陶芸で制作したデコレーションケーキやアクセサリー。陶芸作品を身にまとい、自らの世界観を表現する――。東京藝術大学大学院 美術研究科 工芸専攻(陶芸)に在籍するYURIAJURIAさんは、「陶芸」の枠を軽やかに飛び越えながら、自身の“好き”を起点に独自の創作を続けています。心浮き立たせるスイーツのモチーフ、ファッションとの融合、そして展示空間までを含めた表現世界。なぜ彼女は土でケーキをつくるのでしょう。制作の背景や、陶芸への思いを聞きました。

「陶芸でケーキをつくりたい」。シンプルな思いからはじまった制作
――まるで本物のような陶芸でつくるウェディングケーキ。制作のきっかけをおしえてください。
YURIAJURIAさん(以下、YURIA) 学部2年生から陶芸専攻に入って、3年生前期の課題で最終的に作品発表をする機会がありました。初めて自分で考え、自由に作品をつくることになったとき、それまで課題に追われてできずにいた、「陶芸でケーキをつくりたい」という1年生のころから抱いていた思いをやっと形にできました。そこから現在まで制作を続けています。
専攻は1年生のときにいろんな素材を体験してから決めますが、なかでも陶芸は素材を直接動かせるのがいいと感じました。金属やガラスは道具を介して形を変えることが多いのに対して、陶芸のスピード感が高校時代に描いていた油絵と少し似ていて肌に合うと感じました。また、自分の強みである色彩感覚を活かして色や質感を多用できるビジョンもありました。

――なぜ、ケーキだったのでしょう?
YURIA 中学生のころ、樹脂粘土を使ってミニチュアやフェイクのスイーツをつくっていました。ボンドや接着剤に絵の具を混ぜて、それをジャムっぽく見せるなど、本物ではない素材を“それっぽく”見せることにトライしていました。学部で陶芸に触れたとき、焼き上がった土や釉薬の色を見て、「あ、なんかおいしそうだな」「お菓子みたい」と自分の頭のなかでつながっていったんです。
また、展示することを考えたときに、見どころが多いものを作りたいと思いました。サイズ感や密度を考えても、ケーキは大きくつくってもウェディングケーキのイメージがあるおかげで違和感がありません。クリームの装飾で細かな見どころもつくれます。さまざまな味のバリエーションがあるので、ビジュアルのバリエーションも出せると考えました。
――「味」がビジュアルの決め手になっているんですか⁉
YURIA 要素の一つとしてあります。チョコレートケーキとショートケーキでは “味”の違いから自然に見た目のバリエーションが広がるところも面白いと感じています。実際のケーキを食べるのも好きですが、それほど甘党ではありません。陶製のケーキをつくり始めた時期は、乳製品を避けるベジタリアンに近い食生活をしていたので、クリームも植物性の素材を使ったものを食べていました。土自体が自然のものですから、自分の食生活とリンクしていたんです。

――制作工程を映像で見ると、ケーキづくりそのものですね。
YURIA 泥状にした土の硬さを調整するときは、電動ハンドミキサーを使って攪拌しています。デコレーションもケーキづくりと同じ作業で、泥状にした土を実際に絞り袋に入れてクリームのように絞ります。アイシングのように行う、細かな装飾を描くのもとても楽しくて。ファッションでも装飾要素の多いものが好きです。デコレーション自体に興味があるので、陶芸作品の制作でもリンクしていると思います。
初めて陶芸でケーキづくりに挑戦したときは、乾燥の過程でひび割れしたり、ボディ側面の装飾が剥がれたりしました。柔らかい泥を乾いた土台に絞ると、それぞれの水分量が違うので蒸発時間が異なるからです。水分が多いと乾燥後の収縮も大きい。土が柔らかすぎると模様が出ずに垂れてしまうし、硬すぎると絞れません。そこで、ひびを抑える成分を入れるなどして調整します。少し垂らして「この落ち方なら大丈夫そう」と感覚で見極めています。


