神様はどんな姿かたちをしている? 企画展「藝大神話ーGEISHIN」後期

ライター
藝大アートプラザ編集部
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作品紹介

2023年6月3日(土)から7月23日(日)にかけて前後期で開催される企画展「藝大神話ーGEISHIN」

神話をモチーフにした創作、神そのものを表現した作品、神の存在への問いかけ、世界、宇宙——。藝大アーティストたちによってさまざまな視点で紡がれた神々の物語を堪能できる企画展です。

2023年7月1日(土)〜7月23日(日)は後期展示として12人のアーティストの作品を展示・販売しています。

この記事ではそれらの作品を写真とともにご紹介します。


※コメントは、Web担当による解説です。
※並びは順不同です。
※写真にない作品もございます。ぜひ現地で全ての作品をご覧ください。

会期:2023年6月3日(土)〜7月23日(日)

前期:2023年6月3日(土)〜6月25日(日)
後期:2023年7月1日(土)〜7月23日(日)

営業時間:10:00〜18:00

定休日:月・火曜休 
※祝日・振替休日の場合は翌営業日が休業

入場料:無料

鍛金という行為が孕む神聖性

今井 貴絵
工芸の分野である「鍛金」によって作品を手掛けている作家は、金属を叩いたり傷つけたり変形させたりする行為自体が、ある種の「神聖を孕んでいる」と考える。兎(うさぎ)の頭に生えた椿、その椿から落ちた花には、生と死の対比が感じられる。



1995年 東京都生まれ
2018年 多摩美術大学美術学部工芸学科金属専攻卒業
2020年 東京藝術大学美術研究科工芸専攻鍛金領域修士課程修了
2020年 個展「花遊びのエラー」galerieH/東京
2021年 個展「嚥下の浄」石川画廊/東京
2023年 東京藝術大学美術研究科工芸専攻鍛金領域研究生
2022年 個展「吐く、生命」ICHIGOYA 谷中/東京
2022年 個展「排出のエラーたち」旧平櫛田中邸/東京
2023年 東京藝術大学美術研究科工芸専攻鍛金領域 研究生修了
2023年 東京藝術大学美術研究科美術専攻工芸研究領域鍛金 博士後期課程在籍

雨の字から成る雨

大谷 陽一郎
雨が流れているように見えるのは、一つ一つが「雨」などの漢字をランダムに配置することで表現したもの。「雨」の字は甲骨文字の時代からその形をほとんど変えておらず、アーネスト・フェノロサは漢字を「思想絵画(thought-picture)」と呼んだ。そうした漢字同士が、鑑賞者の視線の中で出会い、インスピレーションが生まれることを作者は意図としている。


1990年 大阪府生まれ
2018-2019年 清華大学(北京)交換留学
2023年 東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程 修了

2018年 サロン・ド・プランタン賞
2020年 DenchuLab.2019(旧平櫛田中邸アトリエ、東京)
2021年 絵本『かんじるえ』(福音館書店)出版
2021年 孤帆の遠影(MONTBLANC銀座本店、東京)
2022年 PRIVATE HOUSE 生きられた家(練馬の日本家屋、東京)
2022年 野村美術賞

細胞が宿す「神々しさ」

小川 貴寛
藝大を経て、現在は医学生として学んでいるという異色の経歴を持つ作者。研究室で観察したiPS細胞がさまざまな細胞へと分化していく様子や、心筋細胞の塊が拍動している様子に「神々しさ」を感じたという。3つの作品からは人間の体、細胞が宿す深い神秘性が想像できる。


1989年 東京都生まれ
2014年 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業
2018年 東京医科大学医学部医学科入学
2023年 第2回「絵と言葉のチカラ展」佳作賞(文:中川朝子さん)

個が抹消され神話化した「女」という記号

VITALFISH
雑誌の表紙を飾るグラビアアイドルの写真は「女性像の怪物に思える」と話す作者。か弱くて、従順で、エッチで、かわいい。個性が抹消され、「消費されるために形作られた『女』という記号は、一種神話的」でさえあると考える作者は、女性の表情を単純化させることでそれを表現する。


1996年 東京都に生まれる。14歳までを清瀬市の芸術家村「ソイソース・スタジオ」で過ごす。
2016年 東京藝術大学美術学部工芸科に入学、鍛金を専攻。
2022年 第70回 東京藝術大学卒業・修了作品展出展
    同大学を卒業
 絵画制作を始める
 藝大アートプラザ「MET”Y”AVERSE~メチャバース、それはあなたの世界~」出展
2023年 「痕跡と生きる~築90年の元蕎麦屋さんで展開するアートと食の企画展~」開催

人々の多様性に受けたインスピレーション

菅本 智
藝大を経て大手テーマパークで衣装の制作などに従事した経歴を持つ作者。その後ニューヨークのアーティスト・イン・レジデンスに参加した際、「人々のあふれる多様性にインスピレーションを受け制作した」のがこの作品。白と黒のベースで表裏を成している。


