美術館で鑑賞はしても、普段なかなか「買う」ことはないのがアート作品。
購入しても、どこに飾ればいいのでしょうか?
今回は、そうした疑問を感じながらも思い切ってアート作品を購入した藝大アートプラザのスタッフ、サッチー・鳩・安藤が、どんなアートを家の中のどこに飾るのがベストなのか、雑談してみました。
前回「どうしてアートを買ってみようと思った?購入して見えた「おもしろさ」を語り合う藝大アートプラザ座談会」に引き続き、熱く語り合う、「アートについてはほぼ素人たち」の様子をご覧ください。
サッチー……藝大アートプラザのディレクター。昔、銀行で働いていました。最近購入した作品は、アートプラザの企画展「Met“y”averse」に出品されていた菅谷杏樹さんのデジタルアート。
鳩……Webディレクター。美術大学卒。主にWebやSNSまわりを担当しています。藝大アートプラザでは重野克明さんの版画作品を購入。
安藤……編集者・Webディレクター。まったく芸術に関わりなく生きてきたけれど、最近生まれて初めてアート作品を購入。その詳細を「体験記」としてまとめました。
みんな、食器ってどうやって選んでるの?
安藤:素朴な疑問なんですけど、お二人は毎日使う食器がアーティストの手作りだったり一品ものだったら嬉しいですか? あるいは機能性などで選んでいますか?
鳩:うーん、私は食器には純粋に「使い勝手」だけを求めているわけではない気がします。特に器なんかは。
サッチー:食につながっていて身近なものだし、私はどちらかというと陶芸家の手作りや一点ものを買うことが多くて、家には量産品があまりないですね。
鳩:うちは量産品もあるけれど、毎日使うものだから、選ぶ時にはちょっと「ドキッ」とするものを選びたいなあと思います。
安藤:そうなんですね。僕はむしろ形にこだわり抜いたものを選びがちです。デザイン性や機能性の高さを感じると「おお!」と思いますね。
鳩:そんな安藤さんが、この藝大アートプラザで何か選ぶとしたら?
安藤:うーん、やっぱり上出長右衛門窯のコーヒーカップとソーサー(写真下)ですかね。
サッチー:あー、分かる!
安藤:持ち上げたときに裏側に「湯けむり美人」がいるっていうデザインが好きだし、機能的にも薄さや飲み口の加減が良さそうな気がします。鳩さんは?
鳩:使わないときもかわいい、という点で私は岡田杏里さんの酒器(写真下)が好きです。子供用にもいい感じ。
サッチー:手に取ってなじみやすそうな、ころんとした形ですよね。
安藤:作者がメキシコ在住なだけに、南米の雰囲気があるもいいですね。
鳩:陽気な感じがしますよね!
サッチー:器じゃないんですが、LIFE WITH ARTの中では、私は小林茉莉(まり)さんのアクセサリー(写真下)がすごく素敵だと思います。とても丁寧に考えられているなあというのが伝わってきて、身に着けるものとして欲しいなあと思う作品ですね。
トイレ、実はアートを飾る場所として最適説
安藤:いま藝大アートプラザは「日本中の家をアートだらけにする!」をテーマに掲げていますよね。岩田駿一さんのご自宅兼アトリエに取材で伺ったとき、本当に家中のふとした場所全部にアートが飾ってあって、むちゃくちゃおもしろかったです。
そのテーマを聞いて思い出したんですが、僕の実家のトイレって、母親がどこかで買ってきたなんか小さなオブジェとか絵とかが昔から置いてあるんですよね。
鳩:あ、わかる!(笑)。私の実家もそうです。
サッチー:私の実家もそうですね(笑)。
安藤:結構多くの人の「実家あるある」ですよね。実は世のお母さんたちは「アートコレクター」なんですかね?
鳩:逆に、「これ、トイレに飾ってください!」みたいな作品があったらどうなんですかね?
