COLUMN & INTERVIEW コラム&インタビュー

常設展には観ているだけで楽しくなってくる意外な個性派もいっぱい!!【かるびの「秘境」藝大探検 Vol.4】


2020/01/16 コラム

常設展内観

主夫アートライターの“かるび”こと齋藤久嗣と申します。 さて、2019年12月13日から好評開催中の「常設展」ですが、1月19日まで絶賛開催中です。これまで、動物をモチーフにしたかわいい作品や、齋藤芽生さんの作品などを紹介してきましたが、まだまだ紹介したい作品がたくさんあるんです。

そこで、本稿では今回の「常設展」に出品されている作品の中でも、とりわけ個性的な作品をいくつかピックアップして紹介してみたいと思います!

それでは、早速行ってみましょう。

まずは、こちらのちょっとまるまるとした体型が愛らしいパンダのオブジェ。ちょっと不機嫌そうな顔つきでこちらを見据える表情が印象的な、中村弘峰さんの作品です。

中村弘峰「ジャイアントパンダ」
中村弘峰「ジャイアントパンダ」88,000円(税込)

実はこの作品、博多人形なんです。一つ一つ石膏で型を作って、粘土を型抜きし、素焼きしてから手仕上げで彩色するという、昔ながらの博多人形の伝統技法で制作された作品なのですね。

中村弘峰さんは、福岡の伝統工芸である博多人形を手掛ける人形師の4代目当主。博多人形の技法を継承しつつ、全く新しい発想で現代的なモチーフを取り入れた斬新な人形を作り続けています。2019年夏にポーラ ミュージアム アネックスで開催された個展「SUMMER SPIRITS」では、人形好きだけでなく幅広いアートファンを楽しませてくれました。2006年(大賞)、2007年(準大賞)、2008年(大賞)と3年連続で藝大アートプラザ大賞で受賞歴を重ねるなど、藝大アートプラザとも非常にゆかりのある作家さんなんですよ。

そんな人気作家である中村さんの作品、これは絶対お得だと思います!

続いてご紹介したいのは、幾何学的な造形と強く打ち出された鉄の素材感が印象的な上田かなさんの作品。

上田かな(左)「心臓」154,000円(税込)/(右)「Meteor α」44,000円(税込)
上田かな(左)「心臓」154,000円(税込)/(右)「Meteor α」44,000円(税込)

最初この「心臓」を見た時、アグレッシブな外見にドキッとさせられました。でも、ずーっと眺めていても、不思議とこれが見飽きないんですよね。余計な装飾を削ぎ落とし、正三角形や正五角形などシンプルな幾何学形を組み合わせたフォルムからは、神秘的な雰囲気すら感じられます。焦げ茶色の「鉄」ならではの侘びた質感が、どことなく茶の湯で使う茶釜などを連想させるからでしょうか。意外にも「和」な雰囲気も漂っています。

また、作品の周りを回ってみると、見え方もどんどん変わってくるのも面白いんですよね。

上田かな(左)「心臓」154,000円(税込)/(右)「Meteor α」44,000円(税込)

こうやって明るい光源の下で鑑賞してみると、影になる部分、光になる部分のコントラストがはっきり別れるので、見た目のシンプルな造形以上にオブジェとして深く楽しめる作品だと感じました。

一見とげとげしく感じるのですが、ずーっと見ていると馴染んできて、なんとなく和室に置いてみたくなるような作品です。

ちなみに、上田かなさんの卒業制作作品「Rationalist」は、2019年に東京都知事賞を見事獲得。現在、作品が上野公園内の東京藝術大学へ向かう「芸術の散歩道」に野外展示中されています!こちらも、幾何学文様を組み合わせた意味深なモニュメント。ずっと見ていると、いろんな意味を感じ取ることができるでしょう。非常に深い作品です。

