刀剣マニアが厳選!お正月にじっくり観たい「おめでたい鐔」【誰でもミュージアム】

ライター
あきみず
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新年がやってきました。今年はどんな年になるでしょうか? 素晴らしい1年となるように祈りを込めて、おめでたい図柄の刀の鐔(つば)をご紹介いたします!

霊山・富士

縁起のいい初夢は、「一富士二鷹三茄子(いちふじにたかさんなすび)」といわれます。
その筆頭、富士山をモチーフにした鐔です。

透かしの部分で富士山を描いています。

掘り下げた線で富士山を描いています。素朴で力強い雰囲気です。下部に設けられた小さな2つの穴は、腕抜緒(うでぬきお)と呼ばれる紐を通すために開けられた「腕抜孔(うでぬきあな)」。

十二支が勢揃い!

十二支の動物たちが鐔の表と裏に描かれた鐔。
どれも表情が愛らしくて、思わずにっこりしてしまいます。

細かな部分にも注目! 毛並みや羽、うろこが丁寧に表現されているだけでなく、それぞれの動物たちの丸い背景部分にも、びっしり模様が彫られているんですね!

並び順は干支の通りではないよう。なにか意味が込められているのでしょうか?

こちら側には鐔の中央に作者の銘があります。

また、中央に三角形っぽい穴(ここに刀身が通ります)がありますが、その上部に注目。

菊の花のように見えませんか? とってもおしゃれ!

松竹梅の「松」

おめでたいときによく目にする「松竹梅」。一年中ずっと変わらず緑の葉を茂らせる松は、姿も堂々としていて、かっこいいですね!

金色の部分は、金箔を埋め込んだもの。「布目象嵌(ぬのめぞうがん)」という技法で、縦横に溝を刻んだところに金箔を打ち込んでいくことで固定しています。
経年変化で少し剥がれてしまっている箇所もありますが、それもまた味わいになっているように思います。

長生きの象徴、鶴

鶴は千年、亀は万年といい、長寿の象徴とされます。本当にそこまで生きるかどうかは別として、やはりおめでたい生き物たちです。

鶴丸(つるまる)。武家の家紋などにもなっています。

お気づきになったかた、いらっしゃるでしょうか?
鶴の目に、金で象嵌が施されています!

松に鶴が羽を休めている「巣籠」

コロナ禍で「巣籠り」「ステイホーム」などの言葉が多く使われましたが、鶴が松に羽を休めている図を「巣籠(すごもり)/鶴の巣籠」と呼びます。

尺八や胡弓、歌舞伎の音楽などにもこの名前がつけられたものがあり、巣を作って卵を産み、やがてひな鳥が成長して巣立っていくという鶴の情愛を描いた、おめでたい曲となっています(尺八曲では親鶴の悲しみも表す)。また、囲碁にもこの名前がつけられたものがあります。

神様ものんびり

七福神の1人、寿老人(じゅろうじん)が描かれた鐔です。
鹿にもたれかかって、くつろいでいますね。

あれ? いつもは手に持っている「うちわ」も「杖と巻物」も、放り出してしまっています。
今は完全オフ、神様も休暇中はこんなにのんびりしているんですね。

でも、この鐔を作った「後藤光晃(ごとうみつあきら)/方乗(ほうじょう)」は、製作中、目が血走っていたかもしれません。

鐔の地の部分に注目。ごく小さな丸い粒が、規則的に縁まで一面につけられていますが、これ、1つ1つ鏨(たがね)で打って付けたもの。「魚子地(ななこじ)」という技法で、魚の卵に似ていることから名付けられたといいます。

これを作業していくと考えると、気が遠くなりそう……。さすがは代々将軍家に仕えてきた名門・後藤家の16代です。

本記事は「和樂web」の転載です

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