藝大の学科・専攻とは?「最後の秘境」東京藝術大学の内部に迫る!

ライター
あきみず
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秘境。世に知られていない土地。
そんな場所が都会のど真ん中にも今なお点在しています。

東京は上野、そして足立区千住、茨城県取手市、神奈川県横浜市。「最後の秘境」はここにあります。
その名は東京藝術大学。

この秘境の内部はいったいどんな風になっているのでしょう?
では、マップ片手に分け入ってみましょう!(秘境にマップがあっていいのだろうか……)

東京藝術大学は2つの学部に分かれている

秘境・東京藝術大学は性質の異なる2つのエリアに分かれています。
美術を専攻する「美術学部」と音楽を専攻する「音楽学部」。

まずは美術学部に足を踏み入れてみましょう。

美術学部

美術学部には7つの学科があり、絵画科と工芸科はさらにそれぞれの専攻・研究室に分かれています。

絵画科

絵を描く絵画科は、使用する画材や技法などによってさらに分かれています。

日本画専攻


日本で古くから描かれてきた「日本画」を学びます。

「日本画」を支え、成り立たせてきた素材や美意識がどのように生み出されてきたか、自国の伝統文化への深い理解と考察を深めていきます。

油画専攻


油絵具を使用した西洋画を主軸に据えて学びつつ、写真、映像等、多様なメディアまで拡張された表現に対する研究も行っていきます。

伝統的技術から先端技術に跨がる様々な表現媒体を駆使して表現していくことを目指します。

版画研究室


銅版、リトグラフ、木版、スクリーンプリントの4種類の実習を行い、歴史的、社会的背景も踏まえた創作・研究を深めていきます。

また、学部2年間の版画基礎教育を行っており、油画専攻3年次からの移行、所属も受け入れています。

壁画研究室


フレスコ・モザイク・ステンドグラスの技法を学びます。油画1年次選択科目授業として、また、多くの専門的な集中講義も開設されています。

歴史的継続性を重視する一方、現代の社会に対応する新たな理論や表現を研究、模索する方向性も重視しています。

油画技法・材料研究室


自己表現としての油画制作を主軸に据えた研究室で、絵画材料、絵画技術の側面から「油画とはどのようなものか」「油画の成立はどうであってどのように展開してきたのか」といった課題についても実技実習、講義、演習を通して理解を深めていきます。

