ラブラブシートってなんだ?上野「鈴本演芸場」を落語鑑賞ガイド付きで紹介

ライター
木村悦子
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江戸の昔から庶民の娯楽の中心となっていた寄席(よせ)演芸。落語、講談、浪曲はもちろん、コントや漫才にマジックなど、個性豊かな芸人たちがほぼ毎日、代わる代わる登場して客席のご機嫌をうかがいます。

コロナ禍で大打撃を被ったエンターテインメントの世界ですが、寄席も例外ではありませんでした。一寸先は闇となった現代においても、江戸時代の創業から伝統の話芸を継承し、上野の街を活気付けてきた寄席があります。数多の困難を乗り越えてきた寄席「鈴本演芸場」が、新たな時代を歩み続けています。

東京に残る最古の寄席定席が鈴本演芸場

テレビもラジオもなかった時代、庶民の楽しみの代表といえば「寄席」でした。最盛期には、江戸の各町内に1軒は寄席が存在していたとかいないとか。当時人気の芸は落語よりも、講談や義太夫、浪曲だったようです。

東京に残る寄席定席(よせじょうせき、年間を通じて演芸の番組を上演する専門の劇場)の中で、最古となるのが上野「鈴本演芸場」です。

創業は、江戸時代の安政4(1857)年にまでさかのぼります。震災や戦禍を乗り越え上野の地で160年以上の歴史を紡いできました。昭和46年には現在のビルが竣工し、伝統の芸で江戸の風を現代に伝え、革新の熱意で新たなファンを増やし続けています。

寄席の番組構成は原則として1カ月を10日ごとに上席・中席・下席と区切って、12時30分開演の昼の部と17時開演の夜の部の2部制(昼夜入れ替え制)となっています。月末に31日が有る日は余一会(よいちかい)と称して、特別興行が催されます。各番組は主任(トリ)を務める真打(しんうち、寄席で主任を務めることができる芸人の階級)の芸人を頂点として、バラエティに富んだ芸人が代わる代わる登場します。

落語家のみならず、講談師や色物と呼ばれる曲芸や紙切りに漫談、漫才やコント、物マネやマジックなど客席を飽きさせることがありません。鈴本演芸場に出演するのは原則として、東京に4つある落語家組織のうち最大の、一般社団法人落語協会(柳亭市馬会長)所属の芸人ということになっています。

客席まで続くエスカレーター

寄席と聞くと、木造のレトロな佇まいをイメージするかもしれません。東京最古参である寄席「鈴本演芸場」があるのは、上野の目抜き通りに面したビルの中。都会の喧騒の中、開場の時刻になると付近には太鼓の音が響き渡ります。正面エントランス受付の上で、修業中の芸人である前座(ぜんざ)さんが太鼓をたたき、気分を盛り上げます。

ビル内に足を踏み入れたら一直線に奥まで進みます。エスカレーターに乗って客席のある3階へ。客席数は285席、コロナ禍以前はお弁当をつまみながら缶ビールもOKでしたが、現在はソフトドリンクのみいただけます。

ちなみに2階には飲食コーナーがあります。

知る人ぞ知るラブラブシート

鈴本演芸場のおもしろネタとして、知っておくべきなのが通称「ラブラブシート」。客席の後部にエレベーターを新設する際に、2人並びの客席ができたというわけ。ご通家の間では常識となっている人気の席なんだそうです。

ラブラブシートとはいえ、夫婦や恋愛中である必要はなく、友人同士など組み合わせはなんでも可。お一人様もOK!

まずは体験! 一度ハマればそこが落語沼

上野散策の途中で、鈴本演芸場の前を通りがかることはあっても、入るきっかけがないという方がいるかもしれません。難しく考えず、「寄席の雰囲気を楽しもう」という軽い気持ちで入場し、鑑賞してみてはいかがでしょう?

無料で情報が得られる時代に、料金を払って楽しむエンターテインメントの醍醐味は、大人のたしなみ。通常興行の料金は、一般が3,000円、学生(中学生~24歳、要学生証)が2,500円、小人(小学生以上)が1,500円です。※未就学児入場不可。

鈴本演芸場付近にはおいしい店、通好みの名店が多くあり、そうしたところで出演を終えた芸人さんとバッタリ遭遇なんてこともあるかもしれません。

INFORMATION

鈴本演芸場
所在地:東京都台東区上野2-7-12
公式HP:http://www.rakugo.or.jp/

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