主夫アートライターの“かるび”こと齋藤久嗣と申します!
12月13日から始まった常設展はもう味わって頂けたでしょうか?展示作品全てをその場で購入して原則持ち帰ることができる藝大アートプラザの常設展、好評開催中です(入場無料)。展示スペースのほぼ全てを使っての展示、ぜひ楽しんで頂ければと思います!
さて、常設展をザーッと見ていくと気づくのが、動物をモチーフにした作品が非常に多く展示されているということ。特に今回の常設展では、うつわやアクセサリーなど日常生活の中で気軽に使えるものが多いので、猫やうさぎといった小動物がモチーフになった作品が多めなのかも知れません。
そこで、今回は「動物」がフィーチャーされている作品をピックアップしてご紹介したいと思います!絵画や彫刻はもちろん、金工、七宝、ガラス、陶磁器、レターセットなど、種類も様々。かわいい小物から、あっと目を引く個性的なオブジェまでバラエティ豊かな作品が揃っているんですよ。
それでは早速見ていきましょう!!
やっぱり猫は大人気!怖い猫、かわいい猫、いろいろ揃っています!
動物といえば、一番人気はやっぱり「猫」です!
藝大アートプラザでも、2019年春に開催した「藝大の猫展」は大人気でした。今回の常設展でも、たくさんの作家さんが「猫」をテーマに作品を制作しています!
まずご紹介したいのが、日本画家・鹿間麻衣さんが描いた「Anemone」という絵画作品です
鹿間麻衣「Anemone」
アネモネのやわらかな瑠璃色で彩られた落ち着いた絵画作品です。でも、よーく見たらここに猫がたくさん隠れているんです。アネモネの花の間から、ちょこんと顔を覗かせる3匹の猫がキュートな、遊び心満載の作品です。
続いて日本画作家をもうひとりご紹介。こちらの2作品を描いたのは日本画家・田村幸帆さん。仲良く犬と猫が並んでいますね。リラックスした格好でくつろいだ様子の動物たちが、岩絵具の優しい色使いで描かれています。下から御主人様(?)を見上げるゆるかわいい表情にも癒やされました。
田村幸帆「Have fun」(左)「At home」
こちらは、ガラスで制作された猫のリングホルダー。お洒落ですよね!!
添田亜希子「猫リングホルダー」
清涼感のあるガラス作品を得意とされる添田亜希子さんは、藝大アートプラザで過去にも出品されたことがあるリングホルダーを出品。ぴんと立ったしっぽが印象的です。透明感のあるタイプとマットな質感のタイプの2種類用意されていますが、どちらもインテリアにぴったりですよね。キーホルダーやヘアバンドなど、リング以外にも様々な小物に使えそう。
もう一つ猫の作品をご紹介しておきましょう。
こちらは、伝説の神獣・白虎をモチーフとした木彫作品。大きく口を開け、眼光鋭く正面を見据える威厳あるタイプもれば、ちょっといたずらっこのような表情を浮かべるタイプもあって、よーく見ると4つともそれぞれ表情が違います。
近正匡治「白虎の香合」(左2点)「化け猫?の香合」(右2点)
作品なので当然なのですが、1点1点手作りで丁寧に仕上げられており、彩色されていない部分の楠の木目が木彫ならではの生き物のぬくもりを感じさせますよね。玄関に飾れば、魔除けのお守りとして活躍してくれそうです。
かわいい小動物の定番「うさぎ」も多数出品されています!
さて、ネコの次に多かったのが「うさぎ」です。小動物らしい可愛さやコミカルさを表現するのにぴったりな小動物ですよね。まず、窓際でひときわ目立っていたのがこちらの作品。
柴田早穂「かけるウサギ」
足をいっぱいに広げ、引き締まった体つきの野生のウサギが飛び跳ねるような鋳金作品。古代遺跡からの出土品のように、素朴でゆるやかな造形が面白いですよね。
本作は、「鋳造」という技法で制作されています。蜂の巣からとれる蜜蝋と松の木からとれる松脂を1対1で混合し、お湯の中で手でひねりながら原型を作り、鋳造技法で生み出されています。
柴田早穂「かけるウサギ」(部分)
こちらのインタビューでも語られている通り、ゆるかわいい造形の中にも、「生」と「死」という深いテーマが織り込まれた作品。でも、「あっけらかんとしたほの明るい乾いた悲しさを表現しようとしている」とご本人が語っている通り、悲壮感よりは素朴な可愛さが感じられました。
続いては、木工家具作家として活躍中の岡田敏幸さんをご紹介。非常に手が込んだ作品ですよね。最下部にあるつまみを回転させると、歯車が連動して二匹のウサギが交互に餅をつくという遊び心満載の作品です。これは凄い!!
岡田敏幸「うさぎのネックレス」
複雑に組み合わさったギアがぐるぐる回る構造がむき出しになり、手彫りの跡が残るうさぎたちがコミカルに永久運動する様子はいつまでも見飽きません。こちらに岡田さんのインタビューも掲載されましたので、合わせてチェックしてみてくださいね!
岡田敏幸「うさぎのネックレス」(部分)
水辺や海の生き物も大人気です!