2013年 東京藝術大学デザイン科卒業
2013-2017年 株式会社オリエンタルランド
2019年 菅本智個展「Her Strings」ESCADA六本木ヒルズ店(六本木アートナイト2019)
2019年 菅本智個展, Orie Art Gallery
2019年- Double Dreams, BnA Alter Museum
2020年 Independent Tokyo 2020 審査員特別賞受賞
2021年 Kunstraum LLC Artist-in-Residence
2022年 Stillness and Movement, YUKIKOMIZUTANI GALLERY
2023年 NARS Foundation International Artist Residency Program SeasonⅡ

脱活乾漆の技法で

天明 里奈
作者は自らを乾漆彫刻家と定義する。彫刻表現に見えるが、粘土で像の原型を作り、その上に麻布などを漆で張り重ねて仕上げる脱活乾漆(だっかつかんしつ)の技法で制作されている。「この作品をこの世界に連れて来れてよかった」とは作者の弁。


1986年 千葉県生まれ
2009年 個展「とうめいなものたち」東京藝術大学大学会館
2010年 個展「続、とうめいなものたち」GALLERY b.TOKYO
2011年 安宅賞受賞、個展「Willowy -たおやかに-」GALLERY b.TOKYO
2012年 第6回秀桜基金留学賞受賞、ドイツ・ベルリンにて2年間の滞在制作
2014年 個展「solo exhibition」ギャラリー椿/GT2
2016年 東京藝術大学大学院美術研究科修士課程 工芸専攻漆芸領域修了
2018年 個展「欠損と境界」ギャラリー椿/GT2
2020年 個展「花の咲く前に」ギャラリー椿/GT2
2023年 個展「微熱を飼う」ギャラリー椿/GT2

バナナの皮を千年保存する

中川 陽介
プラスティネーションという特殊な保存技術を用いて、バナナの皮をこの姿のまま千年以上保てるようにした作品。バナナのラテン語学名「Musa」は、Musicの語源でもある古代ギリシャの美の女神「ムーサ」と同じだという。バナナの皮の「ポーズ」は、どことなく横たわるビーナスを想起させる。


1982年 佐賀県生まれ
2005年 東京藝術大学先端芸術表現科卒業
2014年 個展「STAND! ALONE!!」開催
2015年 グループ展「きっと、だれもが、だれかに、恋をする。」参加
2015年 コレクション展「private,private わたしをひらくコレクション」参加
2017年 グループ展「MERZ」参加
2018年 「遠賀川神話の芸術祭 Hachiman-The Legend-」参加
2020年 グループ展「EDITION BOX -VIDEO WORKS as MATERIAL-」企画
2023年 グループ展「遺伝的美意識」参加
現在東京藝術大学美術学部後期博士課程在籍

皮肉、あるいは神話

野田 怜眞
バナナのモチーフは、近年は現代アートへの皮肉を表すものとして扱われがちだが、作者は人の死や命にまつわる「バナナ型神話」に着目し、自然のバナナが持つエネルギーを、奈良時代から仏像に用いられてきた脱活乾漆技法を使い、自身の作品世界の中で表現したという。スタッズは仏像の光背から着想を得ている。


1995年 愛知県一宮市生まれ
2021年 東京藝術大学修士課程漆芸専攻修了 安宅賞、漆工奨学賞受賞
    金沢卯辰山工芸工房入所
2022年 第60回記念日本現代工芸美術展入選 現代工芸大賞受賞
    第78回金沢市工芸展 北隆放送社長賞
    金沢卯辰山工芸工房研修者展 同工房賞受賞(2022/2023)
2023年 第79回金沢市工芸展 金沢市工芸協会会長賞受賞
    個展 野田怜眞-Vanana- 靖山画廊/東京

河原の石に、神は宿っているか

村岡 佑樹
徳島県神山町の河原で拾った石を、型に取り、焼き物にした作品。自然の中に存在する美をどう捉えるべきか、その美の中にこそ神は宿っているのではないかという思索を呼ぶ。手の焼き物は小指の爪にハートを書くという恋の願かけに着想を得たものだという。


1993年 広島県生まれ
2016年 東京藝術大学美術学部彫刻科卒業
2018年 東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了
2020年 「藝大の猫展2020」(藝大アートプラザ/東京都)
2021年 「ストレンジャーによろしく」(金沢アートグミ、他13会場/石川県)
 「SDGs×ARTs展」(東京藝術大学大学美術館/東京都)
2022年 「Rebuilding」(染の里おちあい・BaBaBa/東京都)
 個展「The Apple of My Eye」(スタジオDO-PA-MINE/東京都)
 個展「La Pomme d’ Eve」(ベルトランラーシェ・ル・ブルターニュ/東京都)
2023年 個展「CONNECT THE DOTS」(慕何芸術ーMUHE ARTー/高雄市,台湾)