油画専攻1年次をおもな対象として、様々な講義も行っています。

彫刻科

木や石など、さまざまな素材を用いた彫刻を学びます。

幅広い造形の研究に重点をおき、過去の美術の歴史や日本美術の伝統を踏まえながら世界に視野を広げ将来の美術を展望できるような豊かな感性を持つことを目指します。

工芸科

工芸、とひと口に言っても、金属・漆・陶芸・ガラス・染織など様々なものがあります。

工芸研究室


工芸科の1年次は工芸研究室に在籍し、1年終了時に学びたい分野を自身で選択して2年次から各分野に分かれていきます。

彫金専攻


「彫り」「打ち出し」「象嵌」「接合」「色金」「七宝」等の伝統技法を基礎課題として学びます。

彫金技法とジュエリーの分野があり、さらに「装身具」「クラフト」「オブジェ」などで自己表現を探っていきます。

鍛金専攻


金属の塑性加工法である絞り技法・鍛造技法、接合技法である溶接・ろう付けなどの伝統技法から、機械切削加工など現代の金属加工技術まで幅広く学びます。

金属による野外モニュメントからオブジェ、カトラリー、装飾品にいたるまでの幅広く自由な表現力を養い、卒業生も多種多様なジャンルで活躍しています。

鋳金専攻


金属を溶かして型に入れ、制作を行う「鋳金」を学びます。

鋳金の教育、研究、制作、人材育成と共に、銅像や建築物などの受託制作、複製制作、修復、調査研究などの文化財調査修復にも多く携わっています。

漆芸(漆工・木工)専攻


天然の素材である漆を塗料、接着剤、造形素材、絵画材料として多角的に研究・学習します。

漆芸作家、教育者、研究者などの幅広い人材育成を目指しており、漆芸研究室内の専用ギャラリーでは研究室の所有する豊富な道具・材料等の展示公開も行っています。

陶芸(陶・磁・ガラス造形)専攻


陶器・磁器の陶芸分野とガラス造形分野があり、大学院生を中心とした取手校地では、設計から始める築炉を学ぶこともできます。

素材の新たな組み合わせや技法の研究など、他にはない特徴的なカリキュラムとなっています。

染織専攻


伝統の染織技法を基本として、現代の技術や感覚と融合することで新たな繊維造形の可能性を探求します。

染織と繊維や色彩に関する豊富な知識と高い造形力を身につけることで、デザイナーやアーティストとして幅広く活躍することを目指します。

デザイン科

「生活の用と美」「伝統と革新」の理念に基づき、生活文化の原動力としてのデザインを多角的に学んでいきます。

建築科

1学年の定員が学部15人・大学院修士16人という少人数制で、建築設計に主軸を置いて学んでいきます。

国内の他大学建築学科の多くが属する工学系ではなく美術系に属しており、建築家の養成を目指す唯一の国立の教育機関となっています。

先端芸術表現科

写真、工作、コンピュータ、映像、音、身体などさまざまな分野のスタジオを核として、文化人類学や社会学の達成を踏まえたフィールドワークにも力を入れています。

美術および隣接する表現を、幅広く総合的に学ぶことを目指し、多様なバックグラウンドを持つ常勤教員とともにメディアを横断しながら表現の可能性を探っていきます。

芸術学科

美術理論・実技兼備の人材の養成を目的とした学科で、美学・美術史の充実に重点が置かれています。

この学科からは美術館学芸員、美術批評家、研究者、ジャーナリストなど、美術に関わる幅広い分野に多くの優れた人材が羽ばたいていっています。

音楽学部

もう1つのエリアが音楽学部。
音楽学部にも美術学部と同様に7つの学科があり、器楽科はさらに6つの専攻科・講座に分かれています。

作曲科

作曲について広く学べる学科です。
ヨーロッパの伝統的音楽理論の研究、戦後の新たな創作様式など表現法と技法の研究を行い、多彩なジャンルを手掛けていきます。

声楽科

声楽家としての基礎的技術と知識を学び、演奏家としての国際性と音楽の果たす役割の重要性についても考えていく学科です。

器楽科

器楽科は楽器を使って演奏する学科です。器楽科の中でさらに各専攻に分かれています。

ピアノ専攻


国内外で活躍できるトップレベルのピアノの演奏技術を学びます。

オルガン専攻


ルネッサンス期から現代まで約700年にわたるオルガンの幅広いレパートリーを学びます。

弦楽専攻


弦が張ってある弦楽器の演奏法を学びます。
ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、ハープの5専攻に分かれています。

ソリストとしてのみならず、アンサンブルにも力を入れています。

管楽器・打楽器専攻


管楽器専攻はフルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、サクソフォーン、ホルン、トランペット、トロンボーン、ユーフォニアム及びチューバの10専攻に分かれています。
打楽器はティンパニーを主としてパーカッション及びマリンバアンサンブルなど、すべての打楽器に精通することを目指します。

室内楽講座


音楽を学ぶ上で原点ともいえる室内楽を研究し、アンサンブル感覚を磨く講座です。

古楽専攻


主にバロック時代の音楽を中心とする1500年代半ばから1800年頃までの音楽を、その時代にふさわしい方法で演奏することを学びます。2000(平成12)年に設置された新しい専攻です。

チェンバロ、リコーダー、バロックヴァイオリン、大学院ではさらにバロックチェロ、バロック声楽、フォルテピアノ、バロックオルガンを学ぶことができます。

指揮科

将来プロの指揮者としてオーケストラ音楽・オペラ・バレエ・オラトリオなどを幅広く指揮するための勉強を行います。

音楽的、芸術的に優れたリーダーシップが求められるため、実技レッスンの他に楽曲・楽書の研究など、指揮者になるための様々な知識も学んでいきます。

邦楽科

日本の伝統音楽・伝統芸能を学べる学科で、三味線音楽(長唄、常磐津、清元)、邦楽囃子、日本舞踊、箏曲、尺八、能楽、能楽囃子、雅楽の各専攻に分かれます。

専攻実技と演奏理論だけでなく、専攻外の各種邦楽、洋楽、ソルフェージュなどの実技を必修又は選択により履修していきます。

楽理科

音楽学(西洋音楽史、日本・東洋音楽史、音楽民族学、音楽美学など)を研究していく学科です。

音楽の学問的研究およびそれに関連した仕事に携わっていく力をつけていくため、音楽の実技や音楽理論・外国語も必修とされ、音楽の実践に密着した研究が求められます。

音楽環境創造科

従来の枠をこえた観点で音楽芸術の創造し、音楽・文化・社会の関わりを考え、音楽を中心とした新しい文化環境創造を目指す学科で、2002年に設立されました。

 具体的には、
・音楽や音響に関する研究
・映像、身体、言語、空間、メディアなど、音楽に隣接する表現分野の研究
・コンピュータによる音響作品の創作や、映像、身体表現、メディアのための音楽制作
・アートマネジメントや文化社会学、文化研究
など。

秘境はジャングル!?

なかなかに入り組んだ構成になっています……。講座や研究室など、専攻を超えて学べる機会も設けられているのですね。

ちなみに、藝大祭名物の巨大神輿は、美術学部と音楽学部が1科ずつタッグを組んで、毎年それぞれ超大作を作っているのだとか。学部を超えた制作は、どれも息を吞むクオリティ。観る機会があれば、ぜひ実物を目の当たりにしてみてください!

参考:東京藝術大学公式サイト

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