2023年3月から5月にかけて前後期で開催される企画展「GEIDAI ART JUNGLE returns 藝大密林化計画」。
アーティストたちが創り出すさまざまな生き物たちで藝大アートプラザを「アートのジャングル」にしてしまおうという計画です。
3月18日(土)〜4月16日(日)は前期展示として12人のアーティストの作品を展示・販売しています。
この記事では前期展示の作品を、写真とともにご紹介します。
※コメントは、Web担当による解説です。
※並びは順不同です。
※写真にない作品もございます。ぜひ現地で全ての作品をご覧ください。
会期:2023年3月18日(土)〜5月28日(日)
前期:3月18日(土)〜4月16日(日)
後期:4月22日(土)〜5月28日(日)営業時間:10:00〜17:00
定休日:月・火曜休
※GWは営業。祝日・振替休日の場合は翌営業日が休業
※展示入れ替えのため 4月17日(月)〜21日(金)休業入場料:無料
顔を貝に置き換えてみると
浅野井 春奈
動物や人の顔の部分に貝を当てた彫刻を多く手掛ける。作家は「火葬場でお骨を拾った際、海で拾う貝殻に似ていると感じた。その瞬間小さい頃よく遊びに行っていた海岸の風景が頭に浮かび、漠然と大きなつながりのようなものを感じた」と振り返る。
1990 東京都生まれ
2012 東京藝術大学美術学部彫刻科卒業
2012 三菱地所賞受賞
2014 東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了
2017 彫刻//新時代シリーズⅡ vol.4 浅野井春奈展 -unconsciousness-(東京日本橋髙島屋美術画廊X)
2018 個展「ぱーのーらーま」(Gallery FACE TO FACE/東京)
2019 個展「VACATION」(Gallery FACE TO FACE/東京)
2020 個展「貝の舌」(横浜髙島屋/横浜)
2021 個展「きらめくみみかざり」(Gallery FACE TO FACE/東京)
2022 個展「Le Penseur」(東京日本橋髙島屋美術画廊X)
生命誕生から社会形成への流れを
色川 美江
リトグラフによる版画作品を出品。4つの連作は「CELL」「胚」「サボテン風呂」「風の街」と題され、生命の誕生から社会が築かれていく大きな流れを想像させる。「森の種子は人間の経済活動によって街へたどり着く 花が舞い、美しい音色が響く街 木々の恵みは人々に恩恵をもたらす」。
2015 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業
2015 平成26年度 第63回東京藝術大学卒業・修了制作展 帝京大学賞受賞
2016 ウィーン美術アカデミー(Academy of Fine Arts Vienna) 交換留学
2018 東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻版画修士課程修了
2018 第66回 東京藝術大学 卒業・修了作品展 杜賞受賞
2019 第8回FEI PRINT AWARD入選作品展 クサカベ賞
食べる食べられる関係を超えた命の連鎖
岩澤 慶典
野菜や果物自身が持つ形や色の鮮やかさ、また、外からは見えない中身(断面)の美しさを、動物とともにブロックのように積み重ねて、新たな生物・新たな世界を生み出すことがテーマになっているという。食べる食べられるという関係を超えた命の連鎖が、これらの絵の中にはあると作家は語る。
1983 神奈川県生まれ
2009 東京藝術大学大学院美術研究科修士課程油画専攻修了
東京藝術大学油画教育研究助手※’11〜‘13まで
2014 第95回記念日本パステル画会展(東京都美術館) ※‘14から連続出展
董展-偏愛する絵画、六研派の美術-(東京藝術大学)
2020 個展「食彩どうぶつ」(REIJINSHAGALLERY/東京) 他、個展、グループ展多数
現在、神奈川県にて制作
独自のガラス技法で微生物を表す
勝川夏樹
粉状に粉砕したガラスをのりで練り合わせ、粘土状にしたものを塑像し、乾燥させ、耐火粉に埋没させた後に焼成する。作家はこの「モデリングパートドヴェール」という手法を独自に研究し、本展では「微生物」をモチーフにしたガラス作品を並べた。多くの人々がイメージする「ガラス」とはまったく異なる表現を試みている。
2021年 東京藝術大学 大学院 美術研究科 博士審査展 / 野村美術賞
2020年 第8回現代ガラス展in山陽小野田 / 市長賞
アート・ミーツ・アーキテクチャ・コンペティション2020 / 最優秀賞
「ミクロコスモス – 新たな交流の試み」(富山市ガラス美術館)