安藤:アーティストに失礼になる…かな? でも岩田さんのアトリエのトイレの入り口には、岩田さん自身が描いた絵がかかっていました(笑)
サッチー:でも、実際にアートプラザのお客さんでそういうものを探している方がいらっしゃいましたよ。もしかしたらそういう需要もあるかも。
安藤:お二人の家のトイレにも、なにか飾ってますか?
鳩:前はありましたね。置く場所がないから、って理由でしたが。でもきっとトイレって、自分の趣味全開のプライベート空間にできる、という側面もあると思います。
サッチー:「トイレ、実はアートを飾る場所として最適説」はあるかもしれませんね。
季節で変えてみると、すごくいい。
安藤:実家で思い出したんですが、うちは玄関に衝立があって、母が春と秋で絵柄を変えていますね。別になんとも思っていませんでしたが、季節でインテリアのアートを変えるというのは結構素敵なことなのかも。ずっと同じだと、視界に入っていても「見ていない」というか、どんどん気にしなくなってしまいますし。
サッチー:生花であれば必然的に変えますよね。私も実家では母が季節ごとにインテリアを変えていました。秋はもみじ柄のイメージとか。
鳩:季節で楽しむってアリですよね。洋風のお部屋に、あえて季節を感じられる日本画を、なんていうのもおしゃれですよね。
安藤:うん、おしゃれ! 季節ごとに壁にかけている絵を変えているお宅とか、憧れるわー。
サッチー:理想的ですよね(笑)。絵じゃないんですけど、わが家はポストカードを玄関に飾ってるかな。飾るものをたまに変えたりしています。
鳩:美術館に行った帰りにミュージアムショップでお気に入りの作品のポストカードを買って、「きょうはこれ」って楽しむのもいいですね。鑑賞したときのことを思い出せるし。
安藤:あと、単純に飾るスペースって大事ですよね。自分の家も含め、どの家にも絵を飾るにぴったりな壁面がいくらでもあるわけじゃないと思うんですよ。以前ドイツ人の盆栽アーティストが家の中に掛け軸を飾りたいんだけど、一般的な掛け軸の大きさは、たとえば洋風の暖炉の上とかには上下に長過ぎると言っていました。色紙サイズくらいの日本画があればいいのにって。
そういう意味でも、ポストカードなどの大きさは「スターター」としてはベストな気がします。
僕の・私の藝大アートプラザ未来像
安藤:これからアートプラザは、「日本中の家をアートだらけにする!」をテーマにしつつ、そのために「見る・買う・選ぶ」ができる場にしていこうと、編集長の高木さんが話していました。二人がもしアートプラザの店長だったらこの3つを軸にしてどんなギャラリーにしていきますか?
サッチー:私はアートプラザ全体を一つの家みたいにしたいですね。リビングも書斎も、先程のトイレもエリアごとに「こんなふうにアートを飾れます」といったように提案できたら楽しいなって。「日本中の家をアートだらけにする」というテーマも、私はいろいろな入り口があるといいなと思っていて、「これなら自分の部屋にも合いそう」とか、具体的なシーンを想定したギャラリーにできたらおもしろいんじゃないかなあ、と。
鳩:そういう形にしてみると、自分の事として考えやすいですよね。私は「ギャラリー」っていうと緊張感があるから、壁中にステッカーが並んでいたりする100円ショップとか駄菓子屋みたいにガチャガチャとした雰囲気にしてみたいですね。
安藤:「藝大アートプラザ七福神」のステッカーも人気だし、これからステッカー作品を増やしていけば可能かもしれないですね! 僕はオンラインと連動させたいなという気持ちがあります。すでにいろいろな作家が取り組んでいるバーチャルを使ったアート自体も面白いと思うし、ギャラリーとしても購入をオンライン化するといったことができればと思います。実際、バーチャル空間と連動したギャラリーってあんまりないと思うんですよね。そうすればアーティストとのやり取りもバーチャルでできたりとかしそうだし、おもしろそうだなと思います。
サッチー:いずれにせよ、「絵を購入する!」みたいにあまり身構えずに、小さなアートを自分の好きな空間にちょっと置いてみたり、使ってみるという楽しみ方を提案してきたいですね。