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昔話でSDGs!女の子が主役の昔話の作画担当・唐木みゆさんインタビュー

ライター
木村悦子
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インタビュー

桃太郎、一寸法師など昔話の主人公ってほぼ男性。女性は男性ヒーローに守られるお姫様など、かよわく従順な役割ばかり。とはいえ世は令和。世界の課題として掲げられたSDGsの目標の5番目「ジェンダー平等を実現しよう」にぴったりの「女の子の昔話」という絵本シリーズが偕成社から発行されました。

そのうちの、『マーヤのさるたいじ』の作画を担当した唐木みゆさん(東京藝術大学デザイン科修士修了)にインタビューしました。

女の子がこんなに活躍して気持いい!

――『マーヤのさるたいじ』は、勇敢な女の子のお話ですね。日本の昔話では、女の子が主役となるものが少ないので、いい視点だなと思いました。

唐木さん:実は、まだあまり知られていませんが、野蛮だったり激しい女の子が出てくる昔話は世界中にちらほらとあります。私はそういうお話に出会うと 「女の子が元気で気持いいな~!」と、うれしくなっちゃいますね。自分の決断を持った女の子が登場するお話は、子どもにとって、世界のとらえ方を自分事にできるんじゃないかな。と期待を持っています。

――奄美群島に属する沖永良部島(おきのえらぶじま)が舞台ですね。取材には行きましたか?

唐木さん:一人で取材に行きました。企画や文章は、小説家の中脇初枝(なかわき はつえ)さんによるもので、伝承を語りなおした「再話」という形です。沖永良部島にゆかりがある方で、島の人を紹介していただいて、私にとっても思い出深い旅になりました。他にも通りすがりの人が車に乗せてくれまして、そこからお気に入りの浜辺に連れて行っていただいたり、波打ち際の岩にくっついたアオサ海苔をちぎって食べてみたり……などと。

そうそう、それで昔話ですが、伝承をもとにするので、まるごとの創作ではないのですが、お子さまたちにお話を語って、語って、その結果あきれるほどこすられた、丸くてすべすべした小石のようになめらかな言葉になっています。私が思うに、長い伝承の中でこすられた昔話もあれば、あまり知られずにごつごつなままのお話もあります。女の子の昔話は、その活躍が埋もれていたから、お話をころころと聞きやすくするのは大変だったんじゃないかな……と思います。

現地で取材したときの資料の数々。

――自費で現地取材したというわけですか。丁寧に仕事をなさったのですね。

唐木さん:私の方にも、ラフを見ていただいた大人たち、お子さまたちから遠慮なしのダメ出しがドシドシと返ってきまして、絵も丸い小石のようになりました(笑)。コロナ禍前からはじめて、もう3年も経っていました。

自然光が差し込む書院机で制作

――写真で見せてくださった仕事場は、とても仕事がしやすそうですね。

最近引っ越しまして、日々掃除しています。日本家屋だし、作った職人さんや土地性の積み重ねを無視した自分だけの快適さにならないように、家に自分が合わせていけるようにしたいと思っています。

写真の右側、窓の下に台が付いた書院という空間は、今は一般的に飾り物を置くスペースなのですが、もともと「書院」の原型は書斎だったというし、実際に座ってみると、自然光がよくとれた。張り出した机の上が安定して明るいので、字を書いたり、本を読むのによかったのだと思います。それで座卓にしてみました。

展示などで絵を別の場所に持って行くと、色が思っていたのと全然違っていたことがあって、部屋の照明をどうしたらいいのか、やきもきしていたんです。

――ネットショップの運営もなさっているのですね。

唐木さん:はい。海外旅行で見つけた民芸品だとか、自分で企画した製品だとかを小売しています。美大を出たあとは、しばらく専業のイラストレーターでいましたが、何かと「絵で食える」とか「食えない」とか見栄ばかり気にしていました。そんなわけで、体面を守ろうとして忙しくすれば、「食える」組に加わることができると思っていたのですがたくさん求められるイラストは瞬間的に消費されるものなので、その中で余裕がなくなって日々続けられる実感が薄くなっていました。

仕事にかまけて周知のわかりきったことをアウトプットして、何ひとつ、真実の開示に取り組んでいないことに気がついていました。どうやって作家や制作を続けるか、ということはそれぞれに答えを出していくことだと思います。また一人ひとりが、どの世界観を居場所にするかも、他の誰とも重ならない多様なことです。私は、仕事が自転していけるシステムを探して、ネットショップや美術の講師に行き当たりましたが、蓋を開けてみたら絵を売るよりずっと楽でした。けれど、作家だけを頑張って続けている哲学的な人よりなんか俗物になっちゃいました。これって、生活運営のバランスの取り方なんでしょうけど、芸術の換金は、多くの仕事のなかでもかなりハードモードなので、案外、他のことが楽々とできる体力や不安に対する鈍感力が身に付いていることってあると思うんですよ。

――独特の感性をもち、アイデアあふれる唐木さん。こちらは、過去に私家版で制作した「アニミズム・トランプ」で、なかなか人気があったそうですですが残念ながら在庫終了とのこと。今後の新作、ご活躍も楽しみにしています!

◆唐木みゆさん
公式サイト:http://tubakiya.co/