例年にないジメジメとした長梅雨が明けたと思ったら、一気に夏全開の猛暑の季節がやってきた日本列島。お盆も過ぎても、厳しい残暑が収まる気配はいっこうに見えません。
こうなると、身の回りに少しでも涼を感じられるような気の利いたアート作品が欲しくなるもの。そこで、藝大アートプラザの「常設展示コーナー」で、なにか良い作品はないのかな、と思って棚を探してみました。
すると、やっぱりありました!
作家それぞれの個性が表れた、涼しさを感じさせる面白い作品が揃っていました。そこで、今回は常設展示の中から僕が見つけた、取っておきの個性派作品を紹介してみたいと思います!
夏はやっぱりこれ!ひんやり涼しげなガラス作品
添田亜希子
まず、トップバッターとして紹介したいのが、添田亜希子さんのガラス作品。
添田亜希子「夏ぐれ フリーカップ」各4,400円
この「夏ぐれ フリーカップ」は、様々な用途に使える万能型グラスです。1点1点ちゃんと形と模様に個性がつけられています。趣のある曲線と涼しそうな文様は、まさに麦茶やビールとピッタリ。抜群に映えそうです。そばつゆや生野菜スティックなどを入れると、夕飯の食卓でも活躍してくれそうですよね。
添田亜希子「淡花 冷グラス」各3,025円
こちらは、内側にサンドブラストがかけられた半透明の小さなグラス。これは、日本酒を頂いてみたいですね!キンキンにグラスを冷やしてとっておきの冷酒を味わえば、夏バテもどこかに吹っ飛んでいきそうです。
添田亜希子「みずたまり 紫陽花絵付け」各4,400円
ちなみに、9月13日まで開催中の「特別企画 アトリエから~いまアートにできること~」 でも添田さんの作品が出品されています。こちらは、優しい乳白色に紫陽花があしらわれた、初夏をイメージさせる小皿。漬物やしょうゆ皿としてもぴったりですし、アイスコーヒーなどのコップを置くためのコースターとしても使えそうですね。
以前のインタビューで、「非日常と日常をハレとケと言いますが、私のガラスがケの日のなかのちょっとした楽しみに役に立てば嬉しいです。」とお話頂いているように、気取らずに気持ちよく日常使いできる作品が揃っています!
片岡操
次にガラス作家・片岡操さんの夏らしい器を一つご紹介。片岡さんは、様々な形をした色とりどりのうつわの中に金箔を混ぜたゴージャスな作品が大人気。藝大アートプラザでも、季節ごとに新作を多数発表されているベテランの人気ガラス工芸作家です。
片岡操「風紋小鉢 台付」14,300円
店内では、バラエティに富んだ複数の作品が展示されていますが、中でも一番涼しげで夏らしい作品だと感じたのがこちらの小鉢。器の表面に、砂漠や砂浜に現れるような独特の「風紋」が涼しげにあしらわれています。
せっかくなので原寸大以上に超拡大してみました。
片岡操「風紋小鉢 台付」14,300円(部分拡大図)
ガラスの中に閉じ込められた様々な粒子が乱反射しています。片岡さんの作品は、超アップで鑑賞しても楽しいので、ぜひ本物を至近距離で!
個性抜群の「アート風鈴」はいかが?
夏の涼を象徴する風物詩といえば、風鈴ですよね、
私たち日本人は、風鈴が大好き。ちりんちりん、というその優しい音色を耳にした瞬間に、体感温度が自動的に2~3度下がるようDNAに刻まれているかのようです。
藝大アートプラザでも、新たに風鈴が入荷。ですがただの風鈴ではありません。アーティストこだわりの、世の中に2つとない個性的な「アート風鈴」が楽しめます。
伊藤日向子
伊藤日向子「Hanayadori ちび」(左側3点)各11,000円「Hanayadori ちゅーりっぷ」(右側3点)各14,850円
大きくディスプレイされているのが、伊藤日向子さんの作品。「Hanayadori」というシリーズ名は、彼女のつくる風鈴が「花」から着想を得て制作されているからです。
過去のインタビューでは、「鋳物の風鈴は全国的に有名なものがたくさんあるのですが、意外と花の形のものは多くありません。ユリやチューリップなど、花から思いついた形もあるのですが、芍薬の花のつぼみの形もあります。」と語っていらっしゃいますね。
★伊藤日向子さんのインタビューはこちらから読めます!風鈴の動画も!
今回は、「ちび」「ちゅーりっぷ」と、2タイプで様々な色合いの作品が楽しめます。手に取ってひとつずつ鳴らしてみると、音色もみな少しずつ違うのも面白い!
