展覧会のなかで出会った、よくわからないけれど惹かれる魅力的な絵、なぜこんなものを描いたのか疑問に思うような不思議な絵、それでいて解説パネルには画家とタイトルと制作年代くらいしか書いてない、そういった作品に出会ったとき、本書が鑑賞の助けになれば幸いである。
これは、壺屋めり氏による著書『みるみるわかる「西洋絵画の見方」』の一文です。この言葉を読んだ私は、心の中でガッツポーズ! 有名な西洋絵画の展覧会があると聞けば我先にと足を運ぶけれど、そのたびに不完全燃焼で帰ってくる「万年西洋絵画初心者」の一人だからです。
絵画に対して「なぜ?」と疑問をもっていても、解決の糸口すら見つからない。そんな悩みに寄り添い、何倍も西洋絵画を楽しませてくれる一冊があるんです!
『みるみるわかる「西洋絵画の見方」』ってどんな本?
『みるみるわかる「西洋絵画の見方」』では、美術史のへそとなる、ルネサンス~バロック時代までを解説しています。15世紀から17世紀のイタリア絵画を中心に、西洋絵画の規則・枠組みを、絵画の歴史の流れにそって、「注文する」「制作する」「体系化する」「鑑賞する」の4つのテーマで概観。これまでの概説書とは違う本書のおすすめポイントをご紹介します。
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複雑な「西洋絵画」のバックグラウンドがみるみるわかる
伝統的な西洋画を読み解くにはキリスト教の知識が必要です。これを聞いただけで、キリスト教といえばクリスマスくらいしか縁のない方は挫折しそうになるかもしれません。しかし『みるみるわかる「西洋絵画の見方」』は、著者・壺屋めり氏によるかわいくてわかりやすいイラスト付きで解説されているのです!!
また、当時の政治や都市などのコミュニティ、絵画の発注主、どのような場所で絵画が観られていたのか……などなど、知っていると絵画が何倍も楽しくなる知識もイラスト付きで解説。西洋絵画初心者でも感覚的に捉えることができます。
美術館で近代以前の西洋美術を鑑賞するときに覚えておくといいかもしれないこと pic.twitter.com/zxfV2LZnX8
— 壺屋めり (@cari_meli) July 19, 2022
ため息が出るほど美しい作品図版
豊富で美しい作品図版も本書の魅力のひとつです。担当編集者によると「絵画を美しく印刷することにもすごく力を入れているんです」とのこと。色合いが鮮やかなだけでなく、細かな部分まで緻密に表現されており、正直「2,200円の書籍のクオリティではないのでは?」と面食らってしまうほどでした。
壺屋めり氏の解説とともに図版を見ることで、これまで抱いていた疑問に「そうだったのか!」と合点がいくことも。本書をパラパラとめくって、気になる絵画の載っているページから読むのもおすすめです。
論理的に知れば、西洋絵画は誰にでもわかる!
「論理的思考」「はい、論破」なんて言葉を良く聞くようになりましたが「そもそも論理とは……?」と論理アレルギーをお持ちの方も多いのではないでしょうか(私です)。特に絵画においては、生まれ持ったセンスや感性が大切なのだと思いこんでいました。しかし、西洋絵画は論理的に知ることで、誰でも絶対にわかるようになるというのです。
疑心暗鬼で本書を読んでみたところ、今まで「なぜ?」と思っていたことが、少しずつ氷塊していきました。さらに、絵を描いた(描かせた)目的や、その裏にある社会的意味などを理解することで、当時の西洋の人々がどのように絵画を見ていたのかということもわかるようになってきたのです。いつの間にか気分はヨーロッパの貴族や市民に!
実は、日本で西洋絵画の美術史を書いた本は滅多にないのだとか。これまで展覧会で不完全燃焼を起こしていた方も、美術館へ行く前に『みるみるわかる「西洋絵画の見方」』を読んでおけば、何倍も絵画が楽しめるようになるはずです。
書籍情報
『みるみるわかる「西洋絵画の見方」』
著/壺屋めり
定価:2,200円(税込)
A5判/160頁
小学館
ISBN 9784096822937
著者紹介
壷屋めり(つぼや めり)
美術史研究者。1988年生まれ。2011年 ニューヨーク大学教養学部美術史学科卒業。2016年 京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。2018年 博士号取得(人間・環境学)。2016年4月から2019年3月まで、日本学術振興会特別研究員として東京藝術大学美術学部芸術学科に所属。
現在、東京大学経済学研究科特任研究員。本名・古川萌(ふるかわ もえ)。著書に『ルネサンスの世渡り術』(2018年 芸術新聞社)、『ジョルジョ・ヴァザーリと美術家の顕彰 16世紀後半フィレンツェにおける記憶のパトロネージ』(古川萌 2019年中央公論新社)。西洋絵画の専門知識を分かりやすく伝えるイラストが、ツイッター @cari_meli をはじめWebメディアや展覧会の解説パンフレットで大人気。