上田かな「Rationalist」
上田かな「Rationalist」※本展には出品されていません。

続いては、押し出しの強い作品を2つ紹介しますね。

まず、最初にぜひ手にとって重さなども感じてみてほしいのが、こちらの若林真耶さんの力の入った作品。

若林真耶「飾筥・華」165,000円(税込)
若林真耶「飾筥・華」165,000円(税込)

鍛金技法の金属彫刻を中心に、金属とガラスを組み合わせたオリジナルのアクセサリーや小物なども幅広く手掛ける若林真耶さん。ご自身のInstagramを拝見すると、多彩で美しい作品群にハッとさせられます。

本作「飾筥・華」は、そんな若林さんの作品の中では特に個性的でインパクトの強い作品。少女が自分の肩を抱いたような上半身を模したフォルムは、一見オブジェに見えますが、じつはこれ、小物入れなどに使える「箱」なんですね。

若林真耶「飾筥・華」165,000円(税込)

鍛金技法で丁寧に左眼につけられた花が妖艶な美しさを醸し出しているのも鑑賞ポイント。時間をかけて細部まで丁寧に作られていることがわかります。また、右目に象嵌されたガラス製のオレンジ色をした目も強い印象を残しました。

ぜひ、手にとって箱を開けてみてください。見た目以上に箱の重さがズシリと腕に来るあたり、やはり金属製なのだな、と腑に落ちますよ。

また、こちらの作品も一度見たら忘れられません。

扇原康成「夜光童子出現」162,000円(税込)
扇原康成「夜光童子出現」162,000円(税込)

つぶらな三つ目をした、かわいい妖怪のオブジェ。近くから観ると、金属的で重たそうな質感もあって、おおきなかたまりとしての物質感が漂っている作品。(実際は陶器製です)

アクリルメディウムの効果で、全身が穏やかな白銀色に輝いているためか、「夜行童子」ではなく「夜光童子」と名付けられているのも面白いですね。

作家の扇原康成さんは、東京藝術大学卒業後、自ら立ち上げたデザイン会社にて、企業ポスターやロゴ、広告、Webデザインなど商業デザインの第一線で活躍しながら、定期的に個展やグループ展で自らの作品を出品されています。

最後に、不思議な世界観と美しさが同居したようなオブジェを2つ紹介します。

古賀真弥「翠の夢」297,000円(税込)
古賀真弥「翠の夢」297,000円(税込)

まず最初に紹介したいのが、こちらの切り株のような台座から、1本の新芽が伸びている本作「翠の夢」。いろんな解釈ができるように敢えて抽象的なタイトルをつけました、とインタビューで語られていました。作家の狙い通り、本作には色々な見立てが成立しそうです。

僕は最初、休火山の火山湖から新しい命が育まれているイメージを思い浮かべました。生命の循環や生と死が隣り合わせになって表現されているような造形が面白いなと思ったのですが、インタビューを読むと作家の意図とは違った読み方だったようです。

古賀さんが、この台座をどういったイメージで作ったのかという答え合わせはこちらのインタビューから!

本作でぜひ注目して頂きたいのが、見た目以上に高い技術力を要する若葉や落ち葉の表現。たとえば、こちらの銅を彫って作られた若葉は、葉脈のひとつひとつまでしっかり質感が表現されています。着色は単純に絵の具を塗り重ねているわけではなく、薬品と反応させるのだそうです!理科実験みたいで凄い!

古賀真弥「翠の夢」297,000円(税込)
若葉の緑色は薬品と反応させて表面に「緑青」という一種のサビを発生させて表現されています。また、よーく見るとエポキシ樹脂で茎や葉の水滴までリアルに再現されています!