2018年 ガラスの植物園(石川県能登島ガラス美術館)
第7回現代ガラス展山陽小野田2018 / 大賞
‘18日本のガラス展 / ロペックスインターナショナル賞
2017年 Young glass 2017 / 入選(デンマーク Glass museet Ebeltoft)
2016年 Stanislav Libensky Award / 大賞 (チェコ DOX Center for Contemporary Art)
第64回東京芸術大学卒業・修了作品展 / 原田賞・台東区奨励賞
絵を描くという「祈り」の行為
須澤 芽生
藝大専門研究員として文化財の保存修復を研究する中で、日本画の代表的な画題である牡丹孔雀図などには「祈り」の存在が見え隠れしているという作家本人の気づきと、幼少期にキリスト教系の幼稚園に通い、毎朝礼拝堂で祈りを捧げるのが日課だったという自身の記憶が連関した作品。「私にとって絵を描くことが『祈り』そのものなのかもしれない」。
1988 長野県生まれ
2016 第27回沖縄県立芸術大学卒業・修了作品展(沖縄県立博物館美術館/沖縄県)
沖縄県立博物館美術館館長賞
沖縄県立芸術大学買い上げ
2019 東京藝術大学大学院美術研究科卒業修了作品展
平山郁夫奨学金賞受賞
2021 東京藝術大学大学院美術研究科博士審査展
2022 東京藝術大学大学院美術研究科文化財保存学専攻保存修復研究領域(日本画)博士後期課程 修了
静岡銀行賞受賞
現在 東京藝術大学専門研究員
動物の持つしなやかさと躍動感を
瀬戸 優
動物、特に野生生物や絶滅危惧種をモチーフとした彫刻作品を制作している。そのスケールでしか表現できない空気感にこだわり、作品はすべて実物大で制作しているという。3Dプリンターなどで誰もが本物と寸分たがわぬオブジェを作れる時代の中で、テラコッタ(粘土)を用いた表現によって動物の持つしなやかさと躍動感を、作家の息遣いとともに表現している。
1994 神奈川県生まれ
2020 東京藝術大学大学院美術研究科修士課程彫刻専攻 修了
2015 藝大アーツイン丸の内賞2015 GAM賞受賞
2016 観◯光賞 第二席受賞
2017 KENZAN2017 roidworksgallery賞受賞
2020 東京医科歯科大学奨励賞受賞
展覧会多数
「ニセモノ」という存在に焦点を当てる
長谷川 有里
ジャングルという言葉から、「混乱」や「ごちゃまぜ」、そして「人を面食らわせるもの」「非情な競争社会」といったキーワードを連想した作家。「bury me with yellow rug」と題した作品は、本物とは違い、決して大切にされない「ニセモノ」という存在に焦点を当て、葬られるもの、忘れ去られるもの、捨てられる定めとしての存在をフェルトや綿を用いて表現した。
1978 三重県生まれ
2002 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業
2022 個展 “R”展/Utrecht/東京
2022 個展 F+展/on reading/名古屋
2022 グループ展 “congregation”/Dallas/USA
作品が「完成」する瞬間とは
樋口 亜弥
幼少期に過ごしていた故郷の新潟の景色を思い出したり、山小屋の景色や見過ごされがちな足元の景色などを見つめているという作者。「絵の具が光って見えることと、景色が光って見えることが、画面の中で同時に一つになって溶け合う時、作品が完成するような気がする」と語る。
1988 東京生まれ
2015 東京芸術大学大学院美術研究科油画技法材料研究室修了
2015 第63回東京藝術大学卒業・修了展
2016 三越×藝大 夏の芸術祭
2016 次代を担う若手作家展 日本橋三越本店/東京
2020 個展 「under the sky」 FARO design/東京 個展 「 a little planet」capleville写真館&カフェ/東京
2022 ASYAAF artfair Hongig museum of art/韓国
2023 New selection
2023 「Entities」Gallery Gigi/神奈川
人類の創作物と自然との関係に思いを
福本 健一郎
古今東西の植物図鑑、さまざまな民族のタペストリー、土や海の微生物、身の回りの観葉植物などの形や色から着想を得て、太古から続く人類の創作物と自然との関係に思いを馳せながら制作しているという作家。藝大アートプラザの「ホワイトキューブ」の空間に合わせてピックアップした4点を展示した。
1986 広島県生まれ
2011 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業