――焼成後の変化もありますか?
YURIA はい。最後に窯を開けたらひびが入っていた、ということは普通にありますし、色味が想像とまったく違うこともあります。でも、陶芸の完全にコントロールできない部分も好きなんです。陶芸は焼き直すこともできますが焼いたら一区切りがつく。「ここで終わり」というタイミングが自然に来る感じがあって、それも魅力のひとつですね。
陶芸とファッションをつなぐ、トータルディレクション
――YURIAJURIAさんの創作は、陶芸制作にとどまらない活動が印象的です。
YURIA 学部の卒業制作では、デコレーションケーキとそれに合わせて制作したアクセサリーを身に着け、スタイリングをして撮影した写真を合わせて展示しました。モデルさんだけでなく、私自身もモデルとなって身体の装飾とケーキ自体の装飾の両方を見せるようにつくりあげたのです。

――展示全体としてひとつの作品という感覚なんですね。
YURIA そうですね。作品そのものの見え方だけでなく、どのように展示するかまでを含めて自分の表現だと思いました。学部時代から個展やグループ展を重ねる中で、「複数の作品をどう空間に配置するか」と見せ方を強く意識するようになりました。写真撮影では、メイクやスタイリングも含めて自分でディレクションしています。イメージに合うメイクが得意そうな人にお願いしたり、「この作品ならこういう服を合わせたい」と考えたり。全部を組み合わせて空間をつくる感覚です。
――ファッションから受ける影響も大きいのですか?
YURIA ヴィンテージファッションが好きなので普段から古着屋で洋服を買うことが多いです。デザイナーではジョン・ガリアーノが好きです。昔のキャバレーのような、退廃的でも、きらびやかで少し非現実的な雰囲気に惹かれます。パンクカルチャーも好きです。でも一つの世界観に限らず、相反する要素を組み合わせたい。卒業制作では、白い二段重ねのケーキにボディピアスを差し込んだりもしました。かわいらしさと尖った印象をもつ正反対の要素を同時に存在させたかったんです。
陶芸の枠を超えて――“かわいい”から工芸を身近に
――作品を通して、どんなことを伝えたいですか?
YURIA 私の作品を見て「これも陶芸なんだ」と驚いてもらえるのが嬉しいです。陶芸ってそもそも身近なもののはずなのに、今の人にとっては壺や茶碗みたいな渋いもの、として遠い存在に思われることが多いですが、もっと身近に楽しんでもいいものだと思います。私と同じ年代の人たちやファッション好きな人、かわいいものが好きな人たちにも届けたい。「なんか好きかも」という感覚で見てもらえたら嬉しいです。「この服かわいいから買おう」、というノリで陶芸や工芸を身近に感じてもらいたいですし、純粋に楽しんでもらえたらと思っています。


――これまで作品を見た人に言われて印象的だった言葉はありますか?
YURIA まわりの友人や先輩、教授からは「作品と作者が似てるね」とよく言われます。自分自身が一番作品に似合っていると言ってもらえると、自分らしさをきちんと表現できているのかなと思います。作品を見て、みんなが「かわいい!」とテンションが上がってくれるのを見ると、いつも嬉しく思いますね。
――今後、挑戦してみたいことはありますか?
YURIA いまは日常で身に付けられる、小さなアクセサリーを多くつくっていますが、より身体を覆う範囲を増やす表現をしてみたいです。ケーキの形や絞り方などのバリエーション、精度を深めつつも、布など別素材を組み合わせながら、作品と身体との関わりを広げていきたい。コスチュームジュエリーのようなイメージですね。普段の生活で楽しんでもらえるものと同時に、ここぞというときの「特別感」のある作品に挑戦していけたら、と思います。

(Photo by Tomoro Ando / 安藤智郎)
【YURIAJURIA】
2001年 神奈川県生まれ
東京藝術大学大学院 美術研究科 工芸専攻(陶芸)在籍

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