また、切り株(僕はカルデラ湖に見立てたのですが)の水面は、透明な樹脂で固定されていて、水面下には鮮やかに紅葉した赤い落ち葉が閉じ込められています。この落ち葉の「赤」もまた、絵の具ではなく熱を利用した「緋銅」という着色法で表現されているんです。

古賀真弥「翠の夢」297,000円(税込)

また、切り株(僕は山裾に見えました)のざらついた質感、抽象的な文様なども非常に丁寧に仕上げられており鑑賞者がイメージを自由に膨らませられるよに工夫されていますよね。

古賀真弥「翠の夢」297,000円(税込)

本作に何を見るのかは鑑賞者次第。ぜひ、イマジネーションを自由に広げて楽しんで見てくださいね。もちろん購入して独り占めすることも可能です!

さて、最後にご紹介するのが、ガラス作家の山本真衣さんが制作したお皿、グラスなどからなるガラスのうつわセットです。

山本真衣「見つめる」253,000円(税込)
山本真衣「見つめる」253,000円(税込)

本作は藝大アートプラザの企画展「おみやげ展」にも出品された作品。人生のおみやげというテーマから着想を得て、皆と楽しい時間を過ごすためにこんなセットでおもてなしできたらいいなという想いを込めて制作されたそうです。

ちなみに、現在は円卓のようにグラスを大きく広げて展示されていますが、ご本人のInstagramでは皿の上に全部グラスがぴったり乗るような感じで写真が掲載されていますね。

山本真衣「見つめる」253,000円(税込)

本作中央にあるガラスのお皿の中には、一面に突起のような複雑な花模様が美しく表現されています。一体どうやって作ったのか想像もつきません。

そして、真ん中に置かれているガラスの小箱を開けると、そこには美しくカットされた飴玉のようなガラス玉が!しかもこのガラス玉、グラスと同じく8個入っていて、箸置きとしても使えるんです!粋な演出ですよね。

山本真衣「見つめる」253,000円(税込)

なんだか見ているだけで幸せな気分になれそうな、そんな作品でした。自宅に飾るのもいいですし、実際に大切な人が自宅に来た際に食器として使うのも良いですね。

山本真衣「sweet smell」各24,200円(税込)
山本真衣「sweet smell」各24,200円(税込)

なお、山本さんは他にもすべてガラスでできている首飾り「sweet smell」も同時に出品されています。マットな質感で、淡く柔らかい色使いのガラスのペンダントもきれいでした。贈り物にもいいですね!

さて、今回はここまで藝大アートプラザ常設展で見かけた「個性派」作品をいくつかピックアップして取り上げてみました。印象的だったのは、どの作品にも作家独自の世界観が反映されているのですが、その個性を表現するための技術力が格別にしっかりしていること。しかも、ガラスと鍛金、彫金とエポキシ樹脂など、複数の素材を自在に組み合わせて制作された作品も多数あるんですよね。

だから、個性的であってもちゃんと芸術作品としての「美しさ」が担保されているんです。

ぜひ、面白い作品を見つけたら、細部に隠れている作家の超絶技巧な技術力に目を向けてみるのも面白いかも知れませんね。

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個性的な押し出しの強さの裏には「鋳造」「鍛金」「グラスアート」など複数の工芸技法が自在に組み合わされた確かな技術力の裏付けがあります。

さて、こちらの常設展に展示されている作品群の会期は19日で終了しますが、もし会期終了後にまだ残っていた場合、展示されていなくても購入可能な作品が多数あります!

もし藝大アートプラザの記事を見て、この作品を見てみたいな!と思った場合、たとえ会場に見当たらなくても、店員さんに「ありますか?」と聞いて頂ければ、ストッカーから取り出してもらうことが可能な場合もあります。ぜひ、気軽に「あの作品まだありますか?」とお尋ねくださいね!

藝大アートプラザ 常設展
会期:2019年12月13日~2020年1月19日

常設展特集ページ: https://artplaza.geidai.ac.jp/permanent_exhibition/


取材・撮影/齋藤久嗣 撮影/五十嵐美弥(小学館)

※掲載した作品は、実店舗における販売となりますので、売り切れの際はご容赦ください。