女神の花園に出くわした巫女

春田 紗良
世界の神話や女神像などから着想を得て、それらを自然の中に配置した「花神」などの4点が出品されている。そのうちの一つ「Flower Garden」について、作者は「ある時巫女は、女神の花園に出くわした。ふらりと入り込んだ草むらの中に、見たこともないような美しい花の女たちが咲き乱れていた」とその物語世界を表現する。


2017年 東京藝術大学絵画科油画専攻卒業、台東区長賞、O氏記念賞
    神山財団芸術支援プログラム奨学第4期生
    小さな絵画展/藝大アートプラザ
2019年 東京藝術大学大学院美術研究科修士課程絵画(油画)専攻修了、
     修了制作帝京大学作品蔵、
    公益財団法人佐藤国際文化育英財団佐藤美術館奨学生
    神山財団第五回卒業成果展 「優秀賞」
2022年 コミテコルベール2022/東京藝術大学美術館
2023年 東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程美術研究領域(油画)専攻修了

2017年 東京藝術大学絵画科油画専攻卒業、台東区長賞、O氏記念賞
    神山財団芸術支援プログラム奨学第4期生
    小さな絵画展/藝大アートプラザ
2019年 東京藝術大学大学院美術研究科修士課程絵画(油画)専攻修了、
     修了制作帝京大学作品蔵、
    公益財団法人佐藤国際文化育英財団佐藤美術館奨学生
    神山財団第五回卒業成果展 「優秀賞」
2022年 コミテコルベール2022/東京藝術大学美術館
2023年 東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程美術研究領域(油画)専攻修了

「写生とは儀式のようなもの」

山田 雄貴
バラをモチーフに、日本画の技法で描く一連の作品だけでなく、その素描も展示(素描は非売品)している。スマホなどでデジタル写真が簡単に撮影できる時代にあって、写生とは儀式のようなものだと作者は語る。「時間をかけてスケッチをすることは、祈りに近い行為であり、そこに神が宿ると信じています」。


1989年 東京都生まれ
2016年 東京藝術大学大学院修士課程修了
2017年 松柏美術館花鳥画展大賞受賞
2019年 東京藝術大学大学院博士後期課程修了
2020年 春の院展奨励賞
2022年 山田雄貴個展 日本橋三越本店

「物はいつか消えてなくなる」

渡邊 一翔
神という言葉をヌードと捉え、独自の表現で彫刻制作に挑んだという作者。ワイヤーや3Dペンを使用し、線的に現われるボリュームを意識した表現だという。一方で、物は消えてなくなり得るという観点から、作品の制作過程を動画で記録し、公開もしている。


1988年 京都市生まれ
2011年 金沢美術工芸大学美術工芸学部美術科彫刻専攻卒業
2014年 東京藝術大学大学院修士課程美術研究科芸術学専攻美術教育修了
2015年 素描の力 人体デッサン展(名古屋)
2016年~2019年 彫刻セミナー「ロジュエモデリング」主宰
2019年 美術教育の森「美術教育研究室の作家たち」(東京芸術大学大学美術館)
2020年 美術解剖学雑誌(美術解剖学会)に研究ノート掲載
「3Dペンを用いた人体骨格モデル制作法-彫刻制作・教材への可能性を託した型紙の作成から-」
2022年 日本橋N11ギャラリー「Affirmation of Go ―業の肯定―」一ノ瀬健太×渡邊一翔
2023年 ギャラリー汀「継がれゆく線-線で描かれる人体の造形美は平面から立体へ‐」
渡邊一雅(人体画)×渡邊一翔(彫刻)

アートディレクター木村裕治氏によるデザイン展も

企画展「藝大神話ーGEISHIN」のフライヤーやポスターのデザインは、『翼の王国』などの雑誌・書籍デザインで知られるアートディレクター・木村裕治氏をゲストデザイナーに迎えて制作されました。
会場では「神様の作り方の作り方」と題して、今回のデザインの制作過程をコラージュで木村氏が表現しています。


本展を記念して、木村氏デザインのタブロイド紙を特別発行しました。
限定300部(1部1500円)で会場にて販売しています。

詳しくは店頭スタッフにお尋ねください。

出展作家と会期

▼後期
今井 貴絵
大谷 陽一郎
小川 貴寛
佐々木 沙奈
菅本 智
天明 里奈
VITALFISH
中川 陽介
野田 怜眞
村岡 佑樹
春田 紗良
山田 雄貴
渡邊 一翔

▼前期
池田 浩樹
岩田 駿一
岡 ともみ
小野 貴登司
香久山 雨
木村 了子
佐野 圭亮
ザキール・サラム
塩出 麻美

公式Instagram:https://www.instagram.com/geidai_art_plaza
公式Twitter:https://twitter.com/artplaza_geidai

会期:2023年6月3日(土)〜7月23日(日)

前期:2023年6月3日(土)〜6月25日(日)
後期:2023年7月1日(土)〜7月23日(日)

営業時間:10:00〜18:00

定休日:月・火曜休 
※祝日・振替休日の場合は翌営業日が休業

入場料:無料

写真撮影: 今井裕治

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