COLUMN & INTERVIEW コラム&インタビュー

第14回藝大アートプラザ大賞展出品作家インタビュー 持田員暢(美術学部工芸科陶・磁・ガラス造形専攻3年)さん

2020/02/07 インタビュー

小学館賞を受賞した持田員暢さんの「黒楽瓢箪 銘『rinze』」は、ひょうたん型のカーブについた釉薬の表情が魅力的な作品です。この釉薬は、持田さんが山に分け入り、溶けそうな石を採集し、特別な調合でつくりだしたものです。なぜ既存の釉薬を使わないのか、なぜ作品名に「黒楽」と銘打っているのか、さまざまな疑問に答えていただきました。

持田員暢

なぜ楽焼をつくってみようと思ったのですか?

何も歴史的な文脈がないところで新しいものをつくるよりも、伝統や、歴史的な背景を勉強してから、自分の作品をつくりたいと思っていて、楽焼をつくるようになりました。また、単純に黒楽の色が気になっていたということもあります。形については、光悦作といわれている香合にひょうたん形のものがあって、それを意識しています。

持田員暢「黒楽瓢箪 銘『rinze』」
持田員暢「黒楽瓢箪 銘『rinze』」

それで、タイトルに「黒楽瓢箪」と、楽焼であることを明記しているのですね。藝大の陶芸専攻は轆轤(ろくろ)を重視する教育だと聞いたことがあるのですが、この作品は手捏ねですよね。

轆轤でつくることも良いのですが、僕の考えとはうまくリンクしませんでした。轆轤だと形が線対称になるという制約があるので、そこから出ようと思って、手捏ねをやっています。この作品の場合は、茶碗のような形のものを2つ用意して、上下にくっつけて成形しました。

今回の賞の審査員の先生から、持田さんは自ら土を採取したり、釉薬をつくっていると聞きました。

既に人がやって結果のわかっていることを、大学時代に自分がやる必要はないなと思っていて、知らないことを新しく見つけることを優先しているうちに、土や釉薬を探すことを始めていました。常になにか新しいことができないかなと思って探しています。藝大には、藝大釉という学校に代々伝わっているオリジナルの釉薬の調合もあるのですが、そのようなものもあまり使わないようにしています。

持田員暢「黒楽瓢箪 銘『rinze』」
持田員暢「黒楽瓢箪 銘『rinze』」(部分)

この作品はどのような土を使っているのですか?

この作品はそこまで土にこだわっていません。成形しやすい白い土に、割れにくいように混ぜものをしています。

白い土なのですね。つやつやした釉薬のかかっていない部分の土が黒いですが、これはなぜですか?

高温になった作品を窯から出し、「さや」という容器の中に入れて、藁などを入れて密封します。そうすると茶碗の温度によって、藁が燃えて炭素が出て、それをやきものが吸い込んで、このような黒色になります。

釉薬はどのようなものを使っているのですか?

埼玉の山に行って、自分でとってきた石を使っています。それをハンマーで砕いて粉状にして、さらにガラスや、一ヶ月ほど磨り潰した粉状の鉄を足して、さらに機械で砕いて、水を入れて釉薬にしています。石は、いろんな種類のものを混ぜています。いろいろと実験して、透明感のある珪石や長石、黒い鉄分の混ざっているものを使うと、窯で溶けてくれることがわかりました。この釉薬以外にもいろいろな調合で混ぜてストックしています。

同時にいくつも焼くのですか?

1個ずつです。学校にある楽焼窯に朝、自分で火を入れます。黒楽は楽焼としては高めの1050度で焼くのですが、なかなか温度が上がらなかったので、実際に作品を入れて焼き始めたのは深夜からです。1日かけて焼きますが、それでも登り窯を使って焼くよりもだいぶ短い時間です。

持田員暢

楽焼以外にもつくっているのですか?

以前は、象嵌(粘土を埋め込んで絵を表す)技法の作品をつくっていました。ただ、象嵌は、自分の行為がそのまま作品になるため、枠を超えないといいますか、自分の考えの先を行く作品ができませんでした。それで、このような楽焼を作りはじめました。自分で調合した釉薬で楽焼をつくると、想像を超えた色になったり、自分の意図と違うものができることがあります。もっと続けて行ったらコントロールできるようになるのかもしれませんが、今は予想通りにならないところに新鮮な面白さを感じています。

今後はどのように活動していきたいですか?

陶芸をやり続けたいです。土を使うことは基本にしつつ、もっと面白いことができれば、器に限らなくてもよいと思っています。目下、来年度の卒業制作をどのようなものにするか考え中です。

●持田員暢プロフィール

1993 年  埼玉県生まれ

2020年現在  東京藝術大学美術学部工芸科陶・磁・ガラス造形専攻3年

Instagram:mochida_kazunobu


取材・文/藤田麻希 撮影/五十嵐美弥(小学館)

※掲載した作品は、実店舗における販売となりますので、売り切れの際はご容赦ください。