山田勇魚「帰港」
さて、こちらは付喪神(つくもがみ)をテーマに活動している人気の立体造形作家、山田勇魚さんの代表作のひとつ。なめらかな海の「青」が美しい、透明感のある樹脂で作られたクジラの中には、少し寂しげなシルエットの戦艦が封印されており、独特の世界観が楽しめます。
このクジラ、少し高さや距離など、見る角度を変えて見てみると、色合いや戦艦の見え方が全然違ってくるので面白いんですよね。
山田勇魚「帰港 マッコウクジラ」
ぜひ、いろいろな見え方を楽しんでみてくださいね。山田勇魚さんのインタビューもこちらで読めます!
さて、続いては「和」のテイストが美しい七宝で作られた作品を見てみましょう。
村中恵理「夏花-金箔葉隠黒出目-」
遠目から本作を見ると、第一印象は日本画の作品に見えます。でも近づいてみると、七宝で制作されていることに新鮮な驚きがあります。
本作を制作したのは、自宅に本格的な工房を構え、技巧的で美しい有線七宝や硝子胎七宝を得意とする村中恵理さん。金魚と一緒に描かれた金の蓮や、背景の淡いパステルカラーの花輪模様が美しく、いつまでも見飽きない作品です。
続いては、茶道具として作られた渋いやきものをご紹介。
中村弘峰・花井健太「苔玄釉 亀蓋置」
彫刻専攻修了後、人間国宝の福島善三氏に師事し、鳥取で花輪窯を開窯した花井健太さんと、 アスリート博多人形を制作することで作品が人気の博多人形師・中村弘峰さんのコラボ作品。花井さんが独自に開発した深緑色の釉薬・苔玄釉(たいげんゆう)の渋い色合いが素敵でした。非常にユニークな形の蓋置は、茶会で非常に映えそうです。
ユーモラスな表情が和ませてくれる「鳥類」
コミカルな表情で心和ませられる面白い作品が多かったのが、「鳥類」をモチーフにした作品です。
根岸一成「モリのオイワイブクロ」(左:カワセミ、右:フクロウ)
こちらは、絵本の挿絵のような優しい作風が素敵な、根岸一成さんの作品。リトグラフで印刷された手作り感あふれるお祝い袋。北欧テイストにも通じる、ちょっとスモーキーでおだやかな色合いが非常に気に入りました。結婚式の熨斗袋などに使ったら、非常に喜ばれそうですよね。
小林佐和子「ぬくどり」
こちらは人気陶芸家・小林佐和子さんの陶筥(とうばこ)。ボディの部分がフタになっています。色土を何層も塗り重ねて、乾燥後に掘り下げる「彩層」というオリジナル技法で陶器表面に独特の色合い・質感が表現されています。発色が非常に良いので、遠くから見ても非常に目立っていました。
また、表面の手触りも微妙に凹凸がつけられていて、触っても楽しいのが小林さんの作品の特徴。ぜひ、手にとってじっくりチェックしてみてくださいね。百貨店やアートフェアなどに出品されると即完売となる人気作家さんなので、ぜひお早めに!
美術展でもおなじみの超絶技巧作品も登場!!
満田晴穂「自在閻魔蟋蟀<雄>」(右下)、「自在閻魔蟋蟀<雌>」(左上)
なんと今回の展覧会には、有名な自在置物作家・満田晴穂さんの作品も登場! 実物大のエンマコオロギ雌雄一組が出品されています!
満田晴穂「自在閻魔蟋蟀<雌>」
それにしても、凄い出来栄えですよね。原寸大で制作された銅・真鍮製の「えんまこおろぎ」は、細部まで丁寧に再現され、まるで生きているかのようなリアルさです。ガラスケースの中に入っているので直接触ることはできないのですが、自在置物として手足はリアルに可動するように作られています。わずか3cmと非常に小さな作品ですが、本物そっくりのまさに超絶技巧なのです。満田さんのTwitterで貴重な製作中の設計図がアップされていますが、制作するのがどれだけ大変なのかよくわかります。
(価格は伏せますが)コレクターには嬉しいお値段で買い求めることができます!12/24時点でまだ残っていますので、ファンの方はぜひ!写真撮影もOKです!
まとめ:個性的なアイデアが満載の動物作品。ぜひ、SNSでシェアしてくださいね!
三上想「カトラリーレスト」(とり、うま、ねこ)
ほかにもまだまだ魅力的な動物をモチーフとした作品がたっぷり用意されています!店頭に出ている以外にも、まだまだ豊富に在庫が用意されていますので、ぜひ一度気に入った作品があるかどうかチェックしてみてくださいね!大事なことなのでもう一度最後に強調しておきたいと思いますが、藝大アートプラザの常設展は、入場無料&全作品がその場で購入可能です!
さて、今年も1年間本当にありがとうございました。12月27日~1月6日まではお休みを頂き、年始は1月7日から元気に営業を行います。引き続き年が明けても常設展をよろしくお願いいたします!
藝大アートプラザでは、2020年もたくさんの企画展を予定していますので、ぜひ楽しみにしていてくださいね!
西川昇真さんの動物を描いた絵画作品
藝大アートプラザ 常設展
会期:2019年12月13日~2020年1月19日
常設展特集ページ: https://artplaza.geidai.ac.jp/permanent_exhibition/
取材・撮影/齋藤久嗣 撮影/五十嵐美弥(小学館)
※掲載した作品は、実店舗における販売となりますので、売り切れの際はご容赦ください。