伊藤日向子「Hanayadori ちゅーりっぷ」14,850円
一つ一つ丹念に着色されている丁寧な手仕事にも感銘を受けました。色合いや形が違うと、音もまたそれぞれ微妙に異なる音色を奏でるのも奥深くて面白いです。
田原祟雄
田原祟雄「風鈴」11,000円
続いては、萩焼深川窯の歴史ある工房・田原陶兵衛工房の14代目となる田原祟雄さんが制作した風鈴。店内のLED照明に当てると、濃鼠色につやつやと黒光りしていました。
これが萩焼?!と思わず目を見張ってしまいますよね。まるで砂張のような金属質の質感は、とても土から作られた陶製とは思えません。
店内には、他にもマグカップや酒器など田原さんが制作された非常にユニークなうつわが多数展示販売されています。ネジや電動工具のような装飾も本当に面白いです。
田原祟雄さんの非常にユニークな造形の作品群。
今回展示されている風鈴も、よーく見てみると、風鈴の舌(ぜつ/おもりの部分)が電動ドリルなんです!このドリルの先端が器に当たって金属質の音が鳴る、という仕組みなんですね。
「舌」の部分が電動ドリルになっています!
涼しさを呼び込む小さなオブジェもお薦め!
続いては、机やリビングなど、生活空間の中で涼しさを演出してくれそうなアート作品をいくつか紹介します!
石川直也「2つのビン -花と蕾-」
石川直也「2つのビン -花と蕾-」38,500円
これは、小さな石の彫刻を得意とされている石川直也さんの作品。純白の大理石が、まるで雪だるまみたいに見えます。これは冷感がありますね!
しかも、実際に触ってみるとひんやりとして、石の冷たさが気持ちいいのですよね。念入りに磨かれ、丸くやわらかな質感も素敵です。
山田勇魚「帰港」
山田勇魚「帰港」(左)「マッコウクジラ」(右)各165,000円
続いては、2019年夏に開催した「デザイン科見本市」展でのキュレーションでも活躍された山田勇魚(やまだいさな)さんの作品。日本の民間伝承「付喪神」とクジラを組み合わせたユニークな作品は、一度見たら忘れられないインパクトがあります。
山田勇魚「帰港」165,000円
クジラをかたどった樹脂の中に見えているシルエットは、沈没船をイメージしたものです。ちょっと色あせた透明なマリンブルーが、涼し気な夏の終わりを演出するとともに、ノスタルジックな雰囲気も感じさせてくれます。
佐々木玲央「ある日から見ない白猫のために」
最後に、こちらの氷細工のような佐々木玲央さんのガラスのオブジェもご紹介しておきましょう。
佐々木玲央「ある日から見ない白猫のために」55,000円
型キャストで作られたネコのオブジェです。神社の狛犬のようにどっしりとした佇まいは石像のよう。持ってみると、思ったよりもズシリとした重量感が伝わってきます。3つ目のユニークなお顔を見ていると、かわいい、というより不思議さが前面に出ていますね。
幾何学形のフォルム、ターコイズブルーの半透明な質感、そして作品の隅にところどころ残った石膏の生々しい跡が、まるで氷河のようで涼しげです。伊藤店長も絶賛されている作品です!
レジ前のスペースには、話題のアートマスクも!
本稿のテーマとは少し違っていますが、最後に紹介しておきたいのが、withコロナ時代に欠かせないマスク。藝大アートプラザでも、デザイン性、アート性を高めた「アートマスク」が登場しています!
前々回のコラムでもご紹介した通り、現在開催中の「特別企画 アトリエから~いまアートにできること~」では竹下洋子さんの「手描き絵画アマビエマスク」が好評。
常設展示では、レジ前に展示販売されている桂川美帆さんの布マスク自作キット「Cloth Mask Kit」が非常におしゃれでお薦めです。
桂川美帆「Cloth Mask Kit」各1,100円/作家オリジナルのテキスタイルによる手作りマスクキット。生地は裁断済みなので、針と糸とアイロンさえあれば、手縫いでも簡単に作ることができます。キット内には、表布、裏布(ダブルガーゼ)2枚、裏布(晒布)2枚、ゴム紐2本が封入されています。
自分好みのサイズに布を切って、紐をつける簡単な作業で完成します。現在、色合いやデザインを4種類取り揃えて販売中。作り方をわかりやすく解説したマニュアルもキット内に入っていますので、安心してご購入ください!
桂川美帆「Cloth Mask Kit」各1,100円(完成したマスクのサンプル)
完成するとこんな感じ。横幅19cm、縦幅14cmと大きめサイズ。洗濯後は少し縮むのでぴったりフィットするようになります。
いかがでしたでしょうか?今回ご紹介したように、常設展示コーナーでは季節に応じた品揃えはもちろん、それ以外にも毎週のように新入荷・展示替えを行っています。
もちろん、常設展示も自由に撮影可能。気に入った作品があれば、SNSにアップしてシェアするだけでも楽しいので、ぜひ自分だけのお気に入り作品を探してみてくださいね!
「特別企画 アトリエから~いまアートにできること~」
会期:2020年7月4日 (土)~9月13日(日)
11:00~18:00、月曜定休
取材・撮影/齋藤久嗣 撮影/五十嵐美弥(小学館)
※掲載した作品の価格は、全て「税込価格」です。
※掲載した作品は、実店舗における販売となりますので、売り切れの際はご容赦ください。