第13回 藝大アートプラザ大賞展 出品作家インタビュー 本村綾さん

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インタビュー

藝大アートプラザ大賞展準大賞を受賞した本村さんは、絵画専攻油画の修士2年生。受賞作の「光のある部屋」は、版画なのですが、モノタイプという1枚しか刷れない作品です。作品の制作工程や技法についてお話を聞かせていただきました。

受賞作について説明していただけますか。

カーボランダム技法を用いた版画作品です。カーボランダムとは、リトグラフ(石版画)で使われる石の研磨剤の名前です。この研磨剤を接着剤で銅版の上に定着させ、インクをつめて刷ることで、独特の強烈なマチエールを得ることができます。

この絵は具体的なものをあらわしているのですか。

はじめにイメージがあってそこから出発する場合と、完成のイメージがどうなるかわからない状態で感覚的に描いていく場合と、2つの制作方法があります。この作品は、後者です。自分の中の抽象的な感覚を大事にし、油絵の具でペインティングをする時のような意識で作りました。できあがったものが、夜のリビングで静物が光を帯びているようなイメージだったので、「光のある部屋」というタイトルを付けました。

作品をつくるにあたって苦労した点はありますか。

この作品は、色インクの層を8回くらい重ねて刷っているのですが、その際、刷り重ねていくことで色味や明暗の調子が深く美しいものになるように気をつけました。キャンバスに直接、絵の具で描いていく油絵と違い、版画は刷ってみないとどうなっているのかが分からないので、間接的な作業の中で、次にすべき仕事を判断していく必要があり、そこが難しいところです。

偶発的なものなのですね。

そうですね。偶発的な部分も多いですし、それを利用することもあります。


準大賞を受賞した今の気持ちは。

リニューアルして1年目のアートプラザ大賞展で賞をいただいて、本当に嬉しく思っています。誰かの手に自分の作品が渡って行くことが、私にとっては一番の励みになります。よりたくさんの人に手にとっていただけるよう、これからも頑張って行きたいと思います。

今後の展望は?

大学院を修了してからも、制作をつづけます。誰かにとってわたしの作品が、版画に興味を持つきっかけや、美術を身近なものに感じるきっかけになれば嬉しいなと思います。


●本村綾プロフィール
1993年 東京生まれ
2017年 多摩美術大学絵画学科油画専攻卒業
2018年現在 東京藝術大学大学院美術研究科修士課程絵画専攻油画2年

入選・受賞歴
2018年 第13回 藝大アートプラザ大賞 準大賞
    第7回 FEI PRINT AWARD 入選
    第6回 東京国際ミニプリント・トリエンナーレ 入選
2018年〜2014年 三菱商事アート・ゲート・プログラム 計13回入選(第26回、第27回、第29回、第30回、第31回、第33回、第34回、第35回、第37回、第38回、第39回、第41回、第42回)

作品収蔵
多摩美術大学美術館作家HP: https://hareru9mo.wixsite.com/ayamotomura


取材・文/藤田麻希 撮影/五十嵐美弥(小学館)

※掲載した作品は、実店舗における販売となりますので、売り切れの際はご容赦ください。

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