2014 東京藝術大学大学院美術研究科油画研究領域修了
(2012-13年 交換留学 ラサールシア美術大学 シンガポール)
個展
2020 あめつちのかけらとうつわ(SFT gallery/国立新美術館/東京)
2019 かけらとこけら (Grenier/東京)
2017 List Satheby’s featured by Kenichiro Fukumoto (リストサザビーズ/東京)
2015 トーキョーワンダーサイトエマージング (トーキョーワンダーサイト渋谷/東京) トーキョーワンダーウォール (東京都庁第一本庁舎3F南側空中歩廊/東京)
2014 Dear Friends (JIKKA/東京)
2013 個展 (KIZUKI+LIM/シンガポール)
グループ展
2020-21 やんばるアートフェスティバル (沖縄本島北部地域 大宜味村旧塩屋小学校/沖縄)
2018-19 やんばるアートフェスティバル (沖縄本島北部地域 大宜味村旧塩屋小学校/沖縄)
2017 Scenary Poem by Kenichiro Fukumoto x Stephen Wong Chun Hei (PROJECT FULFILL ART SPACE/台北)
After images… (iPreciation/シンガポール)
2014 アートアワードトーキョー丸の内2014 (行幸地下ギャラリー/東京)
2013 Cross Encounter: A collaboration of Artists from Singapore and Japan (ジャパンクリエイティブセンター/シンガポール)
パラレルワールドでのフクロウの姿
松下 大一
藝大在学中からフクロウをモチーフに描き続けている作者。リアルな表現の一方で、手塚治虫の作品からインスピレーションを受け、人間がいなくなったパラレルワールドにおけるフクロウ、人間が残した過酷な環境の影響を受けて変異・進化してきた彼らの姿を想像して描いている。
1990 愛知県生まれ
2014 東東京藝術大学日本画専攻卒業
2016 同大学院(修士課程)版画第1研究室修了
個展「Sanctuary」開催(八犬堂)
2018 個展「D-FORMED」開催(四季彩舎)
2019 個展「OWLternative」開催(松坂屋名古屋店)
2022 個展「VS -Variable Survivors」開催(四季彩舎)
金属が姿を変えること=命の創造
水代 達史
金属を素材に、彫金の技法で作品を制作している。彫金技法は金工技法の中でも装飾・加飾を専門とする分野であり、本展への出品作にも作家の「装飾性」への追求が見て取れる。「平らな金属の板が手を加えることで有機的な形へと変容し、自身の制作対象とする生き物の形へと形成されていく様子は命を創造していく感覚に似た愉しさを感じます」。
1982 千葉県生まれ
2011 東京藝術大学大学院美術研究科彫金修了
2015 東京藝術大学工芸科彫金研究室非常勤講師
現在 金沢美術工芸大学工芸科准教授
2009 原田賞・台東区長奨励賞受賞
2010 Via Art 2010 審査員池内努賞受賞
2019 淡水扇賞優秀賞受賞
2020 宗桂会大賞受賞
2022 個展(galleria PONTE) 他展示多数
人間と動物の対等な関係
渡邉 渓
流木を荒野に見立て、大河を漂いながらも贅肉を削ぎ落として芯となる人間活動と、他者との関係性を表した作品だと作家は説明する。愛玩動物や使役される動物ではなく「人間と対等な関係を維持するものであり、その気高さが硬い芯を持ってあてどなく旅をしてきた流木をとともに、人間と他者/自然との関係性を表現する」。
1991 静岡県生まれ
2018 東京藝術大学美術学部デザイン科卒業
2020 大学院美術研究課修士課程デザイン専攻 修了
出展作家と会期
▼前期
須澤芽生/瀬戸優/福本健一郎/岩澤慶典/長谷川有里/樋口亜弥
渡邉渓/松下大一/浅野井春奈/勝川夏樹/色川美江/水代達史
▼後期
平入裕佳子/浅井拓馬 /内田早紀/水島篤/長久保華子/真鍋由伽子
保坂朱音/額賀苑子/黒瀧舞衣/柿坪満実子/鈴木啓正
公式Instagram:https://www.instagram.com/geidai_art_plaza
公式Twitter:https://twitter.com/artplaza_geidai
会期:2023年3月18日(土)〜5月28日(日)
前期:3月18日(土)〜4月16日(日)
後期:4月22日(土)〜5月28日(日)営業時間:10:00〜17:00
定休日:月・火曜休
※GWは営業。祝日・振替休日の場合は翌営業日が休業
※展示入れ替えのため 4月17日(月)〜21日(金)休業入場料:無料
写真撮影: 今井裕治