にも、美しい石材の中に「隠れ化石」があります。

さあ、宝探し目線で上野散歩へ!

化石のことなら科博にお任せ

国立科学博物館は、明治10(1877)年に創立された、日本でもっとも歴史のある博物館のひとつ。自然史と科学技術史を扱う国立の唯一の総合科学博物館です。

化石のことが知りたいなら、化石とは何? といった基本から、化石を手がかりに絶滅生物の生態や起源を追求する最新の研究までもがわかります。

展示物は化石も多いですが、標本なども豊富。化石というと、コレ(アンモナイト)は必見です。

3階に日本最大級のアンモナイトのコレクションがあります。アンモナイトのおさらいもしておきましょう。アンモナイトは、イカやタコに近い化石動物で、古生代~中生代にかけて生存し、特に中生代に繁栄しました。

ところで、動物だけでなく、植物なども化石になることもあります。さらに、足跡や巣穴、糞など、生物の行動の痕跡が化石として保存されたものもあります。

このような知識を得てから出かければ、化石ファンでなくとも、半日、1日、数日見ても飽きないでしょう。化石関連の企画展も行われ、令和4(2022)年は特別企画展「ポケモン化石博物館」(3月15日~6月19日)が要注目。さらに、展示物以外でも、日本館の階段の石材中にアンモナイトが散見されます。

国宝でいっぱいのトーハクは化石も豊富

国立科学博物館=理系、東京国立博物館=文系・芸術系といった印象を持っている人がいるかもしれませんが、この2館は密接な関係にあります。簡単にいうと、明治5(1872)年湯島聖堂での博覧会をきっかけに誕生した「文部省博物館」をルーツとして東京国立博物館が誕生し、大正14(1925)年、自然史関係の資料や所蔵品を東京博物館(現在の国立科学博物館)などへ引き渡したということです。

だから、科博、トーハクのどちらにも行きましょう。重厚な階段や階段周りの石材使いが特徴的で、桜御影(さくらみかげ)など、共通する石や化石を見つけるのも一興です。

東京国立博物館には、日本の美術を展示する「本館」、日本の考古遺物を展示するほか、特別展を開催する「平成館」、中国などの東洋の美術や考古遺物を展示する「東洋館」、法隆寺が皇室に献納した宝物を展示する「法隆寺宝物館」、洋画家黒田清輝の作品を展示する「黒田記念館」、特別展やイベント開催時に開館する「表慶館」の6館があります。所蔵作品には国宝も多く、「総合文化展」は年間約300回展示替えが行われ、さらに魅力的な企画展も活発に行われており、展示物を見るだけで時間切れ! となることが少なくありません。

そこで、おすすめしたいのが、化石探し目線での探索です。広大な敷地のうち、正門から遠い角地にあるのが法隆寺宝物館。

こちらの外壁、内壁がなかなかすごい。

近くで見ると、アンモナイトがあちこちに埋まっています。渦巻き模様がハッキリ見える向きのものは比較的見つけやすいでしょう。

化石や石、地質学の本によると、「アンモナイトなどの化石の断面は、横輪切り、斜め輪切り、縦輪切りなどがある」と書かれています。ということは、下の写真も斜め輪切りのアンモナイトかもしれません!

古生物をちょっと学び、もとの形をイメージしながら断面図を想像しながら化石探しをするのも、楽しそうではありませんか?

デパート化石も見逃さないで

最後に、デパートも多様な石材の宝庫です。松坂屋上野店には、ひっそりとこんな案内があります。

松坂屋上野店の化石見学は、本館1階の階段からスタート。石材として大理石が贅沢に使われ、絢爛豪華です。さすが老舗。

ここから、地下へ向かう階段の踊り場、2階へ向かう階段の踊り場では、壁を要チェック。「ナガレサンゴ類」と紹介されています。どうやら、新生代(哺乳類が現れた時代)のものらしい。

松坂屋上野店には旧南館があり(2014年閉館)、内装の石材にたくさんのアンモナイトなどの化石が見られ、愛好家がたくさん訪れていたそうです。

Information

東京国立博物館
所在地:東京都台東区上野公園13-9
営業時間:9:30~17:00(最終入館16:30) ※時期により変動あり
休館日:月曜(祝日の場合翌日)、年末年始 ※施設点検のため臨時休館あり
Webサイト:https://www.tnm.jp/

国立科学博物館
所在地:東京都台東区上野公園7-20
営業時間:9:00~17:00(最終入館16:30)
休館日:月曜(祝日の場合翌日)、12月28日~1月1日。くん蒸期間(6月下旬)
Webサイト:https://www.kahaku.go.jp/

松坂屋上野店
所在地:東京都台東区上野3-29-5
Webサイト:https://www.matsuzakaya.co.jp/ueno/

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